7.買い物と刹那の部屋
3人は、まず食材の買い出しを行うことにした。
刹那はカレーを作るつもりで、食材を選ぶ。ジャガイモに人参、玉ねぎと野菜は比較的そのままのものが手に入りはする。
問題は肉だ。
昨今の状況的に畜産物に被害が多かったため、未加工のものは中々ない。合成肉なら取り扱いがあるが、カレーには向かない。
そこで、刹那はベーコンを塊で買うことにした。
3kgほどあるが、保存さえ出来れば最も安価で、最も味も良いと言える。
「ベーコンでカレーになるんですかっ」
「いけるいける。合成肉使うより美味しいよ」
「ホントですかっ!」
「楽しみ」
次に食器だ。こちらは今あるものに似ているやつを2セット買い足す事にした。
なので、響と天歌にはこの隙に適当な服を見繕ってもらうことにしたのだ。
「それでは、失礼して見繕って来ます」
「かわいーの、選んでおきますねっ」
「可愛いのもいいけど、部屋着と寝間着も忘れずにね」
「はーい」
刹那は食器を買って、二人のもとに向かうと何やら満足げな天歌と、悲しそうな響がベンチで休んでいた。
二人の間には大きめの袋があるので、適度な量を買えたと思っていいだろう。
「お待たせ。休んでるってことは買えたのかな?」
「はいっ。完璧ですっ!」
「思ったより早く済んだんだね」
刹那は言いながら中身を確認する。特に変なものや面白みわ遊び心があるものがなくて、ちょっと残念なのは二人に内緒である。
「……選択肢が、選択肢がなかったのです」
「どういうこと?」
「サイズが……スレンダー過ぎて、ここより女児用の方が種類ありますと言われました」
刹那が改めて響を見ると、確かにオブラートな言い方でスレンダーだ。
おそらく天歌の服を着ても、丈は合うが胸部装甲に余裕があるように見える。
それが二人の表情に出てるのか、と刹那は納得した。
それと同時に微笑ましく感じた刹那はつい、ふふっと笑い声を漏らしてしまう。
「笑わないでほしい……ううっ。これが環境による違い……」
「ゴメンゴメン。そこはまぁ……ね?」
そんなやり取りをしているところで、天歌のお腹が不意になった。
刹那が天歌を見ると、ちょっと恥ずかしそうだ。
「お腹空いちゃいましたっ」
「そうだね。そろそろ帰って夕飯作っちゃおうか」
「はいっ! あ、買った食器持ちます」
「そ? 気をつけてね」
天歌は、流れるように刹那から食器の入った袋を受け取り、そのまま軽やかな足取りで歩きだす。
「ほら、行くよ。響」
「……はい」
刹那の部屋についた頃には、日も落ち正に夕飯時といった時間になっていた。
天歌は大はしゃぎの様子で、目を輝かせているし、響はどこか落ち着かない様子だ。
「ここが、刹那お姉ちゃんのお部屋……! いい匂いがしますっ!」
「そう?」
「はいっ! ずっとここにいたいくらいですっ」
「そんなにかー、よしよし」
「これが地上の生活……」
刹那が、天歌の頭を撫でていると、響が一人驚いていた。無理もないだろう、天と地の地域差だ。
「適当に待ってて。えっと……そうだな。天歌ちゃん。これでも見ていて」
言いながら、刹那は空中に産み出された穴に手を突っ込み、目的のものを取り出した。
この穴は、アイテムボックスという魔法で、無詠唱で使える。次元の断層に物をしまい込むらしいが、詳しいことは誰も知らない。
取り出したのは、映像情報を保持しているメモリーと呼ばれるものだ。
メモリーは、側面にあるスイッチを押すと、映像が投影される。コンパクトで保存性も高い。
「記念にって、映像物としての完成品が贈られてきていたのを思い出してね。みたいのあればみてて」
「凄いですっ! これ生産数限定のまでありますっ! 響さん、響さん、どれ一緒に見ます?」
「一番凄い戦いしてるのが見たい」
「凄い戦いですねっ。待っててください!」