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転生特典の権能《創造主》をもって異世界へ  作者: 葉ノ月サトゥー
第一章 王立魔法学院編  
23/177

楽しそう

今回は前話の話を扇目線で書いたものです。多分。ほとんど要素がない気がするけど一応そのつもり。

「八重樫の彼女の試合って今始まったとこ?」


 アイルの試合が始まるのとほぼ同時に、茶髪ショートの女子、星野梨乃亜がそう聞きながら近づいてきた。

 俺は頷き返事をする。

 星野は自然な動作で俺の隣に腰掛けた。

 さっきまでのぼっちが嘘みたいだ。

 相変わらず視線は物理攻撃のごとく突き刺さっているが、女の子の隣に座れるという事実さえあれば痛くもかゆくもない。

 ……そう、そうなんだが……今こいつ変なこと言わなかったか?


 俺はどうやら対戦相手と話をしているらしいアイルを見ながら聞いた。


「星野、彼女っていうのは?」

「アイルΔさんのこと」

「……だろうな。…………一応聞いておくがどうしてそう思った?」

「う~ん、二人の距離が近かったから、かな? 誰の言葉にも反応しなかったのに八重樫とは楽しそうに話しているし」

「……楽しそう」


 楽しそう、俺はその言葉に違和感を覚えた。

 アイルは基本無表情だから感情や考えが読みづらい。なんとなくこんなこと考えてそうだな~、と思うことはたまにあるがほとんどわからない。

 それなのに星野から見たアイルは楽しそうに見えたらしい。

 第三者の視点から見ればわかるのか、それとも星野がそう言うことに敏感なのか、単純に女の子同士にしかわからない何かがあるのか、まあなんだっていいが。


 ……そっか、楽しそう、か。そう見えたのならなによりだ。俺の目的に一歩近づいたってことだな。


 って、忘れるところだった。


「言っとくが、俺とアイルは付き合ってないからな?」

「え、そうなの?」

「ああ」

「ふ~ん」


 星野は興味なさげに返した。

 ……あれだな、俺はアイルの気持ちがわからないんじゃなくて、女子の気持ちがわからないのかもな。


 さて、試合に戻ろう。


「なあ、あの男子って強いのか?」

「強いよ」


 まさかの即答。一切考えることなく答えやがった。

 俺はどう強いのかを聞いてみた。


「アイツは藤原(ふじわら)(まもる)。メインの”能力”は【結界術】で、その特性がかなり強い」


 【結界術】っていうのは少し前にメイに聞いた覚えがある。確か使う人によって特性が変わるとかなんとか。


「あいつの特性って何なんだ?」

「結界一枚に付き一撃だけどんな攻撃も無効化する、っていうの。それを他の”能力”で何重にも張ってくるからとてもじゃないけどこっちの攻撃速度が追い付かないってわけ。そのくせ内側からの攻撃は普通に通るんだから、もはやワンサイドゲーム」

「……チートだな」

「全力で同意する」


 そんなやり取りの後、すぐにその藤原君? ……とやらが結界を張り始めた。これが思いのほか速い。一瞬にして、五十枚を軽く超えてしまった。


「一秒間に5、6枚ってところか?」

「大体あってる」

「なるほどな、これはきついわ。確かに攻撃速度が追い付かないだろうな」


 一秒間に5、6回以上攻撃しないと勝てないとか無理ゲーだな。

 まあ、俺はの場合は《創造主》ゴリ押しすれば勝てるだろうが、それでもチートなことに変わりはない。

 となると当然気になるよな。


「あいつの序列って何位?」

「確か31位だった思う」

「31位って……すごいな」

「ほんとそれ。30番台ともなれば待遇もいいだろうし」

「いや、俺が言ってるのはそっちじゃない」

「じゃあ何が?」

「あの鉄壁のガードを攻略できる奴が少なくとも30人はいるってことだろ?」

「……確かにそう考えると、すごいね」


 一秒間あたり約7回以上攻撃できる奴が30人。

 どうなってるんだこの学校。チート集団かよ。

 ……俺の言えた義理じゃないか。

 ちなみに、聞いてみたところ星野の序列は236位らしい。大体中間あたり。


「というか、アンタの彼女、まったく攻撃しないけどいいの?」

「だから彼女じゃないって。……まあアイルなりに考えがあるんだろ」


 あの藤原とかいうやつはまず間違いなくアイルが選んだ相手だ。

 おそらく俺に”神の魔法”を見せるために都合のいい奴を選んだってことだろう。

 ってことは十中八九大丈夫だ。

 というか俺としては藤原のほうがどちらかと言えば心配だ。

 チートな特性があるとはいえ、果たしてただの”能力”で”神の魔法”を防げるのか? 俺にはわからないが、なんだか嫌な予感がする。


「――――『神炎』」


 そんなことを考えているとついにアイルが”魔法”を使った。


 それはこの世の穢れの一切を取り除いたかのような純白の炎だった。

 その炎の玉が四つ、アイルの周囲を旋回しながら悠然と浮かんでいた。

 それは一見神秘的な光景だろう。

 銀髪ロングの美少女の周りに浮かぶ純白の炎、確かに神秘的だ。


 だが、あれは間違いなくヤバいモノだ。

 直感的に俺はそう理解した。

 そしてその直感を肯定するように、炎の玉がいきなり藤原に向かって飛来した。

 そして、ついに一発目の炎の玉が結界にぶつかり――


 ドバァアアアアンッッ!


 という音とともにすべてを焼き尽くした。

 炎がぶつかった瞬間の藤原のありえないものを見るような顔は忘れられない。

 おそらく自分の結界に絶対の自信があったんだろう。

 だが……一発目で全部破られるとはな。アイルが残り三つの炎の玉を消さなかったら確実にアイツ死んでたな。

 いや、もしかしたら闘技場ごと崩れてたかも。


 ただ、アイルとしてはもっと耐えてくれることを望んでたんじゃないのか?

 だとしたら藤原はいっそ清々しいんじゃないか? 


 俺が純白の炎が燃え盛る闘技場の舞台を眺めていると、星野が聞いてきた。


「……アンタの嫁って何者?」

「だから彼女じゃ――ってなんかグレードアップしてないか!? 嫁でもないからな!? あと、何者かは……すまん、俺にもよくわからなくなった」

「なにそれ。でも、すごいね。序列31位を一撃でって、前代未聞だよ」

「だな」


 アイルはすごい。

 それは分かり切っていた事実だ。

 今更揺るぎようがない。

 そして俺はそのアイルにあの”魔法”を教わることができる。

 光栄だな。楽しみ過ぎる。

 美少女とマンツーマンか。

 是非とも期待したい。


 と、そこでアイルが戻ってきた。

 俺はアイルにお疲れ、と言いつつ座るように促した。


「……いかがでしたでしょうか、扇様」


 少しだけ俯き気味になりながら、聞いてきた。


 星野がいる手前、下手なことは言えないが、今言っているのは間違いなく”神の魔法”のことだろう。

 試合前に『”神の魔法”をご覧に入れます』って言ってたもんな。

 そして、俺のために因果律まで操作して頑張ってくれたんだ。

 たとえ、それがどんな結果であろうと、多少やり過ぎであろうと頑張ってくれたことに変わりはない。


「すごかったよ。まあ多少のやり過ぎ感はあるけど、それを帳消しにするくらいカッコよかった。ありがとな、アイル」


 俺がそう言うとアイルは俯き気味だった顔を上げ、雰囲気が少しだけ明るくなった気がした。


「光栄です、扇様」


 そう言うアイルの様子を見て俺はやっと理解した。


 ――ああ、これが星野の言ってた『楽しそう』ってやつなのかもな。

 だとしたら嬉しい。


 やっぱり誰かと楽しいことを共感できるっていうのは嬉しいからな。


 俺はそう思いながらアイルの顔を見て、改めてお願いした。


「アイル、改めてお願いするよ。――俺に”魔法”を教えてくれ」

「かしこまりました」


 アイルはさっきよりも雰囲気を明るくして、そう返した。


 ほんっとに可愛いなぁ! ほんと俺には勿体ないくらいだよ。

 だからと言って誰かに渡す気はさらさらないが。

 ああ、異世界来てよかったな。

 ありがとうアリス! 俺幸せだよ!


「ねえ、アタシの前でイチャつかないでくれる?」


 星野が不満顔で言ってきた。


 別にイチャついてるつもりはなかったんだが、はたから見ればそう見えたのだろうか。

 ……いや、間違いなくそう見えたんだろうな。

 さっきから視線がマシマシで刺さってくる。

 男冥利に尽きるな。

 こんな可愛い娘となら尚更だ。


 俺はそんなことを考えながら、微笑んだ。

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