18:庭園学院 マッドサイエンティストの復讐劇
バレンタイン祭からの帰り道。
深刻な問題に発展しなかったことを安堵している晶の隣で、朝子とまどかが目を輝かせて感動を語り合っている。
「生徒会長さん、最高にかっこよかった。朱里はすごいなー。これから校則改革のために二人で戦うんだよね」
「そうね、愛のために戦うのよね。ロマンチックだわ」
盛り上がる二人を横目に眺めてから、晶は何食わぬ顔で隣を歩いているアルバートを見た。アルバートもまどか達に波長を合わせて「よかったですね」とにこやかに笑っている。
風巳が「だけど」と上目づかいにアルバートを見た。
「空想学園の校長先生は、中庭で倒れて担架で保健室に運ばれていたよね」
風巳の言葉に、アルバートはますます爽やかに微笑む。
「自業自得でしょう」
すっぱりと言い切る辺りが恐ろしい。晶が肌寒いものを感じていると、アルバートが真剣な面持ちで続けた。
「何の根拠もなく私の可愛い生徒達を悪し様に罵ったのですから、それ相応の報復はさせて頂きました。――たしかに古くからの決め事には大切な教訓がたくさん含まれていますが、だからといって新しい力を全く認めないというのはどうかと思います。温故知新という諺もありますし」
もっともらしく聞こえるが、晶が悪し様に罵られる根拠や理由はこれまでの行いから掃いて捨てるほどあるのも事実だった。校長の危惧も判らないわけではないと、晶は内心同情を禁じえない。アルバートには口が裂けてもそんなことは言えないが。
とにかく方法や手段はどうであれ、結果が良い方向に導き出されたのだから、それで全てが許されるだろう。
「それにしても、あの生徒会長には驚きました」
アルバートは未だにそれだけが腑に落ちないらしい。風巳が笑いながら口を挟む。
「そんなこと云いながら、博士、本当は薔薇色の水の効果を薄めてあったんじゃないんですか。完全に理性が飛ばない程度に」
晶も密かに考えていたことだが、それはすぐに一蹴された。
「私がそんな手加減をして何か利益がありますか。東吾の思惑に加担したことは事実ですが、私としてはあの校長が泡を吹くなら、彼が絶大な信頼を置いている黒沢遥が犯罪を犯して捕まるというシナリオでも一向に構いません。どちらかというと、そちらを期待していたのです。本当にどう考えても信じられない自制心です。晶も試して見ますか」
「遠慮しておきます。まどかを巻き込むのが目に見えていますから」
「そうですか、残念です。――それにしても、黒沢遥は絶対に人間ではありませんね。それが私の結論です」
そう豪語するアルバートの隣を歩きながら、晶は夜空を仰いだ。
真相は誰にもわからない。けれど、どちらにしても奇跡的な出来事だった。
自分の予感がいい意味で的中したことに、悪い気はしない。
吐く息が白く立ち昇って闇の中に浮かび上がった。
晶達の耳に朗報が届くのは、それから一ヵ月後。
三月十四日、両校の卒業式前日。
空想学園は見事に校則改革を果たした。
バレンタイン狂想曲 END
やりたい放題やらかしているお話に触れていただき、本当にありがとうございました<(_ _)>




