誰かに心配してもらえるって嬉しいよね
試合終了後、俺はアイルの所に戻る道中でいろいろと考えていた。
うん。少し、少しだけ、ほんの少しだけ、やり過ぎ感が否めないな。
いくら普通の”能力”では太刀打ちできなかったとはいえ《創造主》をあんなに乱用したのは失敗だったかもしれない。
やりようはいくらでもあったはずだ。
伊藤が俺についてこれたのは【未来視】と【超演算】の賜物だ。
だったらそれを超える速度で翻弄するか、演算を超えた力を見せればよかっただけのこと。
現に俺が【再生】を人前で初めて使った時、あいつは『演算をし直す必要がありそうだ』と言った。
それはつまり、演算結果にない事態が発生したということ。
だったら【威圧】でも【咆哮】でも【催眠】でも【樹木操作】でもまだ使っていなかった能力で翻弄すればよかったんだよ。
それなのに俺は……”能力”まで創造しちゃったし。
これから先のことを考えると――
「――憂鬱だな」
はぁ~……ま、やってしまったことは仕方がないし。
そもそも試合中に俺自身が覚悟を決めてやったことだ。
今ここで後悔するのは違うだろう
それにあのまま更に傷を負っていたら余計アイルに心配をかけてしまうからな。これでよかったんだよ。
未来のことは未来の俺に任せる。それでいいじゃないか。頑張れよ! 未来の俺!
「扇様っ!」
名前を呼ばれて顔を上げると、そこには慌てた様子のアイルの姿があった。
「アイルか。どうしたんだ? こんなところま…………でっ!?」
アイルが思いっきり抱きついてきた。
抱きつかれた瞬間の軽い衝撃とか、アイルの甘い匂いとか、女の子の部分の柔らかな感触とか、控えめに言って最高だった。
俺このまま死んでもいいかも知れない、と思わせるくらいには最高だった。
ああ、女の子ってこんなに柔らかかったんだな…………って、そうじゃなくて!?
「ちょっ、アイル!? いきなりどうしたんだ!? いくら人目がないとはいえ流石にいきなりこれは恥ずかし――」
「――心配しました……っ。【再生】があるからと言って無茶しすぎですっ。扇様にもしものことがあったらと思うと、私……っ」
ああ、そうか。
どうやら俺は俺が思っていた以上にアイルに心配をかけていたようだ。
俺はそっとアイルの頭をなでた。
「ごめんアイル、凄く心配かけたみたいだな。でも大丈夫だよ。俺は絶対に死んだりしないから。ずっとアイルのそばにいるから」
俺がそう言うとアイルは俺の肩に顔をうずめたまま、
「……本当ですか?」
泣きそうな声で問いかけた。
「ああ、約束するよ」
「……絶対ですからね」
「ああ、絶対だ。――だから泣かないでくれ」
俺がそう言うとアイルは慌てたように俺から離れた。その顔は照れたからか少しだけ赤くなっていた。
アイルもこんな顔するんだな。これは笑顔にまた一歩近づいたかな?
「なっ、泣いてなどおりません」
「まあそう言うことにしておこうか」
俺は最後にアイルの頭をなでた。
「最後になったけど、ありがとな、心配してくれて。すごく嬉しいよ」
俺がそう言うとアイルの顔はさらに赤く染まった。そして、踵を返してしまった。
「お、扇様にそう言ってもらえるとは、私も心配した甲斐があったというものです」
「なんだ、照れてるのか?」
「照れてなどおりません」
「ほんとか?」
「本当です」
俺たちがそんなことを言っていると、
「ちょっとアンタたち、イチャつくなら自分の部屋でイチャつきなさいよ」
「おめでとう扇君! 試合凄かったよ!」
そんなことを言いながら星野と藤原が近づいてきた。
「いやいや、イチャついてないからな?」
「扇様の言う通りでございます」
「ふ~ん、まあそう言うことにしておいてあげる」
「で、この後どうするんだ?」
「アンタが決めなさいよ。今日の主役でしょ」
「マジかよ……それじゃあ――」
「――僕トランプがいい!」
俺の声を遮って藤原がそんなことを言った。
こいつホントにトランプが好きだな。試合前もやってただろ。
いや、まあいいんだけどね。俺の大富豪で負けたままじゃ悔しいし。
「わかった。それじゃあ俺の部屋で祝勝会だな。トランプはその時だ」
「ありがとう扇君!」
「かしこまりました」
「そう言うことならまた買い出しからね。ジャンケンしましょうジャンケン」
それから俺たちは俺の部屋で祝勝会……もといトランプ大会を開催したのだった。
謎の男子生徒 Side
薄暗い部屋の中で一人の男子生徒がニヤニヤとしながら、八重樫扇の試合を眺めていた。
「ははははッ洋祐は結局負けちゃったか。あそこまで協力してあげたのに負けちゃうとか……ぷはっ」
そう言いながら男子生徒は笑い声を漏らした。
「はははッま、おおむね予想通りだけどね」
男子生徒はオリハルコンの塊から出てきた八重樫扇を眺めながら楽しそうに笑う。
「はははははッでもまさか《創造主》を使える人間に出会えるなんて思ってもみなかったよ! いや~人生何が起こるかわからないものだな~。これだからのぞき見はやめられないよ!」
男子生徒は右手の人差し指と親指とをくっつけて作った輪っかを目に近づけた。まるでその輪の中をのぞくように。
「これからが楽しみだね~! や・え・が・し・お・う・ぎ・君! はははははッ」
薄暗い部屋の中に男子生徒の笑い声が響き渡る。そしてそのまま闇に溶け込むように姿を消した。
一応ここまでで第一章は完結です。
なんだか長かった気がしますね。次からはもっとペース配分を考えながら書きたいと思います。
もしかしたら閑話を何本か入れるかもしれません。
とりあえず、第二章はばっちりとやるのでこれからもよろしくお願いします!
それからもしも『面白かった』『また読みたい』そう思ってもらえたのなら是非ブックマーク&評価をよろしくお願いします!




