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8.救世か滅亡

声を聞いた俺は、慌てて声の主を捜した。

転生してから始めての会話出来そうな相手。

是非話しがしたい。

この世界の情報もいろいろ欲しいことだし。


『お望みなら、許されている範囲でお教えいたしますよ』


その追加の言葉に、俺はさらにキョロキョロと視線をあちこちにやった。

しかし、俺の周囲に人影はおろか、モンスターの姿さえなかった。

あと残っている可能性は・・・。


俺は視線を背後のエレメンタルに向けた。


『そっちは違いますよ』


が、すぐに声に否定された。

こうなると、候補が俺にはもうない。


『私はこっちです』


こっち?こっちはどっち?


『貴方の背中です』

背中?

俺は五つの頭を背中の方に伸ばした。

そこにあるのは、先程見た双葉。

エレメンタルの苗木である。

名称に食い違いがある気がしないでもないが、そこは置いておこう。


『そうしてください。ただたんに、そう表示されているだけですから』


・・・ひょっとしてだが、俺の内心を読んでないか?


『たしかに読んでいますよ。もっとも、表層意識の部分というか、言葉にしたい部分を読んでいるというのが正しいんですけど』


・・・まあ、会話が成立するのなら良いか。それで、貴女はエレメンタルということで良いのか?


『是であり非ですね。私はこのエレメンタルの苗木でもありますが、全体から見ると私の一部にすぎません』


では、その全体というのは何なんだ?


『貴方が転生されたこの世界そのものです』


世界?そういえばエレメンタルの説明文に、世界の端末とあったな。言葉通りの意味だったということか?


『そうです。エレメンタルというのは、私の身体の一部。その中でも、人体でいう手足や指に相当します』

へぇ~、随分と大きいというか、戦闘能力の高い手足なことで。


『現在はその必要性があるのです。本来なら、端末に戦闘能力なんて持たせません』

本来なら?じゃあ、今は緊急事態なのか?


『そうです。貴方もアビスには遭遇したでしょう?』

ああ、なるほど。たしかにあんなのが徘徊しているんだ、端末に戦闘能力は必要だろうな。


実際に襲われているだけに、すんなりと納得がいった。


『別にそれだけが理由ではありませんが、そんなわけで現在は私も自分の内側に介入する為の端末を確保しているのです』


世界もいろいろ大変なようだ。

それに、まさか世界と会話をするなんて思ってもみなかったな。


『それは私もです。普段の私なら、今までのメッセージ程度までしかしませんから』

普段の世界なら?

そういえば、なんで俺に端末を融合させたんだ?


『貴方と会話する為であり、貴方に頼みたいことがあるからです』

会話と頼み事?


『そうです』

それで、頼み事というのは?

世界からの頼み事というからには、かなり規模の大きな話しになりそうだ。


『私達に協力して頂きたいのです』

私達?それに協力というのは、何に?


『私達というのは、私(この世界)とこの世界に巣くう人類種、異世界の存在を除く、この世界に存在する全てです。そして協力というのは、私達の滅亡を阻止して頂きたいのです』

・・・世界の滅亡を阻止するって、それは勇者に頼むことでは?

モンスターに転生した俺ではなくて。


『あいにくと、この世界に私達を救って下さる勇者はいません。それぞれの人類種を救おうとする勇者ならわりといるんですけどね』

へぇ~、この世界には勇者がいるんだ。

モンスターと併せると、ますますファンタジーだな。


『私達には魔王ポジションですけどね』

そうなのか?


『はい。各人類種の最大戦力ですから。他勢力の勇者などと接敵する度に、周囲に大規模破壊を撒き散らすんです。私達は、とんだとばっちりで堪ったものではありません』

それはご愁傷様です。


『本当です』

というか、この世界では勇者同士が敵なんですか?


『ええ。この世界には、全人類が力を合わせて戦うような魔王の類いはいませんから』

アビスは、そのポジションにいないのか?


『将来的にはそうなるかもしれませんが、現在アビスはあまり人類に認知されていませんので、そうはなっていません』

そうなのか。

『はい』


・・・勇者が世界を救う存在ではないことはわかった。

だが、なんで俺に協力を求めるんだ?

さっきも思ったが、俺はモンスターに転生しただけの人間だぞ。


『今は教えられません。ですが、貴方はモンスターに転生した人間という立ち位置ではありません。貴方は、転生プレイヤーですから』

転生プレイヤー。

それについての説明は可能か?

『すみません。それも無理です』

そうか。

情報制限が多いな。

なら、そちらの提案にのったとして、具体的には俺はどう協力することになるんだ?


『私達の希望としては、この世界を脅かす人類種と、異世界存在の数を減らしてもらいたいのが一つ。あとは、現在各地に封印されている、この世界の管理神達の解放に手を貸してもらいたいのです』

敵と戦うことと、神の救助?

アビスや人間とは、どっちみち接敵したら戦うことになると思うから良いが、この世界の神はなんで封印なんてされているんだ?

世界である貴女が封印から解放することを望んでいるなら、邪神や悪神の類いではないんだろう?


『はい、そのとおりです。彼女達はまごうことなき善神達です』

じゃあ、なんで封印なんてされてるんだ?


『この世界の人類種達の愚かさ故です。詳しいことは聞かないでください。私としましては、他の世界の方には聞かせられないとても恥ずかしい内容ですので』

・・・了解だ。


深く聞くのは止めておこう。

本当に恥ずかしいみたいだし。


まあ、そちらの要望は理解した。

一応聞いておくが、俺がその頼みを聞いた場合のメリットはなんだ?

『まずは私達のバックアップを受けることにより、貴方の生存率が上がります』

それはわりとありがたいな。

たった一日で、ハンターホークやアビスポーン達に殺されかけてるからな。


『一応訂正しておきますが、貴方が私の中に転生してからすでに四日が経過していますよ』

へぇ?


『ですから四日経過しています。貴方が気絶したり、進化の為に眠っている間に日を跨いでいますから』

あっ!ああ、やっぱりあれだけのことがたった一日で起こるわけないか。

妙に納得というか、安心した。

あれだけのトラブルが一日で起こっているなら、そろそろトラブル吸引体質を疑うところだったからな。


良し、一つ目のメリットは理解した。

他にメリットはないのか?


『あとは一つ目と被りますが、貴方の能力強化や進化のサポート。この世界の情報から、貴方の敵の情報までいろいろとご提供出来ます。お望みなら、新しいスキル・能力・魔法・眷属モンスター・進化先を、貴方だけの為に作成しても構いません』

えっ!?

いや、それは優遇し過ぎだろ!


『私達は別段そうは思いません。それに、現在リソースが有り余っていますので、消費してもらった方がありがたいのです』

リソース?


『はい。リソースというのは、世界を循環し、保全・維持・発展・補強・拡張する為のエネルギーです』

なんかだか凄そうなエネルギーだが、有り余っているのか?

『はい。もうすでに私にリソースは必要ありませんので、消費先がなくて有り余っています。ですので、この機会に全て使い切ってしまいたいのです』

ちなみにそのエネルギー、使い切ったらこの世界はどうなるんだ?


何となくだが、良からぬ事態になる気がした。


『滅びます』

へ?


『滅びます。ですが、お気になさらないでください。貴方や私達は、私が滅んだ後に創造される世界に引っ越しますので。本当の意味で滅びるのは、人類種達と異世界存在だけですから』

何か、聞いてはならない言葉を聞いてしまったような?


『気のせいです』

気のせいなのか?

世界を救う協力を頼まれた直後に、世界の滅亡を頼まれたような現状が!


『その辺は人類の言葉を使用すると、意味合いなんかで問題が出てくるだけです。実際の協力してもらう内容に、齟齬や問題はとくにありません』


・・・そうか。


どうやら、人としては理解出来ないあれこれがあるようだ。



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