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転生特典の権能《創造主》をもって異世界へ  作者: 葉ノ月サトゥー
第一章 王立魔法学院編  
28/177

対策会議

 4限目までの授業が終了し、昼休み。

 俺、アイル、星野、藤原の4人は屋上にて昼食を済ませた後、緊急会議を開いていた。

 議題は――


『第一回、八重樫(やえがし)(おうぎ)の序列戦での対戦相手、伊藤(いとう)洋祐(ようすけ)の対策について』


 ――とまぁこんな感じである。藤原が命名した。

 第一回、とか付いてる当たり一見するとふざけているようにも見えるが、本人たちはいたってまじめな模様。

 変な話だが、藤原が命名したにも関わらず星野が一切の文句を言っていないのが何よりの証拠だ。

 真剣な面持ちで会議を開いている。

 が、俺とアイルはいまいち乗れない。


「で、その伊藤とかいう奴のどこにそんな警戒してるんだ?」


 俺にはそもそもの問題として、こんな会議が開かれる意味がよくわからない。

 これはアイルも同じだろう。

 いくら序列が10位とは言え、そこまで警戒するようなこととは思えないんだが。


 どんなに強かろうがアイルよりも下だろうし、”神の権能”である《創造主》を止められるとは思えない。

 まあ、こいつらは俺がそんなものを持っているなんて知らないから、仕方がないとも言えるが。

 

 この際すべて話してしまおうかとも思ったが、やめた。

 たぶん、前のギルドの件で少し臆病になってるんだと思う。

 さすがに監視対象になるとは思わないが、これまで通りにはいかないだろう。

 まだ出会って2日目だが俺はこの二人のことを気に入っている。

 やっとできた同い年の友達なんだ、できればこの関係を壊したくはない。


 だから人前での使用を極力控えるようにしてる。

 メイとシュトレムは知っているが、メイは誰かに話すような事はしないだろうし、シュトレムはアイルが居る限り下手なことはしないだろう。


 そこまで考えを巡らせていると、星野が俺の質問に答えた。


「その伊藤洋祐っていう奴、勝つためには手段を択ばないって有名なんだよね」

「有名なんだ……」

「そ、序列戦の度に対戦相手を最低な手段で倒してる正真正銘の人間のクズ」

「そこまで言うのか」

「クラスのみんなの顔見たでしょ? あれが何よりの証明。で、たぶん今日から攻めてくるよ」

「攻めてくるって、具体的には? 序列戦での相手とは試合当日まで私闘は禁止なんだよな?」

「そうだけど、抜け道はある。伊藤の場合、自分の部下に序列戦を申し込ませるっていう戦法ね。連日試合をさせて疲弊したところを狙う、今思い返してもクズとしか思えない」

「なるほどな」


 確かにそれならルール違反じゃない。

 学校側からの注意が入っていないことから見てもそれは間違いない。

 しかし、何かが引っかかる。

 いくらルールに抵触しないとはいえそんな反則じみたことを学校側が黙認するか?

 それとも何か許可できるだけの理由があるとか?

 ……まあそれはいずれ分かるか。

 最悪本人に直接聞けばいいだけだし、問題はないな。


 それにしても、


「まるで実際に戦ったかのような口ぶりだな」

「戦ったの、実際に」

「……実体験なのか」


 だからこんなに警戒してるのか。

 まあそんなことされたら警戒するのもうなずけるか。


「ってことは、今回も同じなら今日から試合を申し込まれるってことか。ま、全員返り討ちにすればいいだけだな」

「ちょっと短絡的すぎない?」

「どのみち試合を申し込まれることに変わりはないんだろ? だったら考えたって意味ないだろ。それに――」


 ――最終手段として【完全回答】があるからな。

 最悪いつどのタイミングで申し込まれるのか、聞けば解決できる。

 あとはそのタイミングに遭遇しないように行動すればいいだけだ。

 何も問題はないな。


「それに、なに?」

「いや、何でもない。それよりもそんなに戦うのが嫌なら申し込みを断ればいいだろ?」

「あっ、そっか。編入したばかりだから知らないのか」

「?」

「えっと――」

「ちょっと待って梨乃亜さん! ここは僕が説明する!」


 うおっ、急に大声出すなよ驚くだろ。


「は? ……まあ別にいいけど」

「ありがとう! じゃあ説明するよ、扇君!」

「お、おう。よろしく頼む」


っていうかどうしてこいつはここまで張り切って説明しようとしてるんだよ。

 説明ってそんなに楽しいか?

 俺にはその気持ちがさっぱりわからないんだが。


 やたらと、やる気に満ちた藤原は意気揚々としながら説明を始めた。


「まず、序列戦を申し込まれた場合、大きく分けて二つの場合があります! それは、断れる場合と断れない場合です! まず断れるのは、自分よりも序列が上の者に試合を申し込まれた場合、そして断れないのは、自分よりも序列が下の者から試合を申し込まれた場合です! 伊藤さんが使うのは後者だから、基本的に断ることはできないよ!」

「え、そうなのか」

「うん!」


 そうなのか。結構面倒なシステムだな。

 あれ、でも俺って今序列ないよな?

 この場合ってどうなるんだ?と、聞いてみたところ、


「序列が不明の場合は、申し込んできた相手よりも序列が上っていう扱いになるからどのみち断れないよ! 逆にこっちから申し込むときは相手よりも序列が下っていう扱いになるから誰にでも申し込めるよ!」

「じゃあ俺がアイルに試合を申し込んだ場合どうなるんだ?」

「その場合も断れないよ! ちなみに、その場合勝った方の序列は不明のまま変わらないけど、負けた方は強制的に最下位にされるから気を付けてね!」

「おいそれ結構重要な情報じゃないのか!?」


 俺がそう言うと藤原はあはは、と笑ってごまかした。

 

 あ、危なかったな。

 少しだけアイルに申し込んでみようかなって思ってたんだよ。一度戦ってみたいし。

 でもやめる。勝てる気がしないし。

 さすがに序列最下位にはなりたくない。

 扱いがひどいって言うし。


「それで、方針としては全員返り討ちってことでいいの?」

「ああ、それで問題ない。まぁ何とかなるだろ」

「そ、アンタがそれでいいならいいけど」

「頑張ってね! 応援してる!」

「おう、やれるだけやってみるよ。じゃあ、会議はこれで終わり――――――じゃないな。肝心なことを聞き忘れてた」

「肝心なこと?」

「ああ。その伊藤って奴、強いのか?」


 ほんとすっかり忘れてた。

 これって一番大切なことじゃないか? まず真っ先に聞くべきことだと思う。


「それはもちろん。序列10位だし、何と言っても”役持ち”だからね」

「”役持ち”?」


 聞きなれない言葉を聞いて、首を傾げる。


「”役持ち”って言うのはこの学校の三大勢力である『生徒会』『風紀委員会』『エクストラ』のどれかに属している生徒のこと。伊藤の場合は生徒会の書記。ちなみに生徒会と風紀委員会は序列10位以上じゃないと入れない」


 生徒会に風紀委員会ってほんとにここ異世界か?

 元の世界との共通点が地味に多いような気がするんだが……。

 いや考えても一緒か。それよりも、


「『エクストラ』って?」

「『エクストラ』っていうのは、戦闘ではそんなに強くなくても特別な力を持った生徒が入る委員会のこと。この委員会は入るのに序列が関係ないから、特別な力さえ持っていれば誰でも入れる。と言うか、入った時点で序列っていう概念から解放される」

「へ~」

 

 特別な力、か。もしかしたら面白い”能力”を持ってる奴がいるかもな。今度訪ねてみようかな。《創造主》があれば行けると思うし。


「さてと今度こそ終わりだな」

「だね。ってそう言えばアイルは何も言わなくていいの?」


 そう言えばまだ一度もしゃべってなかったな。どうかしたのか?

 ちなみに星野の呼び方がアイルΔさんからアイルに変わっているのは昨日のお昼に友達になったからだ。

 友達になったのにフルネームで呼ぶっていうのもなんか変かなってことで。


「私から言うべきことはございません。私は扇様の勝利を確信しておりますから」


 アイルはさも当然のことのようにそう言った。

 それはお世辞でもなんでもなく、心からの本音だろう。

 心からアイルは俺の勝利を確信している。そう思った。


「はは、そこまで言われたら期待に応えないわけにはいかないな。全力で勝ちに行くよ」

「応援しております」

「おう、任せろ!」


 応援してくれるアイルのためにも、勝たないとな。


「ちょっと、毎回のことだけどいきなりいい雰囲気作らないでくれる? なんだかイラっとするから」

「なんだ星野、嫉妬か?」

「ッ……ばかッ……そんなんじゃ――」

「わかってるって、冗談だよ」

「………………………………ぜんぜん……わかってないじゃん」

「ん? なんか言ったか?」

「ッ……何でもない!」


 顔を真っ赤にした星野はそう言ってそっぽを向いてしまった。

 そんなに怒らなくてもいいだろうに。

 でも、俺もデリカシーがなかったかもな。

 今度なにかお詫びでもするか。


「梨乃亜さん、赤くなって可愛いね!」

「…………」

「っちょ、痛っ! ご、ごめん! 謝るから! 無言で蹴らないで!」


 俺は藤原と星野のそんなやり取りも見てはははと笑った。

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