剣舞
アイル Side
さて、まずは小手調べと行きましょうか。
「『光魔法:弾光剣』」
そう呟き”魔法”を発動する。
背後に少し大きめの魔法陣が描かれ、光剣が相手の女子生徒へと飛来する。
「芸がないよっ!」
女子生徒はそう言いながら、先ほどと同じように剣一本で飛来するすべての光剣を切り裂いていく。
「やはり防ぎますか。続く弾幕で疲弊しているでしょうに、よくやりますね」
「疲弊? いったい何のこと? それよりもあなたの魔法陣、最初の奴よりもだいぶ小さいけどもう魔力切れなんじゃないの?」
「そんなことはありませんが――――」
これはどういうことでしょうか。
疲れるどころかむしろ回復している?
確かに疲弊していたはずなのに息切れが治るどころか、こちらの”魔法”を防ぎながらの会話まで可能になっている?
どういった”能力”なのでしょうか。
「――少し工夫してみましょう。『風魔法:操風』」
新たに”魔法”を発動させる。
『弾光剣』の魔法陣と重なるように描かれた『操風』の魔法陣から風が吹き出し――――――光剣の軌道をそらした。
『操風』。既存の魔法陣に同化させることにより、その魔法の軌道をある程度操作することのできる”魔法”です。
扇様の【雷操作】のような自由な操作性はありませんが、軌道だけなら込める魔力を強めるだけで操作性は格段に上がります。
これにより全方位から攻撃が可能になりました。
光剣は風に乗り方向を変え、全方向から飛来する。
それを見た女子生徒は一度驚き顔を見せ、
「フッ……これくらいッ!」
そう叫び、全方向から縦横無尽に飛来する光剣を捌いた。
その場から一歩も動かず体のひねりと腕を最大限生かしながら剣を振るい、防ぎ切っている。
ある程度避けてもいるが、その動きは明らかに異常だった。
この人は全身に目がついているのでしょうか。
背後から来る光剣だけでなく、完全に死角からの攻撃にも完全に対応するとは。
本当にこの人は序列149位なのですか?
藤原さんよりも断然厄介ですね。
「それでは、これはどうでしょうか。『天気魔法:狂乱雷瀑布』」
私は今まで発動していた『弾光剣』と『操風』を解除し、別の”魔法”を発動する。
闘技場の舞台の上空すべてを覆うように描かれた巨大な魔法陣。
そこから暗雲が立ち込め、一気に悪天候のようになった。
そして――
――ドゴォオオオオオォンッッッ!!!
すさまじい爆音とともに、闘技場の舞台全域に落雷した。
鳴りやまない雷。
一撃で岩を砕き地を割る雷撃が大瀑布のごとく怒涛の勢いで降り注ぐ。
超広範囲魔法の『天気魔法』はその名の通り、局所的に新たな天気を発生させる”魔法”です。
本来は大人数での発動が基本なのですが、私はこれでも最高位天使ですので一人での発動など訳ありません。
そして今回の天気は雷雲です。
暗雲を発生させ雷を降らせる『天気魔法』です。
さすがにこれならば――
「ちょっとあなた殺す気!?」
「逆にお聞きします。なぜ無事なのでしょうか?」
「私の”能力”を甘く見過ぎなのよ!」
「やはり”能力”、ですか。一体どう言った”能力”なのでしょうか?」
「そんなの言うわけないでしょ」
「そうですか」
「当然でしょ」
女子生徒はそう言いながら、構えをとった。
「今度は私から行かせてもらうから!」
「ようやくですか。いつでもどうぞ」
女子生徒は強く踏み込み、一瞬で間合いを詰め、その勢いに合わせて上段からの一撃を放つ。
続けて踏み込み方を変えた低姿勢からの足を狙った回転斬り、その回転の遠心力を利用した右下から左上への斬り上げ。
それらの連続した剣技をバックステップで躱しながら”能力”と”魔法”を発動させる。
「【空間転移】『爆炎魔法:エクスプロージョン』」
【空間転移】を発動しはるか後方へと転移、その後『爆炎魔法』の『エクスプロージョン』を女子生徒の足元に発動させ大爆発を起こし、辺りに炎をまき散らす。
これならどうでしょうか。
さすがに当たればひとたまりも――――…………? 気配が後ろに――
それに気が付いた瞬間、私は急いで再び【空間転移】を発動させた。
転移後、私が今まで立っていた場所を見やると、女子生徒が剣を勢いよく地面に打ち付けていた。
地面が大きく砕けていることからその威力がかなりのものだと分かる。
一体いつの間に?
確かにとらえたはずですが……【縮地】? それとも転移系の能力でしょうか?
いえ、それよりも危機一髪でしたね。
あと一歩【空間転移】の発動が遅れていれば私は彼女の宣言通り一太刀入れられていたでしょう。
「う~ん、絶対に入ったと思ったんだけどな~」
「確かに、あと一歩反応が遅れていたのなら入っていたでしょう」
「結構余裕だね。でもあなた魔法職でしょ? だったら――――接近戦はこっちの独壇場だよね」
そう言って数十メートルもあった間合いを一瞬で詰め、懐に入ってくる女子生徒。
そして右上から左下へと袈裟斬りに振り下ろす。
確かに動きは悪くありません。ですが、
「私は一度も接近戦が苦手とは言っておりませんが」
私は袈裟斬りに振り下ろされた剣を自分の持つ純白の大剣で受け止めた。
「は……?」
いきなり出現した大剣に訳が分からないといった様子の女子生徒。
ですが説明する義理もありません。
それに、このような隙を見逃す方が不可能と言うものです。
私はその大剣を重さを感じさせない動きで振り回した。
完全に隙をついた一撃でしたが……やはりこれも防ぎますか。
「ちょっ! それ何処からっ!?」
「教える義理はございません。それから、あなたの”能力”の全貌がわかってきました」
「ふ~ん? 攻撃全部防がれてるのにそんなこと言っていいの? はったりにしか聞こえないけど?」
「そうですか。それならば――攻略して差し上げましょう」
「やってみなよッ!」
さて、有言実行と行きましょうか。
私は一度、全身を覆っていた魔力をすべて解除した。
それは魔法陣に供給していた魔力だけでなく、筋力や気配察知などの身体能力強化に使っていた魔力、そして大剣に纏わせていた魔力も文字通りすべて。
一度この状態になってしまえばもう一度全身を覆うのに数瞬の隙ができる。
ですので普段は絶対にしない行為なのですが、これが攻略法なのでは仕方がありません。
格段に重くなった大剣と身体を動かし、攻撃を繰り出す。
それでも天使の身体能力はこの世界の住人の比ではありません。
女子生徒からすれば多少遅くなった程度にしか感じていないでしょう。
そして、彼女はもう私の攻撃を”能力”で完全に防ぐことはできません。
踊るような動きで大剣を振るい、攻撃を繰り出す。
それは力任せに振るうのではなく、大剣の重量を利用した剣舞。
それを続けざまに繰り出し、女子生徒を追い詰めていく。
必死に防いではいますが、疲弊し先程のようなキレはなく、だんだんとその身体に傷ができ始めました。
剣舞の終盤、大剣の一撃を剣で受けた女子生徒が勢いを殺しきれず大きく吹き飛んだ。
そのまま地面に激突し転がる。
「うぐ……ッ」
地面に突っ伏した女子生徒から苦悶の声が漏れる。
私はその女子生徒の元まで移動し、首元に大剣を突き付ける。
「降参でしょうか?」
「ハハハ……ッ、まさか本当に攻略されるとはね。正直驚いたよ。……うん、降参。私の負けね」
彼女が降参を認めたことにより、審判が宣言する。
「――勝者ッ!――――――アイルΔッ!!」




