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よぞらに咲いた日  作者: 白田抹茶
1/1

1.幸せを知らない少年

初めての小説…緊張でございます。至らぬところもありますがよろしくお願いします。

 ――幸せって?――


 楽しいこと?嬉しいこと?心が満たされていること?まあ、幸せなんて人それぞれだと思う。僕にとっての幸せはただこうやって息をして、生きていられていること。ああ、これ以上に幸せなことってあるのかな。暗く狭いところに閉じ込められて、鎖で繋がれて、しかも食事は不味く、少ししか与えられない。殴られたり蹴られたりだってされる。あれ?こんなにされてるのにまだ幸せだって言ってられる僕って……あー、なんでこんなこと考えていたんだろう。もういいや、疲れた。


「はーっ…」

考えるのをやめ、全身の力を抜くようにそのまま冷えた地面に倒れた。ふと、鉄窓から見えた夜空は心を映すように月を暗く隠していた。

「月が見えない…」

空虚なその目には底がないような夜空があった。その目は夜空をただずっと見つめていた。


「本当にここであっているんだよね?」

「あ?ここって書いてあるだろ!それに見張りみたいなやつもいたしな。」

遠くか近くか小さな声で話しているつもひであろう声がふたつ聞こえてきた。

「な、なんだ…?」

思わず飛び起きた。そのふたつの声とふたつの足音はどんどんこちらへと近づいてくる。

「いや、だって本当にこんなところにいるの?いたとしてら、もうそれは幽霊か何かの類いだよ。」

「いるだろ。別にここでも住めねぇことはねえ。」

「え?それ、本気で言ってるの?君もまさか幽霊!?」

「あ!?んだとてめえ!」

怒声が鳴り響く。もう小さい声で話すつもりなど微塵もないのだろう。こんなに大きな声で話し…いや、喧嘩でもしていたら見張りの人に気づかれてもおかしくない。

「君の神経は図太いんだね。僕は無理かな。」

「お前が細すぎんだよ!」

いつまでやっているんだこの喧嘩…終わらなそうだし、声かけたほうがいいのか?少年は考え、

「あ、あのー…」

喧嘩の仲裁はするつもりはないが、少年は一応声をかけた。

「ん?」

「あ?」

声に気づいたのか、ふたつの視線がこちらえと変わった。

「え、えーっと…」

声をかけたはいいが何を喋ればいいか戸惑いを隠せない。

「ほ、本当にいたよ。こんなところに…」

「あ、ああ。だから言っただろ…」

さっきまでの二人の男の喧嘩は無かったかのように辺りは静かになった。

え?これは話しかけてよかったの?なんか驚かれてない?ど、どうすれば…

「君…」

「え?あっ!ひゃいい!!」

な、何?なんだ?なんだ?何?え?僕何か悪いことでもしたのかな?まさか…殺される!?

「名前は?」

「へ?名前?」

「そう、名前は何て言うんだい?」

和服の男が物腰柔らかな表情をして問いかけてきた。

な、名前?なんだ…よかった…殺されるわけじゃないんだ。でも…

「え、えっと僕…名前がないんです…」

「名前がない?」

「ここにいる人たちにはずっと『7番』と呼ばれてて…」

「7番君っていうのもね…どうしようかな…」

うーん…と真剣なのかよくわからない顔で和服の男は考えている。

「俺らが名前をつけるとかは?一時的なもんとか何か。」

もう一人の目付きが鋭い方の男が思い付いたと言わんばかりの顔で言った。

「あー!それはいい考えだね!君はどう?」

「え?あっ、はい!全然いいです!!」

今日初めて会った人に名前をつけてもらうのはどうかとも思うけど名前を貰えるのは、嬉しいな…

「そうだねー、つけるならやっぱりかっこいい名前にしたいよね…名前は一生物だからね。」

「いや、だから一時的なもんだって言ってんだろ。」

これはどうかな?いやこれも…と隣にいるもう一人の男の方と相談をして始めた。

そういえば、今さらだけどこの人たちの名前知らないや。それになんでこんなところに来たんだろ…見張りの人たちはどうやって…

「よし、決まった!」

ごちゃごちゃと考えている内にどうやら名前は決まったらしい。

「人の名前考えるのって難しいんだね。親の気持ちがわかったよ。ね、お父さん?」

「あ?誰がお父さんだ!調子乗ってんじゃねーぞ。」

「わー怖い…それより、待ってるよほら…」

いるようないらないようなやりとりが目の前で交わされどう反応すればいいかわからない。

「はーっ…えーと、俺たちが考えたから気に入らないかも知れない。嫌だったら嫌って言えよ。お前の名前は『七瀬 咲夜(ななせさくや)』に決めた。」

「ななせ…さくや…」

「七瀬はお前が七番って呼ばれていたというところからとったんだ。これは俺が考えた。」

名字まで貰えるとは思っていなかったため嬉しかった。

「で、下の名前は…」

「下の名前は僕が考えたんだ。」

そう言って、和服の男は少年に微笑んだ。

「今日は月もみえない真っ暗な夜空だ。でも、そんな光なんて通さないような場所にひときわ輝く一輪の花が僕には咲いているように見えた。そのときにね、すごく綺麗だと思った。そしたら、それが君だったんだ。だから、夜に咲く花で咲夜。なんか、僕ロマンチストみたいだね…あ、それとね花も入れようとしたんだけど…」

「女の子みたいな名前もいいよねとか言い出したから、俺が止めたんだ。」

それは、すごくありがたい。花子とかになってたら…ほら性別とか色々とね…(全国の花子さん申し訳ございません。)

でも、自分のことを綺麗だと言ってくれる人がいることにすごく驚いた。少年の目からは自然と涙があふれでていた。

「え!?き、気に入らなかったかな?」

二人は心配そうにこちらを見てきた。

「い、いえ!!その逆です!僕なんかをそんな風に思ってくれている人がいたなんてその、すごくうれしくて…」

「本当にありがとうございます!!」 

零れる涙を強く拭い、暗い暗い夜空の中で満面の笑みを浮かべた少年は、月が出ているかのようにひかり輝いていた。

本当に全国の花子さん申し訳ございませんでした。馬鹿にしているなどではありません。怒りが収まらないようでしたら、なんだこの作者と…

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