行き場を忘れた人の群れ【冬の詩企画】
焼肉屋の橙色に照らされて
縮こまった黒い影が
逆方向に流れていく
手袋をしていても
冷たい爪先
夜道は明るく照らされ
昼間のような賑わい
私は一人歩いている
頬刺す風を真に受けて
酒や焼き鳥の匂いに釣られ
行き場を忘れた人の群れ
イルミネーションが街を彩り
年増の低い声がする
楽しそうとふと零す
都会の夜はお祭り騒ぎ
けれど月はちっとも変わらない
薄雲がかったあの月は
白い光を私の瞳の中に映している
場所が変わろうとも変わらない
物悲しさを
受け取るように立つ
寂れた街角の木
帰るべき場所に帰ろう