表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日も私は死んでいる  作者: 柿の種
3/153

会話とは

そして一週間、男は蛇と口を利かなかった。もちろん蛇も男と口を利かなかった。そして蛇が溜息まじりで言った。


「お前は一体何なんだ、ずっと動き回っていたかと思えば、今度は凄まじく喋りだし、喋ったかと思えば今度はだんまり。いつ喋るのか待ってたらもう七回も日が沈んじまった」


「別にもう自分の正体もわかったし喋ることもない」


「お前…お前みたいなやつがいるから、最近の若い奴はって言われるんだよ!いいかお前、会話っていうのは大事なんだ。確かにお前の言う通り、会話がなくても明日は来るさ。でもよ、それだとなんか寂しいだろ」


「寂しいのか、そうなのか、そんなもんなのか。…ところで会話とはどうやってするんだ」


 蛇は驚きに満ちた顔をした。そして急に優しい顔になった。


「…お前…親がいねーのか、まあそうだわな、ここじゃいつ死ぬかわからねえ。お前にいろいろ教える前に死んじまったか」


「確かに親がいない、自分には親がいない、だったらなぜ私はここに…」

 男がぶつぶつと独り言を言い出した。


「おい!お前そのぶつぶつモードやめろ、お前はそれに入ると異様に長い」


男はふてくされたように

「…やめた」

 と言った。


「よし偉いよくできたな。…それでなんだっけか、会話だな会話。えー会話はどうやってするんだってーと、まあこれも会話といやあ会話だが…説明になると難しいな。…うんまあ困ってるやつがいれば、大丈夫かって声をかけてやる。怒ってるやつがいれば、どうしたんだよって話を聞いてやる。そして泣いてるやつがいれば、何も言わずに寄り添ってやる」


「最後のは会話ではないのではないか」


「うるせーお前バカ!会話ってもんは全部が全部言葉で成立するもんじゃねーんだよ、はっきりいってな会話ってのは、相手が自分と話してどんだけ気分よくなってくれるかなんだよ」


「それでは自分の気分はどうすればいいんだ」


「皆にそういうことができるようになったら、おのずと自分が困ってるときは誰かが声をかけてくれるさ。大丈夫かってな」


「そうなるとどうなるんだ」


「まあこう言っちゃあなんだが、素直にうれしいってもんだ」


「うれしいのはいいことだな」


「だろ!うれしくて不愉快になる奴なんて俺は見たことがねえ」

そう言って蛇が月を見上げた。





人間はこういう感じの表情をを(すこしうざめ)などと言っていた気がする。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ