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転生特典の権能《創造主》をもって異世界へ  作者: 葉ノ月サトゥー
第一章 王立魔法学院編  
35/177

分解の膜

 すべての授業が終わり放課後。俺は闘技場で8人の相手の攻撃をひたすら受けていた。  

 正確に言えば、俺の”能力”で閉じこもっていた、っているのが正しい。


 俺の周りには水色をさらに薄くした半透明の膜が張られていた。

 ベール?と言うのが一番近いかも知れない。

 その膜は360゜全方位を覆っており、武器や”魔法”などの相手の攻撃は一切通っていない。

 すべて膜に触れた瞬間に()()されていた。


 【強酸】。それが俺の使っている”能力”だ。

 掌から薄水色の液体を出し、触れたものを高速分解する”能力”。

 俺の半径20m以内なら自由自在に操作することができ、分解するものは任意で指定できる。

 例えば人を分解する場合、中身の肉体だけ分解して服は分解しない、と言ったことが可能だ。


 はじめはなぜ【強酸】なのに()()()ではなく()()なのかわからなかったが、まあどうせ気にしてもわからないので考えるのをやめた。

 でもこれメチャ強くね? 何でも分解できるし、こうして全体を覆っておけばほぼ無敵。

 しかも分解するものを指定できるから相手の攻撃は俺まで届かなくても俺の攻撃は相手まで届くというね。

 まさにチート。強すぎるよね。


 でだ、さっきから外の奴らがうるさいのよ。「さっさと出て来い!」とか「逃げてんのか!」とか「ふざけんなよッ臆病者!」とかとか、凄い言われよう。

 まあ実際閉じ籠ってるわけだから何も言い返さないけど。

 どうせもう少しで終わるし。


 俺は膜の一部を操作して相手8人に向かって消防車のホースのように【強酸】を勢い良く噴射した。

 指定したのは肉体。なので触れるだけで身体が高速分解されて無くなるけど、さすがに当たる奴はいないらしい。

 避けた瞬間俺のことをものすごくバカにしてる。

 当てるのが目的じゃないからいいけどさ。

 だた、少しイラっとしたのでじっくりするのはやめる。一瞬で終わらせよう。


 俺は【強酸】の膜を俺の周囲ギリギリのところまで収縮した。

 そしてその膜に掌をつき、思いっ切り魔力を込めて”能力”を発動した。


「【強酸】」


 次の瞬間、俺の掌から薄水色の液体が怒涛の勢いで溢れ出し、膜の外は一瞬で膝下まで浸水した。

 これで肉体を指定するだけで俺の勝ちが確定する。


 一応伝えておくか。


「お前たちの足元の水はこの膜と同じものだ。分解されたくなかったら降参しろ」


 大人しく言うことを聞くとは思えないが。


「降参? ふざけんなよッ!」

「こんなのただの水じゃねぇかッ! 俺は騙されねぇぞッ!」

「ハッタリもいい加減にしろよ!」

「おいッ、あの変な膜が小さくなった今がチャンスだッ!」

「やっちまえ――ッ!」


 言ってることがチンピラだな。

 と言うかこいつら馬鹿だよな。

 ただの水だろうが何だろうが相手の”能力”に変わりはないってのに、平然と浸かってるんだからさ。

 しかも誰一人としてその事実に気が付いていないと来た。

 バカすぎる。

 伊藤って奴はこんな雑魚を送り込んで何がしたいんだよ。


「はぁ……あっそう。じゃあさっさと終われよ」


 俺はそう言って一瞬だけ【強酸】の対象に肉体を指定した。ほんの一瞬。一秒にも満たない刹那。

 ただそれだけの時間で俺の相手8人全員の肉体の膝下が消失した。


 相手の叫び声がこだまする。まあ、脚の半分が無くなったんだ。当然の反応だな。

 このまま降参してくれたらいいんだが、ヤバいな。このままだとあいつらが溺れる。溺れ死ぬ。

 その前に終わらせてやるか。


 さすがに【強酸】はまずいので違う”能力”でやろう。


「【雷纏】」


 俺の手から青緑色のスパークが煌めき、その状態で【強酸】の膜に触れた。

 雷が【強酸】を伝って広がる。

 そして、相手に当たった瞬間、バチッという音とともに雷が上がった。

 死んではいない、ただ気絶しているだけ。

 所謂感電と言うやつだ。

 俺は全員気絶していることを確認すると【強酸】と【雷纏】を解除した。


「そこまでッ! 勝者――――八重樫扇ッ!」


 審判の教師が俺の勝ちを宣言した。俺はそっと溜息をつく。


「これってあと何回戦えばいいんだ? そろそろ面倒なんだが。もしかして伊藤の狙いは精神的に疲弊させることなんじゃないのか?」





  伊藤洋祐 Side



 薄暗い部屋の中で二人の男子生徒が1対8の試合を眺めていた。


「あれは【強酸】かな? ははははッ一体いくつの”能力”を持ってるんだろうね」

「全くだな。【雷撃】【雷纏】【縮地】【剛撃】【超硬化】【魔力操作】【サイズ】【強酸】【ダークネスドミネーション】。現在確認できているだけでもこれだけある。正真正銘の化け物だな」

「特に【ダークネスドミネーション】はヤバかったよね~。あれさえあればこの学校なんてすぐに支配できちゃうよ」


 親指と人差し指で輪を作り、その中をのぞくように目に当てていた男子生徒がそんなことを言った。


「そうだな。だが問題はない。俺の演算では今のところ勝ちは確定している」


 そう言って俺は静かに笑った。

 俺の”能力”での演算結果は90%以上の確率で俺の勝ち。

 何も怖がることはない。例えこれから先八重樫扇がいくつの”能力”を使おうが俺の勝ちは揺るがないのだから。


 俺の”能力”なら勝てる。俺はそう確信していた。


「でも、多分あの子まだ実力の半分も出してないよ? それでも勝てるの?」

「しつこいな。勝てると言っているだろう。なに、1週間後にすぐ証明してやる」

「楽しみにしてるよ。でも忠告しておくよ。君の”能力”がすごいのは知ってる。でも、油断はよくないよ。君の”能力”じゃ後戻りはできないんだから」

「肝に銘じておく。だが、勝つのは俺だ。何度も言うがそれは変わらない」

「ほんとに僕の話聞いてた? まあいいけど。じゃあ僕はもう行くね。試合も終わったみたいだし」

「ああ、次も頼む」

「あいよ~」


 そう言いながら男子生徒は部屋から出ていった。残るのは俺一人。

 俺はつまらなそうな顔で闘技場から立ち去る八重樫扇を眺める。


「1週間後、楽しみにしているぞ、八重樫扇」


 俺はそう呟いて俺は部屋を出た。

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