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the number  作者: ニイナ
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多分売れないだろうなぁ。。と思う芸人のネタは、何処かで聞いた事がある言葉の言い回しや、本当にその使い方じゃなくても使う言葉選びの浅はかさが垣間見える所から。

「なあ、今日の晩暇?」缶を片手に、利き腕じゃない方の手で、黒のスラックスの右ポケットで震えていたスマートフォンを取り出す。画面に映る、親友とも呼べない、友達とも呼べるのか解らない連絡先を知っているだけの知り合いからメッセージが届いた。

同じ高校だった。

私が通っていた高校は県内で名の通った野球の名門校。プロ選手も多数排出する学校で、高校野球の大会では毎年欠かさず本選に出場出来る学校だった。その学校での野球部員の地位は少なからず私よりも上の立場で、顧問の先生自身の地位も古株な事もあってか、多くの先生は≪部員≫に対し特別な対応を取っていた。校内では、自分の力だと言わんばかりに廊下幅一杯に数人並んで肩を切って歩く。金持ちの親に買ってもらったブランド物の財布を見せびらかし、ダボっとしたブカブカのズボンを腰骨の下まで下げて履き、自分の弱さを、返って見せ付けていることに気付く者は一人も居なかったし、そこに気付く一般生徒も居なく、≪部員≫と仲良くする者のほとんどは自分の身を守る方法として。又、気弱な生徒は≪部員≫に近付かず目立たないように。それぞれの身を守る方法を入学当初から本能的に行なっていた。そう言った部分に全く無知で何も考えていない、上っ面だけが良く見えるであろう女生徒は≪部員≫と付き合うのが一つのステータスだとでも言わんばかりに猛アプローチを仕掛ける。校内体育祭で彼らが走れば女生徒達の疳高い声援。文化祭の部活対抗の出し物でも同じ歓声。まあ社会の縮図とでも言えるような学校だった。私は入学当時から、いや、生まれてからもずっと性格は変わらずそんな不可解な事に嫌悪感が拭えず、先生達を下に見ていたし、≪部員≫に限ってはただの操り人形としか見ていなかった。では何故この学校に入ったのか、入学する前に学校の情報を調べなかったのか、調べた上でこの学校を選んだ。この学校の生徒の男女比は1/3で40人のクラスに男子が10人前後しか居ない。理由は先の≪部員≫がいる事、女生用の制服が魅力的だった事。もう一つは専攻にデザイン科という物があり、アニメやそう言った物が好きな謂わゆる、地味な女の子が好んで来るからだ。そんな中に躊躇無くこの学校を選んだのは女生徒にモテたいのでは無い。女性とは本当に強く美しい。女性が居なければ私達は産まれないのは周知の事実、又その逆も言えるだろうが、そのソレ、とはまたニュアンスが違うと私は勝手ながらそう思っている。そもそも私の性別は男性と区別されている理由は、有るか無いかだけの定義で区別されてる事に何とも不可解な疑問を感じる。実際、男っぽい女、女っぽい男なんて言葉があるが、世間での、男っぽい。のイメージが、逆のイメージの、女っぽい。のイメージとそれぞれ逆の意味ならそもそも確固たる区別の定義が無いのではないだろうか?と頭のスイッチが入ってしまう。かと言ってその不可解な問題を自ら研究し解く為に入学した訳では無い。今の所絶対数が多いからとだけ言っておこう。

私には確固たる目的がある訳で、取り敢えず私の目的は勉強や、卒業後の人生、恋愛、そう言った物では無いし、取り敢えず高校だけは出る、と言った全くもって無意味な保険的思考、惰性の心情を自分、又は周囲の心情を肯定する為だけの言葉を使った物でも無い。なので進級する為の点数、日数を、毎学年、毎学期全て同じ数字で、最低ラインでこなして行く。学校内の小さな小さな権力者に、恐れ慄いている講師の授業など無価値かつ不利益で、時間と言う価値を失い続ける事に少しでも利益を得る為、生徒が守らなければならない最低限のルールを守りながら、授業中と言う事を忘れるよう努力した。そんな私に、中身を見透かされているのでは無いだろうかと恐れてか、威嚇を仕掛けられるが、そんな不可解な事に構ってられる程私の頭は遅く無い。と無視を決め続けるのである。あの当時の講師の名前を一人も覚えて居ない。誰一人私に教えて居ないからだろう。

ある授業中同じクラスの≪部員≫が私を見ていた。視線を感じたからでは無く私が聞いていたMDの音が漏れていたらしく、五月蝿えなと言わんばかりの表情でこちらを見ていた。講師に不条理な事でも、適確な注意をされた時でも気を荒げる事は滅多に無い私だが、その時は、聞いていたメタリカの音も有ってか、はたまた授業を聞いている訳でも無いし、勉強している訳でも無いし、気弱な一般生徒を、自分達の力を見せるように自分の力に酔う様にパシリに使い、自分達の都合のいい様に大人達によって作られた環境に身を置く。そんな人間達に日頃から抱いていたいくつもの鬱憤を溜めていた頭の部分がサッと真っ白になった瞬間、大声で「なに見とんじゃお前!」「出ろ。ほら、早よ出ろて」と相手の身体を引っ張り上げ、有無を相手が言う前に抵抗させる暇もなく教室のドア前まで引きずり飛ばしていた。教室は騒然としていたらしいが、真っ白な頭になった私にはそんな小さな音も聞こえず、聞こえている音は、馬鹿でかい金属が真っ白な部分の中を高速でぶつかりながら、表に出ようとしてランダムでぶつかる場所を変える。そんな音しか聞こえず、利き腕ではない方の手の甲を相手にシッシと犬を離れさす様に「早よう、出ろて」と≪部員≫に詰め寄る。日頃の素行が余り宜しくは無かったし、そもそも誰とも話さないし、感情を出さない私が初めて見せた感情が怒りだったのもあってかよっぽど恐ろしかったのだろう。女生徒の数人が涙を流し、部員の顔は蒼白で震え、講師は止める素振りすら見せていない。そんな教室になった私の怒鳴り声を聞き付けて、隣の教室の廊下側の窓から数人の生徒が顔を覗かせている。冷静さを欠いた私だがここではマズいという考えだけは浮かび≪部員≫の背中を突き、「行け」と廊下の奥側にある下の階にしか行けない階段に向かおうとした所数人の講師に掴まり頭の中の馬鹿でかい金属が動くのをやめた。

犯罪を犯しても、モラル的に駄目な事も金を稼げれば許される時代の様です。

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