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LOST ー再試行に賭けた夜から朝へー  作者: 片ノ白 真緋
第1章 《ありうべからざるあるべき記憶》
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【2】『忘れる騎士のあらぬ予定』

今回はショコラ視点です。1話で椿が横浜で迷子になってる間のショコラの行動をショコラの主観的に書かせていただきました!

 おはようございます!どもども、ショコラ・サマーソング・アクスジャンです!


 目が覚めたら時刻は午前11時。なんだかとっても大事な用があった気がします…

 まぁ、何かあったとしたらその時はドンマイって事ですね。


 取り敢えず起きてから紅茶を飲んで、それからわたしの今日は始まりです!習慣ってやつですよ。なんかカッコよくないですか?

 ちょっと前に珈琲の方が大人っぽいと思ったので試しに飲んでみたんですけどね、あの苦さはわたしには無理です…香りは好きなんですけどねぇ…


 部屋全体を見渡して、カレンダーが視界に入った時、今日の予定に『異界調査会議9時から!』と書いてあるのが目に入ってきました。


「あ…これ今日かぁ。ん?9時からって…わっ!もう2時間も過ぎちゃってるよ!お、終わっちゃったかなぁ?」


 異界調査会議っていうのは、まぁ文字通りなんですけどね。正式名称が異世界空間国流文化調査促進化活動会議っていう長ったるい名前なんですよ。異世界を調査する為のあれやこれや決める会議の事です。


 詳しく言いますと、まずわたし達が住む世界の事を『α界』と、調査対象の異世界の事を『β界』と呼んでるんです、まぁ二つとも『界』は省略しちゃうんですけどね…

 この異界調査では主に文化や、政治、建設物などなどを調査するんです!

『β』の方が色々と『α』より進んでるんですよ、これが。

 例えば、『α』は『β』程ビル群はありませんし、よく分からないんですけど経済のあり方も『α』の方が劣っているらしいのです。というか、『α』の方に経済自体の存在があるかどうかって話なぐらいですから…

 他にも色々あるらしいのですが、まぁそれは後程で…


「に、2時間かぁ…あぁ、言い訳どうしよう…弟が熱を出して、でも弟居ないからなぁ……龍が襲ってきた、それもう国家問題だよぉ!」


 わたしがそんな言い訳を考えてた時に、案の定彼は来てしまった…


「ショコラ君?居るのだろう、開けなさい」


 優しく名前を呼ばれたと思ったら、次の言葉には薄っすら怒りが入ってました。怖いです…


「お、弟が熱を出してしまって!」


 …って、ちがぁぁぁぁう!!どうして今わたしはこっちの言い訳を言ったの?嘘ならせめて後者を言うべきだったのに!


「それは大変だな、どれ?僕がその弟とやらの病体を見てやろう…弟が、居ればな!!」


「きゃああああああああ!!!!!!ど、どど、どう、どうして人の家のドアを破壊出来るんですか!ランさんの頭はお飾りだったんですか!?」


 …わたしの家のドアを蹴り飛ばしたその男の名は、ラン・グドシャ・ストロンチウム・フォーカス。

 騎兵戦選武団という部隊の副団長でわたしの上司であり、わたし達の住むフォーカスという国随一の騎士です。

 …まぁ、カテゴリを龍騎士にすればわたしの方が勝ってますけどね!


「ドアを破壊されたくなければ2時間早く行動しろぉ!あと、嘘付くならもっとマシな嘘があっただろう!」


 確かに正論なのはわたしでも分かるのですが…どうでしょう、遅刻の対価として家のドアを破壊されたわたしの気持ちってわかってもらえたりします?


「兎に角だ、君の為に皆が予定を3時間もずらしたんだ。今からなら間に合うから早く支度をしなさい」


「…は、はぁ、わかりましたよ。でもそんな事するならわたしを抜かして会議やっちゃえばよかったんじゃないですか?」


「この頃の会議では君が必要不可欠な存在となってきているからなぁ、それにタルトさんのご好意だ」


 なんか嬉しい。えぇ、嬉しいとも。それでもドアは直らない…だから決して嬉しがっちゃダメだと思うのです。

 そんな事を思う内に30分程の時間が過ぎました。


「身支度終わりまーしたー。」


 わたしがそう告げると、律儀に外で待っていた先程から妙に怒りが抜けている上司さんはドアを開けて…ん?ドアを開けて?おかしくないですか?

 ついさっきまであった無惨に壊されたドアはなくなり、デザインはそのままにしろまるで新品の様な輝きを持つドアがくっ付いているんですよ!


「えと、わたしの身支度の間、何してたんですか?」


「ドア作ってた」


 この男の職業は何だっただろうか…いや、こんな人に時間はあまり取られたくないから考えるのはやめにしよう!


「よし、そろそろランマイの方に移動しようか。あと30分もあれば着くだろう。」


「仕事先と家が近いのは楽でいいですねぇ、あっ、ランさん紋竜車ありがとうですよ」


 そんな事を言いながら、ランさんが乗ってきた紋竜車に乗りました。あっ紋竜って言うのは紋章竜つまりワイバーンの事なんですけどね、そんなワイバーンさんに車を引いてもらうのが紋竜車ってヤツなんです!


「宜しく頼むぞ、トリスタン」

 

 ランさんはトリスタンという名前を付けられたワイバーンさんに手を当ててそう言うと、ワイバーンさんはそれに答える様に高々に吠えました。信頼ってヤツですかね。


「発車しま〜す!ドアが閉まりま〜す!」


 わたしはそりゃもうテンション上げ上げですよ!紋竜車に乗ったのはいつぶりでしょうか、半年は乗ってなかったです!


 やっぱり風が気持ちいいですねぇ…だけど寝過ぎだったんですかね、何故でしょう体が少し痛むんですよね…あと頭も痛いです。困りました、これから大事な会議なのに……


 あ、ちょっと待ってください!これはまずいです…酔ってきました、緊急事態ですよ!


「ら、ラン…さ…ん、やばいです、車…飛ばし過ぎです。車酔いが進撃してきました…うっ…ぷ」


「ま、待て!あと、20分間の辛抱だから耐え抜くんだ!アレだよ、外見て気を紛らわしておくんだ!」


 あと20分が長すぎますよぉ……待ってください、わたし10分で酔ったって事ですか?車酔いの弱さに自分でも驚きを隠せませんよ…

 外見てと言われましても乗った時からずっと外見てたんですよねぇ、車酔いに対する勝算が見つかりません…


「わたし…降りるんで先に行ってください…ちょっと休憩したら走って…追いつきますので……」


「早まらないほうがいい、紋竜車はこの速度で急には止まれないからな?」


 止まれないらしいです…そろそろ本格的にやってきましたよ…何がとは言いませんが、何か打開策はないものですかね…


「ーー待て」


「待ってるじゃ…ないですか……何なんですか?」


「君は確か、天属性の魔法が使えたよな」


「使えますけど…それが?…うっぷ……あっ!」


 魔法。よく聞く言葉だと思います、わたし達の使う魔法には幾つかの属性があるんですけどね、その中の一つである天属性は自己強化を主とする属性の魔法なのです!

 つまり酔いに対する耐性を自分に付加させればよかったって話だったのですよ!これが!


「レジスタ・パラドックス!!」


 あ!楽になりましたぁぁぁ!ショコラ復活です!!とは言ってもまだ酔いの余韻が残るので…上手くないですか?今の『酔い』と『余韻』がかかってたんですよ!…はい、話が逸れました。くどい様ですけど、酔った時にやってくるアレの感覚は薄っすら残ってるので、すぐに動こうものなら其処からはもう七色の道が開拓されますよ。だけど、それを承知の上でわたしは車を全力で楽しみますよ!!


「車酔いを気にせずに風を感じられるのは最高に気持ちがいいですね!」


 紋竜車から顔を出して全身で風を感じるんです!すっごく、悩みだとか不安だとかが飛んでいきますよ!まぁそんなものありませんけどね!


「ほら、早く座りなさい。なんだかんだやってるうちにもう着いたぞ。トリスタンもよく頑張ったな。」


 着きました!わたし達の住むα界一の規模を持つ国フォーカスの王家在住都、俗に言う首都ってやつのランマイです!ここはαの中でも特にβの文化が入った異国情緒、もとい異界情緒な都市なんです!ちなみに、わたしの家はランマイの隣にあるユーケという都市にあるんですよ!


「ショコラ!意外と早かったじゃないか」


 ランマイに入ってすぐの所で待っていたのはフォーカス王家の国王代理シフォン・ライトニング・セレニウム・ゴール・フォーカス・ランマイさんです!

 果たして、国王代理がこんな所にいてよかったのでしょうか?


「い、意外とって、まるでわたしが遅刻するみたいな言い方やめてくださいよ!…遅刻しましたけども!」


「ライトニング殿下、何度も申し上げておりますが外出の際は兵をお付けください。何かあってからでは遅いのですから」


 あ、この人わたしが話し終える前に話し始めましたよ、確信犯です!全く…わたしにはいつもムカー!って感じに怒ってくるのにシフォンさんには、と言うより、わたし以外の人には二コー!って感じの対応するんですよ、ランさんは。


「まぁ、良いではないか。こうして君達が来るまで私には何事も起こらなかったのだから、それにこうでもしなければ国民の日常を見れないだろう?」


「はぁ…もう好きにしてください。何かあったら時は呼んでください、すぐに駆けつけますので」


「ああ、その時が来れば宜しく頼むとしよう」


 何だろう、この空気。いやもうこれ、わたしが空気じゃないですか…


 時計を見ると、なんだかんだしてるうちにもう残り5分で会議が始まっちゃいますよ。


「ほらほら、行きましょう。もう会議が始まってしまいますよぉ〜」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それじゃあ、3時間遅れだが会議を始めよう。」


 到着は思いの外早く、3分かからないくらいで目的地に着きました!


「次は、どの調査班が行くのでしたっけ?」


「前回が確か、C班だと存じております。故にD班かと。」


 わたしの問いに騎兵戦選武団団長のビスコッティ・アンゴラ・ストロンチウム・フォーカス・ユーケさんが答えてくれました。

 異界調査では、A〜E班の五つに別れて順番ごとに調査へ向かうのです!


「D班か…確か、D班のコラニスが現在復帰が難しいとの事でしたが、どういたしましょうか、父上。」


「コラニス君か…彼の病体は其処まで深刻なのかね?ノーツ君。」


「えぇ。ただ、あと1ヶ月もすればリハビリに入って良いくらいにはなって来ましたよ。」


 あと1ヶ月って、結構長くないですか?

 てか、そのコラニスさんは何があったのでしょう…相当な怪我ですよね。お気の毒です。


「とすると、Eを前倒しにするか?」


「あれ?でもE班を先に持って来てもその後の調査は1ヶ月後ですから、そのコラニスさんとやらは間に合いませんよね?」


「それもそうか…ではこうしよう、ビスコッティ殿、現在の騎兵団に騎士経験があまり無いものは居ますか?」


「幾人かは。それがどうか致しましたか?」


「その者たちを連れて行け。これならその騎士達の経験値にもなるだろう?」


「なるほどぅ…ん?」


 今、物凄くこう、ぐわぁんと来ました!

 説明しにくいんですけど…とにかくぐわぁんと。


「シフォンさん…今、体がぐわぁんってなりませんでした?」


「あ、あぁ、確かに私も感じた…何だ?この感じは…」


 何やらヤバそうか香りがプンプンするぜぇですよ!!

 周りを見渡してみたら、なんと!わたしの後ろに黒、紫、水色のブラックホール的なのが聳え立っているのです!


「これ…わたし達が異界調査の時に使ってるゲートじゃないですか!?」


「えぇ、でもどうして、今此処に?」


 タルトさんはそう答えながら机にあった資料を押さえ込みました。やっぱりタルトさんってセクシーだなぁ…


「直ちにこの部屋から出るんだ!ゲートの引力が大き過ぎる!!」


 ランさんも気が付いたみたいです。はい、このゲート完全に暴走しています。あと、さっきからこのゲートに凄く見られてる感じがするんですよね…じ、自意識過剰じゃないですよ!


「ーーあっ」


 ちょっと逃げるのが遅れたっぽいですね。

 ゲートから出て来た龍らしき白い腕に掴まれそのままゲートに引きずり込まれました。


「ショコラ君!手を伸ばしなさい!」


 アンゴラさんに言われるがまま、わたしは手を伸ばしては見ましたが何も掴めず、いえ、わたしが持って来た鞄は持っていたのですが…


========================


 気が付いたらもう会議室ではありませんでした。


 まずは時間の確認。異世界移動をすると時間のズレがほぼ確で起こっちゃうんですよ…

 時計を見ると針は9時と12時を指してました。


「午前9時…か、αなら会議始まる頃かぁ。時間のズレに悪意を感じる…あっ、そういえば何処に飛ばされたのかな?」


 見えたのは、ビル、ビル、ビルで偶に駅。それにわたしを吸い込んだゲートがわたし達が異界調査へ行く時に使うのと同じ物だと仮定すれば、わたしが飛ばされたのはβ界。言い方を変えれば地球の日本、それも横浜に来ちゃいました!


 何故分かるのか、ですか?それはもうわたしも異界調査で何回も来てますからね!あと、駅名に桜木町って書いてありますしね。

 異世界の言葉が何故か分かるっていうご都合主義はわたしには働くのです!

 ご都合主義ついでに言っちゃうと、調査で来ると初めは人に姿を認識されません!


 ただ、人に触れられたらその人好みの姿として映し出されます!その姿の良し悪しって結構大きいんですよねぇ…


「「あ、ごめんなさい!」」


 そんな事を思った矢先に人にぶつかりました…こりゃもうダイゴさんも大誤算ですよ。

 でも、この人の好みの姿は今までで一番居心地良いんですよね。状況が把握しきれるまで映し出されたくなかったんですけど、これなら結果オーライです!


 なんだろう…この人凄く、じーっと見つめてくるんですけど…

 あっ、見てくると思ったら走って何処かに行ってしまいました。不思議な人が居るものですねぇ、人の事は言えませんが…


 それより、色々あって疲れちゃいました…何処か休憩出来るところを探しましょう。


「きゃぁ!」


 動き出したと同時に足を何かに掴まれました。いやもう、だいたいは分かってますよ。どうせ、さっきの龍の腕みたいなのですよ。

 足元を見れば其処には案の定、龍の腕の様なものに足を掴まれていました。

 はいビンゴ〜。次は何処へ飛ばされるのできゃあ!!


 思いっきり引っ張られました。段々と塩対応になってきましたよ…この腕…


========================


 うぅ…顔が痛いです…


「此処はどーこーでーすーかー!!!」


 其れなりに大きな声を出してみたんですけどね、誰も振り向いてくれません…

 と思ってましたが、誰かがこっちに来ました。あっ、さっきの不思議な人ですよ!どうして彼がこんなところにいるのでしょうか…

 でもなんだか、彼なら何か知ってるのかも、いえ、知ってるわ。どうしてかはわからないけど、わたしがそれを知ってる。だって彼を見る度、心が前へ前へと出てこようとするのだもの。理由にはならないけどこれが理由。

 口を大きく開けて深呼吸。一歩二歩と進んでから大きな声で!


「あの!どうやったら帰れますか!!」


次回からは1話と同様の形式で話を書いていこうと思ってます!

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