ジャンケンが弱いと何かと面倒
「目先の問題としては、パーティーメンバーをどうするか、だよな」
いつもの屋上で俺はそんなことをつぶやいた。
一緒にいるのはアイル、星野、藤原の三人。いつものメンバーだ。
厳密に言えばラプラスもいるが、俺の肩の上で熟睡中。ほんとマイペースだな。
「あたしは八重樫のパーティーに入るから、一枠開けといてね」
「僕も入るよ! 扇君のパーティー!」
「了ー解。俺としても助かるよ」
もともと、星野と藤原には入ってくれるように頼む予定だった。
と言うか、俺にはこいつら以外に友達と言える友達がいないからな、すげぇ助かる。
「でもいいのか? 俺のパーティーに入って。他のパーティーに誘われたりはしてないのか?」
「ん~、一応「一緒にパーティー組もう?」って言われたけど、断った。絶対にこっちのほうが楽しいだろうし。それに――」
「それに?」
「……何でもない」
「? そうか。藤原は? 序列31位のお前なら結構誘われたんじゃないか?」
俺がそう聞くと、藤原はビクッと肩を震わせて顔を逸らした。
そして、そのままの状態で口を開く。
「扇君……人には聞いていいことと、悪いことがあるんだよ?」
その言葉を聞いた俺はすぐに思い至った。
そう言えばこいつ、朝ちょくちょく俺のとこに来てたな。そうか、同士か。
「…………すまん、俺が悪かった」
「…………ううん、気にしなくていいよ」
「「?」」
男子二人の謎の会話を聞いた女子二人は顔を見合わせて首を傾げる。
と、とりあえず話を先に進めよう。パーティーメンバー問題はまだ解決してないからな。
「それで、パーティーメンバーは5人必要だらからもう一人決めないといけないんだけど、誰かあては?」
そう、パーティーとして申請するためには5人必要なのだ。
そしてここにいるのは俺も含めて4人。あと一人足りない。
そのあと一人をどうするか、それが一番の問題だ。
「ちなみに俺はない」
「ないよ!」
「ありません」
「あったけど、多分みんな決まってると思う」
ふむ、全滅か。強いて言うなら星野が惜しい感じだが、俺たちのパーティーに入ってもらうためだけに他のパーティーを抜けさせるわけにはいかないよな。
どうする。今週、学校に来るのは今日合わせて3日間だ。その間に決めないといけない。正確に言うと休みが2日間あるが、学校に来る生徒は少ないだろう。
それにそれまでには他のパーティーも大方決まっているはずだ。
そうなると、相性がいい人と組むことはほぼ不可能になるだろう。
できれば残り3日間以内には決めておきたい。
とは言え、当てがないのも事実。どうしようか。
そんなことを考えていると藤原がこんな提案をしてきた。
「それじゃあさ! この中の誰かが代表で残り一人を探してくるっていうのはどう!?」
「代表で? 別にいいけど逆に時間がかからないか?」
「別にいいんじゃない? むしろ一人の方が、楽かもよ? 全員の意見を取り入れるとなるとそれはそれで面倒だし。メンバー決めはその代表者に一任ってことにしたらいいんじゃない?」
「そう言うことなら」
「私も異存はありません」
「それじゃあ決まり!」
自分の意見が通ったことが余程嬉しいのか、藤原は大きな声で言った。
「でも、どうやって代表者を決めるんだ? やっぱジャンケン?」
「私はそれでいいよ」
「僕も!」
「私もです」
「それじゃあ、負けた人が代表ってことで――ジャ~ン、ケ~ン――――」
「ぽん」俺、チョキ
「ぽん」星野、グー
「ぽん!」藤原、グー
「ぽん」アイル、グー
……まさか一発で決まるとはな。
そして俺の負けと言うね。
俺ってこういう時のジャンケンほんとに弱いよな。
「それじゃ八重樫で決まりね」
「よろしくね扇君!」
「はぁ……、仕方ない。甘んじて受け入れよう」
「お手伝いしましょうか?」
「いや、大丈夫。負けたのは俺だし、それでアイルに手伝ってもらう訳にはいかないって」
「かしこまりました」
そうして俺は代表者となった。
どうやったらジャンケンって強くなるんだろうな。生まれて初めてそんなことをまじめに考えたよ。
俺が自分のジャンケンの弱さを呪っていると、肩で寝ていたラプラスがいつの間にか目覚めていることに気が付いた。
ラプラスは俺を見て首を傾げる。
《……おーぎ、わたしをつかえばよかったのに》
「あ……」
そうじゃん。ラプラスを使えば未来を知ることが出来るんだし、勝てたんだよ。どうして気付かなかったんだろうな。
「……って、それじゃイカサマだろ」
《……そうなの? わたしはおーぎのちからなのに》
「それはそれ、これはこれだ。どうしてもって時にだけ使うことにするよ」
《……ん、りょーかい》
そう言うとラプラスはぶかぶかに袖が余った手でシュバッと敬礼をした。
こういうところは無駄に可愛いんだよな、こいつ。相変わらず髪の毛ぼさぼさだけど。
敬礼をし終わったラプラスは俺の持っている弁当に視線を向けた。
お弁当は編入当初からアイルが毎日作ってくれている。
毎日美少女の手作り弁当が食べられるのだ。ありがたい。
《……おーぎ、そのきいろいのたべたい》
「玉子焼きのことか?」
《……ん、それ》
「いいけど、落とすなよ?」
《……わかった》
そう言ってラプラスは大きく頷いた。
”権能”もご飯って食べるんだな。ますますラプラスに対する謎が深まった気がする。
俺は箸で玉子焼きに触れて【サイズ】を発動し、ラプラスの一口サイズほどの大きさまで小さくする。
ラプラスにはそのままの大きさじゃ大きすぎるからな。こうした方が食べやすいだろう。
「はい、あーん」
《……あ~ん》
「美味しいか?」
《……ん、びみ》
「それはよかった。アイルに感謝だな」
《……かんしゃー》
はぁ、なごむ。
ハムスターみたいな小動物にエサをやってる気分。癒される。かわいい。
俺がラプラスに癒されていると、他の3人の視線が刺さった。
「八重樫……あんた本当に大丈夫? 保健室、連れてってあげようか?」
「扇君、大丈夫?」
「扇様、私はラプラスさんの存在は信じております。ですが時と場所は選ぶべきかと」
「……そこまでか」
そんなにヤバく見えるのか? いや、わかってるよ? だって俺にしか見えてないんだから、そりゃ頭がおかしく見えるわ。
でも、こっちも結構傷つくんだからな? ああ、視線が痛い。
《……おーぎ、つぎはそっちのたこみたいなのがいい》
そう言ってラプラスはタコさんウインナーを指さした。
どうやらラプラスがお腹いっぱいになるまでは、この視線を耐えなければいけないらしい。




