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転生特典の権能《創造主》をもって異世界へ  作者: 葉ノ月サトゥー
第一章 王立魔法学院編  
24/177

昼休み屋上にて

 午前中の授業は滞りなく終了し、時間は昼休みに突入した。


 学生たちは皆思い思いの場所へ行き、お昼を楽しんでいる。

 それを見ながら、お腹の具合を確認する。

 ちょうどいい具合に空腹になっており、とても……と言うほどではないがお腹がすいていた。

 

 さすがに学校でアイルに料理してもらう訳にもいかないので、今日は食堂で済ませよう。

 そう思っていると、ちょうどアイルがやってきた。

 後ろには弁当を持った男女が数人、名残惜しそうな目でアイルを見つめていた。

 恐らく昼飯に誘って断られたのだろう。

 アイルは全く以て気にしていないが、俺に近づいていることに気が付くと、俺に殺意のこもった目を向けてきた。


 一体俺が何をしたというのだろうか。

 編入初日になぜここまで嫌われたければならない? 

 正直言ってかなりつらいが、そんなことは絶対に口には出さない。

 そんなことを言ってしまったらアイルが何をするかわからないからな。


 アイルは俺へ向けられる害意に異常に反応するからな。

 もしも俺が「アイツ死ねばいいのに」なんてことを口にすればアイルは迷わず殺しに行くだろう。

 さながら狂信者だ。

 まあ、ヤンデレみたいで可愛いからいいけどさ。


 そんなことを考えながらアイルに食堂で食べるという旨と、食堂までの道案内を頼んだ。

 いつもなら「かしこまりました」と言って快く引き受けてくれるところだが、今回は違った。

 何かを言いたげな表情でじっと見つめていた。


「ど、どうした? 何か不都合でもあったのか? あ、それとも用事があるとか、すでに誰かと食べる約束してるとかか? それならそっちを優先してくれていいけど」


 俺がそう言うとアイルは慌てたように否定した。


「そ、そういうわけではありません。ただ……」

「ただ?」

「その、お弁当を……」

「お弁当? もしかして作ってきてくれたのか?」


 俺がそう聞くと、アイルは小さく頷いた。

 そして少し俯きながら聞いてきた。


「ご迷惑でしたでしょうか?」

「まさか! すげー嬉しいよ!」

「ありがとうございます」


 ありがとうございますって、お礼を言わないといけないのはこっちだろうに。

 それに、女の子にお弁当を作ってきてもらってそれを迷惑だなんて思うはずがない。

 そんなことを思う奴がいたら俺がぶっ飛ばしてやる!


「食べる場所は……どこかいい場所あるか?」

「? 教室でよろしいのでは?」

「いや、まぁダメってことはないんだけどね。……ちょっと視線が」


 俺は眼だけを動かして周りを気にしながら、アイルには聞こえないくらいの小声でそう口にした。

 アイルは頭上に”?”を浮かべながら首を傾げている。

 アイルには悪いができれば探してもらいたい。

 さすがにこの視線の中でアイルのお弁当を食べたら、周りの生徒に殺される気がする。

 すでに血涙を流している生徒もちらほらと出てきている。

 この場を離れるのがお互いのためだろう。


「別に教室でもいいじゃん。それも美少女と行動を共にする者の宿命をして受け入れれば?」


 そう言いながら近づいてきたのは星野だ。

 手にはお弁当を持っている。


「受け入れるには時間が足りないんだよ。で? 何の用だ?」

「お昼、私もご一緒していいかな? と思って。あ、イチャイチャするのに邪魔って言うなら別にいいけど」


 星野は手に持ったお弁当を見せつけるように目の前に掲げ、フリフリと揺らした。


「お前な……。まあ、別にいいけど」

「私も異論はございません」

「オッケー。じゃあ移動しようか」


 そう言って星野は歩き出した。


「結局移動するのかよ!」


 っと、突っ込むのは心の中にとどめた。ここはありがたく移動させてもらおう。それが身のためだ。

 

 俺たちは、というより俺は敵意のこもった視線を背中に受けながら教室を出ていった。




「最初はどこに連れていかれるのかと思ったが、まさか屋上とはな」


 俺は屋上から見える景色を眺めながらそう口にした。


「屋上にはもっと人がいるものと思っていたが、意外にいないもんなんだな」

「まあ、もっといろいろと良い所があるからね。わざわざこんな何もないところに来たがるようなもの好きはいないよ」

「なるほどな」


 俺が納得していると、アイルが話しかけてきた。


「あの、扇様。どうして教室ではダメだったのでしょうか?」

「うっ……それは……」


 どうする? ここで本当のことを言ってしまうのは簡単だ。

 簡単だが後が怖い。

 もしも、クラスの連中の視線で飯が食いづらいなんてことがばれれば、アイルがどういう行動に移るのかわからない。

 ここで下手に動くわけにはいかない。どうする。


 俺が答えを言い悩んでいると、星野が口をはさんできた。そして、アイルに言う。


「アイルΔさん、主様の気持ちになって考えてみなよ。あんな注目される場所じゃ落ち着いてご飯も食べれないって」


 星野がそう言うとアイルは勢いよくこちらを向いた。


「そ、そうなのですか、扇様!?」

「いや、まあ、それは…………はい、その通りです」


 俺が観念してそう言うとアイルは一歩後ずさった。


「わ、私としたことが、扇様の真意に気が付けないとは……」


 どうやらひどく落ち込んでいるらしい。そのまま切腹でもしそうな雰囲気だったので慌てて止める。


「だ、大丈夫だから! ちゃんと言わなかった俺が悪いんだし、気にする必要はない!」

「ですが! このような女狐でも気づけたことを、私はッ……」

「ちょっと!? 痴話喧嘩に私を巻き込まないでよ!? ていうか女狐じゃないし!」


 思わぬところで流れ弾を食らった星野が叫ぶ。だが自業自得だ。


「わかったから、落ち着けアイル。お前は俺に弁当を作ってきてくれた。これでプラマイゼロだ。いいな?」

「……はい」


 何とか納得させることができた。さあ、早く食べてしまいましょう。せっかくの昼休みなんだからのびのびと使いたいし。


 そうして俺たちはお弁当を食べ始めた。

 食べ始めたんだが……やっぱり視線を感じる。

 と言っても犯人は分かっているが……。


 俺はニヤニヤと笑みを浮かべて視線を向けてくる星野に言った。


「なあ、星野? そんなに見られたら落ち着かないんだが?」

「いや~ごめんごめん。まさか本当にあたしの予想が当たってるとは思わなくて、つい」

「予想?」

「?」

「そう予想。アンタたちって主従関係ってやつでしょ?」

「! ……どうして、そう思った?」

「その表情が何よりも正解だと物語ってるけど、確信したのはさっきアイルΔさんに『主様の気持ちになって~』って言ったとき何も疑問に思ってなかったでしょ? それで」

「……なるほどな」


 まさか、あの時鎌をかけられていたとはな。こいつ結構頭いいんじゃないか?


「……申し訳ございません」

「いや、これは俺も悪いからな。気にしなくていい。……それよりも、何か目的があるのか?」


 俺がそう聞くと星野はキョトンとした顔で俺を見た。


「別に? ただアンタたちの関係が知りたかっただけ。あと、だれにも言わないから安心していいよ」


 安心していいと言われてもな、早々納得できるものじゃない気がする。

 が、現時点ではどうすることもできないし、気にしても一緒か。


 俺はそう割り切った。


 それから雑談をしながら弁当を食べ、しばらくして完食した。

 俺はアイルにご馳走様とお礼を言って、再び雑談に入る。


「二人とも、今日の放課後暇?」

「別に用事はないな」

「扇様に用事がないのでしたら私にもございません」

「そこも八重樫基準なんだ……」


 アイルの発言に星野が苦笑した。


「で、放課後がどうかしたのか?」

「放課後暇だったら、校内でも案内しようかと思って」

「校内案内か。俺としては正直助かるが……」


 俺はチラッとアイルの方へ視線を向ける。

 アイルは恐らくこの学校のことを隅々まで知っている。

 となるとアイルには必要がない話だ。

 俺もアイルがいれば道に困ることはないだろうし。

 

 するとそれに気が付いたアイルが返した。


「私も異存はありません」

「いいのか?」

「はい。問題ありません」

「じゃあ決まり。それじゃあ放課後――」

「ちょっと待ったッ!」


 星野が話を切り上げようとしたその時、勢いよく屋上の扉が開かれた。

 そこから入ってきた人物を見て驚く。

 まさかの知っている人物だったからだ。

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