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ルーテリア、逃げる
ルーテリア・ユニアは、森の中の木々を利用して、自分を追う黒い影から身を隠していた。
もう体力は限界。カバンにストックしていた魔力回復のためのポーションも、底を尽きた。
( これだけは使いたくなかったけど……仕方ない )
ルーテリアは首に下げた青い宝石を握りしめ、身体に僅かに残った魔力をかき集める。
「古代書に記されしひとつの運命よ、次元を越えて、私に力を与えたまえ。今、この身を異世界の盟友の元へ!」
首飾りからまばゆい光が放たれ、ルーテリアの身体を包み込む。
その瞬間、森からルーテリアの姿は消え、彼女を追う巨大な黒い怪物だけが、うろうろと暗い森をさ迷っていた。