6.進化先は
うう~ん。
俺は意識を取り戻し、ゆっくりと身を起こす。
そして視線を巡らせ、現状確認を行った。
周囲は開けていて、アビスポーン達の姿は目視、マップの両方で確認出来ない。次に自分の傍を見る。
数多の色に輝く透き通った水晶で出来た大樹。
今俺はその根本に居た。
俺が次に目覚めた時は、てっきりアビスポーン達に捕まっているか、捕食されてしまっていると思っていたが、どうやら何かしらの別口に捕まったか、助けられたようだ。
今度はアビスポーン以外の存在を捜してみる。
すると、マップ上では自分の傍にモンスターの反応があった。
俺は視線を大樹に向け、ステータス情報確認を要請した。
【エレメンタル:ターミナル】
Level:300
HP:1500000/1500000
MP:4800000/4800000
[成長][HP自動回復][MP自動回復][端末生成][共生][ステータス貸与][情報共有][地脈門]etc.
【地脈に根を張り、その地域の情報収集及び、調整を行う世界端末の一つ。基本的にはこの世界の人類種、異世界の存在と敵対しているが、■■■■■の眷属やモンスター型の転生プレイヤーには友好的】
・・・なんだこれ。なんだよこのステータス!?
Level:300のHP百万オーバー!!
どんな化け物モンスターだ!
しかも、MPはその三倍以上な上、回復系の通常スキルも完備!
誰が倒せるんだよ、こんなモンスター!!
はぁっ、はぁっ、はぁっ。
内心叫びまくって、少しは落ち着いた。
冷静な目で一口メモの部分をもう一度読んでみる。
その結果、このエレメンタル:ターミナルとやらの馬鹿げたステータスと、自分が現在五体満足で生きていられる理由が理解出来た。
こいつの壊れ性能の理由は、世界の端末だから。
俺が殺されなかったのは、俺が転生プレイヤーだったから。
アビスのような理解不能な相手よりも、少なくとも背景が理解出来るエレメンタル相手には、不安を覚えずにすむので気が楽だ。
今まで緊張していたせいか、一気にだれた。
そのまま全身を大樹に預ける。
そして、しばらくぼけーっと、した。
それからは何の問題も発生せず、ゆっくりと時間が流れていった。
そろそろ現状把握を始めるか。
ステータス情報の確認を申請。
【受諾。ステータスを表示します】
プレイヤー名:未登録
種族:トリプルヘッドスネーク
Level:16/16
HP :115/115
MP :100/100
SP :69
【攻撃】53
【防御】63
【魔力】55
【敏捷】105
【精神】119
【運】まあまあ
【属性】水・毒・氷
【特殊能力】
[ゲームプレイヤー:Level2]
[生物進化の道:Level2]
【耐性】
[水中適応][空中適応][空間適応][毒耐性:Level1][打撃耐性:Level2][出血耐性:Level1][失血耐性:Level1][精神耐性:Level1][気絶耐性:Level1][落下耐性:Level1][氷雪耐性:Level1][寒冷耐性:Level2][ドレイン耐性:Level1][寄生耐性:1]
【通常スキル】
[毒生成:Level1][熱感知:Level1][脱皮:Level1][吸血][流血][重力:Level2][冷気:Level2][連続攻撃:3][並列思考:3][多重起動:3]
【称号】
[転生プレイヤー][■■■■■■■]
【祝福・加護】
[■■■■■■■]
【経験値】6280
次のLevelまで0
うーん、ステータスの伸びはそこそこだな。
まあ、上限が16ならこんなものか。
あとはちょいちょい耐性や通常スキルのLevelが上がっているな。
この辺りは順当だな。使ったやつが普通に上がっているし。
けど、せっかくSP交換で獲得したドレイン耐性と寄生耐性は、エレメンタルに助けられて無駄になったな。
まあ、上限Levelに到達しているから今から進化するつもりなんだし、あの謎称号か祝福の効果で何かのスキルになってくれるなら、まったくの無駄というわけでもないか。
それに、これからもアビスと遭遇する可能性はある。
先行投資だと思っておこう。
さて、現状把握はこんなものか?
なら、次は二回目の進化だ。
進化先の表示を頼む!
【受諾。進化先を表示します】
【ハイポイズンスネーク】
【クアトロヘッドスネーク】
四つの頭を持つ蛇。身体も肥大化し、巻き付いた相手の身体を容易にへし折れる。
【ブリザードスネーク】
雪原に生息している氷属性の蛇。
口から猛烈な吹雪を吐き出し、獲物を瞬く間に凍り付かせる。
【グラビトンスネーク】
重力子を自在に操る蛇。
自由に空を浮遊し、獲物を高重力の鉄槌で一撃の下に粉砕する。
【ウ゛ァンパイアモドキスネーク】
夜行性の、吸血鬼に類似した特徴を持った闇属性の蛇。
獲物を惑わせ、その血を啜る。
水属性を持っている場合、限定的な霧化も可能。
クアトロヘッドスネーク以外の進化先は、最近使った通常スキルの[毒生成][冷気][重力][吸血]がそれぞれ影響してそうだな。
まあ、クアトロヘッドスネークの方も、謎称号と祝福が影響している可能性があるが。
なんせ、頭の数を増やすと追加で頭を増やすようなやつだしな。
・・・せっかくだから、他の部位も増えるか試してみるか。
俺はアビスポーン達にボール扱いされた時のことを思い出し、腕が欲しいと思った。
しかし、進化先は全部蛇型。
手も足も無い。
なら、SP交換で手に入れれば良い。
そして、その腕も増えるのか確認する。別に増えなくても、一本あれば便利だし、損にはならない。
早速交換だ。
SP交換発動を申請。
【受諾。腕のリストを表示します】
[現在交換可能な腕]
・各種族の腕:各10SP
それぞれの種族の腕。
・蔓腕:10SP
蔓を束ねた植物性の腕。破壊されても自力で再生が可能。
・触腕:10SP
触手を束ねた筋肉質な腕。力が強い。
・義腕:10SP
人の腕を模した金属製の腕。定期的なメンテナンスが必要。
・魔力腕:15SP
魔力を腕の形にする通常スキル。形状・長さ・強度・属性などは、使用者の魔力に依存する。
・浮遊腕:15SP
本体から離れて活動する腕。別名幽霊腕。
ふむ。必要なポイントはどれも問題無しっと。
ただ、実際のビジュアルなんかも加味すると、魔力腕と浮遊腕の二択か?
各種族の腕だとキメラっぽくなりそうだし、蔓腕や触腕は見た目的にどうかと思う。蛇から伸びる蔓や触手。
・・・ないな。
義腕は少し心惹かれるが、メンテナンスなんてこんな森の中では出来ないし、今はないな。
そうなると、やっぱり利便性も考慮して、魔力腕と浮遊腕だな。
どちらが良いか?
いや、ポイント的には両方取れるから、悩む必要はないか。
なら、魔力腕と浮遊腕の二つを交換で。
【了承。30SPで交換します】
そう表示された後、俺の中から三つの光が身体の外に飛び出し、代わりに虚空に出現した二つの光が俺の中に入って来た。
外に出た光はやがて大気に溶けて消え、今度は俺の中から一対の腕が飛び出して俺の傍に浮遊した。
俺の傍に浮遊している腕の見た目は、生ものではなく人形のものか、マジックハンドの系統だ。
つまりは無機質な感じ。
まあ、これは浮遊腕だろうから、別名幽霊腕なのに生もの的ならおかしい話か。
俺は前世の感覚で浮遊腕に意識を向けてみる。
すると、浮遊腕があっちこっちに動く。
最初は人体の可動範囲で動作を確認し、だんだんと距離を離してみる。
その結果、視界の範囲内なら自由に動かせることがわかった。
はっきり言って、人の腕よりもかなり便利そうだ。
あとは、この腕も進化で増えるのか確かめよう。
さて、どれに進化するかな?
・・・いや、頭を増やさないと効果を発揮しないんだから、クアトロヘッドスネーク一択か。
本当は、ブリザード、グラビトン、ウ゛ァンパイアモドキの三つにも興味があるんだけどなぁ。
だけど、並列思考や多重起動なんかはかなり便利だし、新しい属性も増える。
クアトロヘッドの方がかなりお手軽かつ、全体的な強化になるんだよなぁ。
今はクアトロヘッドスネークでいこう。
他の三つは、選択肢として次回も残ることだし。
【クアトロヘッドスネークに進化しますか?YES/NO】
YESで!
【一つ目の進化が確定しました】
一つ目?
【■■■■■の効果により、頭をそれぞれ個別に進化させられます。現在の頭の数は三つ。後二つまで進化先を選択出来ます】
後二つ。そんな効果もあったのか。
なら、後二つはどれにするかな?
・・・良し!今回はグラビトンとウ゛ァンパイアモドキでいこう!
【それではクアトロヘッドスネーク、グラビトンスネーク、ウ゛ァンパイアモドキスネークに進化します。よろしいですか?YES/NO】
YESで。
【了承。これより[プレイヤー名:未登録]の進化を開始します】
そうメッセージが流れると、また俺の全身が発光を始め、俺の意識はまどろみに沈んでいった。
【対象の進化準備完了】
【称号[■■■■■]及び、祝福[■■■■■]の効果を起動】
【肉体の分解・再構築開始】