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転生特典の権能《創造主》をもって異世界へ  作者: 葉ノ月サトゥー
第一章 王立魔法学院編  
29/177

ババ抜き

 帰りのHRが終了したすぐ後、俺が帰るための準備をしていると、不意に何者かの影が光を遮った。


「君が八重樫扇……で間違いないか?」


 声をかけられて振り向いてみると、そこには大男が立っていた。

 2メートルはあるのではないかと言う巨体に、ガチムチと言う言葉がよく似合う筋肉ダルマ。

 そして角刈りと言う何とも恐怖感をあおる絵面の男だ。


 俺は思わず顔を引きつらせた。

 いやいやいやこいつホントに高校生か?

 あきらかにプロのボディービルダーだろ。

 サングラスでもかけたらどこぞの鬼教官みたいになるんじゃないか?


「……そうですけど」


 俺は引きつる顔を必死に抑えながら、こんなガチムチ大男が俺に話しかけてくる理由を考える。

 それはすぐに思い至った。


 もしかしてこれが星野の言ってたやつか?


 俺は返事をしながら、内心でそう考えた。

 そしてその考えはほぼ間違いなく当たっているだろう。

 俺はガチムチ大男が要件を言うのを待った。


「そうか。ならば八重樫扇、俺はお前に序列戦を申し込む」


 はぁ~やっぱりか~、嫌だなぁこいつと戦うの。

 何というか絵面が嫌だ。

 なにが悲しくて異世界のボディービルダーと試合をしなければならないのか。

 これで断れないって言うんだからたちが悪い。


「わかっているとは思うが、お前に拒否権はないぞ」

「……はぁ、了解した。で、時間と場所は?」

「今から2時間後に第1闘技場だ。学校側への申請は俺の方でやっておく」

「そりゃどうも」

「気にすることはない、当然のことだ」


 そう言うとガチムチ大男は去っていった。

 てか、気にしてねぇよ。

 ただの社交辞令だ社交辞令。


「早速来たね」

「そうだな」


 俺は星野にさっきの奴のことを聞いた。

 名前は覚えていないらしいが、序列は73位らしい。

 いきなり序列が高い奴が来たな、と思ったがすぐに納得した。

 もしこいつに勝てば、以降から俺より序列が下の奴らを次々と相手にしないといけないってことか。

 ここで負けたら警戒する必要なしと判断されて終わりなんだろうけど、さすがに最下位は嫌だから何が何でも勝たないと。

 と言うか勝つ以外の選択肢が俺にはない。

 あとは思う存分今の状況を楽しむだけだ。


「それで、あと2時間しかないらしいけど何も準備しなくていいの?」

「あ~、大丈夫だろ。何とかなるって」

「そ、まあアンタが良いなら別に良いんだけどね。それじゃ、頑張りなさいよ」

「頑張ってね、扇君! 応援してる!」

「おう、頑張るよ」


 二人に応援されて俄然やる気が出た。

 やっぱり、人間応援されると嬉しいもんだよな。

 それに、藤原はともかくとして星野みたいな美人の女の子に応援されるのはまた別格だ。

 ガチムチ大男と戦わなくちゃいけないって言うマイナス要素をすべて打ち消して余りあるプラス要素だ。

 ある意味役得だな。


 俺がそんなことを考えていると、アイルがやってきた。


「扇様、一度寮に戻られますか?」

「ん? ああ、そうだな。そうするよ」

「ご一緒します」

「じゃあ星野、藤原、また後でな」


 そう言って俺はアイルと一緒に教室を出た。



 

 寮の部屋で時間をつぶす。

 2時間と聞いた時は随分と急な話だなと思ったが、実際にこうやって過ごしてみると準備のない俺にとって2時間はかなり長く感じる。

 この世界には暇つぶしに使える物が少ないというのもある。


 なので適当に創造したトランプでアイルとババ抜きをする。

 ババ抜きを選択したことに特に意味はない。

 強いているなら何となくだ。

 まあ、二人なのであまり長くは続かないが何もしないより時間の流れは速く感じる。

 

 そうやって、なんだかんだで時は流れ、ついにこれが最終ゲームとなった。

 俺とアイルの戦績は16戦8勝8敗。

 今のところ引き分けだ。よって次の勝負ですべてが決まる。

 試合前に何をしているんだと言われるかもしれないが、何事も楽しむことが大切なのだ。

 と言う訳で何も問題はない。


 だがまあ、最後まで普通に終わるっていうのもつまらないか。


「なあアイル」

「なんでしょうか?」

「一つ賭けをしないか?」

「賭け、ですか」

「そう。勝った方は負けた方になんでも一つ命令できる、って言うのはどうだ? もちろん聞ける範囲で、だ」

「扇様の命令であれば、賭けなどしなくともどれだけでも聞きますが?」

「それは、アリスの命令で、だろ? それじゃ面白くない。あくまで俺の命令で言うこと聞いてもらう。当然アイルが勝ったらなんでも俺に命令してくれてい良いよ」

「なんでも、ですか?」

「ああ。なんでも、だ」

「……かしこまりました。その賭けに乗らせていただきます」

「そう来なくちゃな」


 こうして、ババ抜きのファイナルラウンドが幕を開けた。

 

 

 と言っても人数が少ないことに変わりはなく、順調すぎるほど順調にゲームは進んだ。

 そしてお互いにババを一度も引くことなく、残り3枚まで削れた。 

 俺が1枚でアイルが2枚だ。

 つまりババを持っているのはアイルと言うことになる。

 ここで俺が数字を引けば俺の勝ちだ。


 さて右か左か、どっちだ?

 アイルならどっちに置く?

 考えろ俺、こんな美少女になんでも命令できるチャンスだぞ!

 いつでも聞くとは言っているが、それはアリスの命令でだ。

 だが、今回は違う。正真正銘俺の命令で言うことを聞かせられる。

 この千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない!


 俺は改めて決意を決め、手を伸ばした。

 掴むのは俺から見て左側だ。

 アイルの場合表情を読むことができないから、当てずっぽうだ。

 こういう時無表情キャラは強い。

 だが、所詮は2分の1だ。

 適当に引いても50%の確率で当たる。

 ここで迷っても仕方がない。


 そして俺の右手がアイルのトランプの一枚を指で掴む。

 俺はこの一枚にすべてをかける!

 トランプを抜き絵を見る。

 そこにはピエロみたいなものが描かれていた。

 所謂ジョーカーと呼ばれるカードだ。

 そしてこのゲームにおけるババでもある。


 クッ、どうやら外してしまったようだ。

 だがまだ勝機はある!

 アイルにババを引かせればいい、ただそれだけだ!



 勝負はあっけなく終了した。

 俺の負け、という結果で。

 最後、俺がババを引いたあとアイルはあっさりと俺の持っていた数字が描かれているカードを引いたのだ。

 実にあっけない終わり方だった。

 だが、悔いはない。

 今はもうこれ以上できないがそのあとなら時間はある。

 その時にまた申し込もう。

 ここで、駄々をこねても俺が負けたという事実は変わらない。

 ならば潔くアイルの言うことを聞こうじゃないか。

 まあ実のところアイルがどんな命令をするのか気になっていたので、これはこれでいいのだ。


「おめでとうアイル。それで何かいい命令はあったか? 何でもいいぞ? 俺ができる範囲なら言うことを聞くから」

「ありがとうございます。あの……本当によろしいのですか? 私などが扇様に命令など」

「は? なに言ってんだよ。賭けに勝ったんだから当たり前だろ? むしろここで命令をしない方が失礼だ」

「……かしこまりました。ですが、申し訳ございません。もう少しだけお待ちいただいてもよろしいでしょうか。まだ命令を決めかねているので」

「そう言うことなら別にいいよ。それじゃあ決まったらいつでも言ってくれ」

「かしこまりました」


 アイルの命令か。何気に結構楽しみだな。

 俺は負けた悔しさ半分、どんな命令を考えてくるのか楽しみなのが半分の気持ちを胸に抱え、その重い腰を上げた。


「扇様、ご武運を」

「おう。それじゃあ、見ててくれ」

「はい、もちろんでございます」

「じゃあ行ってくる」


 これから序列戦だ。

 憂鬱だが、今ならだれが相手でも負ける気はしないな。


 改めて美少女からの応援の力は偉大だと思いながら、俺は部屋を出て闘技場へ向かった。

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