下の世界
「おかあさん、またむし食べたい!」
たからが起きるなり言った。お母さんリスは眠い目をしばしばさせながら
「じゃあ後で捕りに行きましょうね」
「やった!やった!」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら言う。それをお父さんリスが隅のほうでジッと見ている。そして急にたからの前へきて口を開いた。
「…たから…お父さんも虫を捕まえられるんだよ。だからお母さんだけに頼まなくてもね…あのー…」
さみしそうな声でぽそぽそ言っている。
「じゃあおとうさんもいっしょに行こう」
まだぴょんぴょん飛び跳ねている。それを聞いてお父さんリスはニヤニヤしながら隅のほうへ戻っていった。
そして皆で木の実を食べ、虫を捕りに行った。
たからはるんるん歩いている。するとお母さんリスが
「たから、今日は木の上じゃなくて下に降りるのよ」
と優しい声で言った。
「下って草がはえてるとこ?」
「そうよ、草が生えてるところ。たからはまだあまり下に降りたことなかったよね」
「うん、下は木の上よりもきけんだっていってたから」
「そう、なんで危険なんだっけ?」
お父さんリスが聞いてきた。
「えっと、ほかのどうぶつに食べられちゃうから」
「そうだね、よくできたね!」
お父さんリスが、たからの頭をなでながら言った。
「そう、それでもし、私たちが食べられちゃったら、どこにいくんだったかしら」
お母さんリスが、たからの手をつなぎながら言った。
「てんごく!」
「そう天国よ、正解!…もし私たちが食べられちゃったら、私たちは、たからをどうしてるんだっけ?」
「みまもってる!」
それを聞いたとたん、お母さんリスの手がぎゅっとなった。お父さんリスも下を向く。
「そう見守ってる、正解よ…だからどんなことがあっても安心して生きなさいね」
するとたからがしょんぼりして
「…やだ、いっしょに生きよう…」
とぽつりと言った。それを聞いてお母さんリスの目から涙が落ちそうになった。するとお父さんリスが
「そりゃあ皆で生きたいさ、ずっと天国じゃなくて、たからの隣でたからを見守っていたいよ」
「…じゃあみんなでいっしょに生きようよ…」
お父さんリスの目もうるうるしだす。そして
「そうだ!皆で生きよう!生きて、たからを見守ろう!」
「そうね!その通りよ!一緒に見守っていきましょう!」
お父さんリスとお母さんリスが決意を固めたように言った。
そうして下に降りた。たからは恐る恐る下に降りたが、そのあと地面の感触にびっくりし、ぴょんぴょん飛び跳ね、少し歩き、少し走り、笑みを浮かべ、それからずっとぴょんぴょん走っている。
「なんか下って、じゆうでたのしい!」
「たから、遠くに行ってはダメよ」
「うん、わかった!」
お父さんリスもお母さんリスも、たからを幸せそうに眺めている。
「あの子のために生きよう」
お父さんリスが言った。
「そうね!」
お母さんリスがお父さんリスの手をぎゅっと握った。
「あの子は私たちの宝だ」




