42.決着
『まずいです!次の呪術が来ます!』
何だと!ぐっ!
デーモンジェネラルの異常な行動を見ていると、彼女から緊迫した様子の警告がはっせられた。
直後、俺の全身をバラバラな違和感が襲った。
魔素を媒介に自分の身体全体を確認すると、【霧化】している身体のあちこちが別のものに変化しだしていた。
ある場所は灰に。ある場所は石に。ある場所は水に。
【霧化】している身体が、霧とはまったく別の何かに書き換わりだしていた。
いや、書き換わっているだげではない。
ある場所では腐敗し、別の場所では溶解されていく。
今回は別に痛みは無いが、自分の身体が別物になっていく違和感が半端じゃない。
どうなっているんだ!俺は[呪術耐性]の能力LevelをMAXまで上げているんだぞ!?
『[禁術]です!』
[禁術]?
『そうです![禁術]は生贄を捧げることにより、様々な力を引き出すスキル。先程デーモンジェネラルがイービルアイ達を切り殺していたのは、この[禁術]の代償にする為です!』
くっ!なるほど、それでさっきあんな異常な行動をとってやがったのか!
『はい。おそらく今回は、貴方の耐性突破と効果増大の効果で使われています。でなければ、無効化ではないとはいえ、能力LevelMAXの耐性を貫通出来るわけがありません』
なるほどな。だが耐性が通用しないとなると、どう対処すれば良いんだ?もう全体の六割程度まで[呪術]に侵されているんだが?
俺の身体は、今では霧である部分が半分を切っている。
このまま症状が進行すれば、肉体が完全に別物になって死んでしまうだろう。
『[呪術]の効果と、[禁術]に対する耐性はそろそろ獲得します』
【灰化耐性Level:1を獲得しました】【石化耐性Level:1を獲得しました】【水化耐性Level:1を獲得しました】【腐敗耐性Level:1を獲得しました】【溶解耐性Level:1を獲得しました】【禁術耐性Level:1を獲得しました】【・・・耐性Level:1を獲得しました】
etc・・・
彼女がそう言った直後、現在俺を襲っている異変の耐性を大量に獲得した。
『あと、呪いに侵されている部分は破棄しましょう。貴方なら肉体の大部分を破棄しても、[超再生]ですぐに肉体を復元出来ます』
わかった。けど、どうやったら肉体を破棄出来るんだ?
『まずは、状態異常にかかっている部分を一カ所に集めます』
わかった。
俺は言われた通り、すでに【霧】ではなくなっている部分を寄り集めた。
『あとは[魔素糸]で繋がりを断ち切るだけです』
こうか?
俺は言われるがままに、その部分を切り離すイメージを魔素に送った。
すると、俺とその寄り集まった塊が切り離され、塊は地面に落下していった。俺はそれを見届けた後、急いで[超再生]を発動させた。
その結果、すぐに【霧】の量が元に戻った。そして、俺の身体は呪いによる状態異常から開放された。
『問題無く成功したようですね』
ああ。しかし、あんな手で耐性を貫通してくるとはな。
『管理神や神獣達はいろいろと耐性が高いですから、耐性を抜く方法が無いと、対神兵器としては役に立ちませんから』
そうなのか。面倒なもの生み出してるな、古代人類種。
『ですね』
だが面倒とばかりは言ってられない。
これ以上呪われる前に、始末をつける。
行け!
俺は今まで攻撃を中止させていたエレメンタル達に、再攻撃を命じた。
エレメンタル達が一斉に飛翔し、デーモンジェネラルに向かっていく。
デーモンジェネラルは三腕を振るい、剣から無数の衝撃波を放ってエレメンタル達を迎撃した。
黒い斬撃が幾重にも空を切り、エレメンタル達を片っ端から真っ二つにしていった。
結局エレメンタルは、一体もデーモンジェネラルに近づくことが出来ずに、全員撃墜された。
くっ!エレメンタル達じゃあ、相手にもならないか。
『そのようですね。こうなれば、私も打って出ます』
えっ?
ゴゴゴゴゴ!!
俺が彼女の言葉を疑問に思うと、今まで俺と一緒に【霧化】していた【エレメンタルの若木】が実体化した。
『くらいなさい、私の怒りを!』
エレメンタルの若木全体が発光し、葉にエネルギーが集まりだした。
そしてエネルギーの集中にともない、葉が一気に輝きをます。
やがてその輝きは目を灼く程にまで膨れ上がり、次の瞬間には虹色の閃光がデーモンジェネラル目掛けて開放された。
ブンッ!ブンッ!
それに対してデーモンジェネラルは、三腕を連続で振るって黒い斬撃を連射して対応した。
虹色と黒。二つのエネルギーが両者の中間点で激突し、周囲に衝撃波を撒き散らした。
くっ!凄まじいな。
両者の攻撃は威力が拮抗していて、どちらの側にも行けずに周囲に衝撃波を撒き散らし続けている。
その結果、空中にいるデーモンジェネラルの傍にいるイービルアイ達。
地表にいる俺やエレメンタル達。そして、結界と隔壁の外にいるニクス達。
両者の激突を見守っている観客達に、衝撃波はその猛威を振るおうとしている。
ダンジョンゴーレム!
俺は[危険察知]でそれを察知し、慌ててダンジョンゴーレムにニクス達に結界を張るように命じた。
ダンジョンゴーレムは直ぐさま俺の命に応じてくれた。
テレサ達を守っているのと同質の結界が瞬時に展開され、ニクス達を衝撃波から守った。
逆に俺やエレメンタル達は衝撃波をまともに受けた。
エレメンタル達が次々と崩れ落ち、すぐに[冥の沼]から五体満足で復活する。
俺の方も身体がバラバラになったが、すぐに[超再生]で肉体を復元して無傷の状態になる。
【斬撃耐性Level:1を獲得しました】
俺達の方はこうして衝撃波をやり過ごした。
逆にイービルアイ達は、無惨に衝撃波に引き裂かれて散っていった。
かなり対照的な光景だ。
うん?
バラバラになりながら戦況を見守っていると、段々デーモンジェネラルの攻撃速度が早くなってきているように感じた。
気のせいかと思いながらも試しにカウントしてみる。
結果、実際に攻撃が早くなっていることがわかった。
このままだと、彼女が押される。
そう思った俺は、[魔素糸]で両者への介入を開始した。
まずは魔素を媒介に、彼女にエネルギー供給を行う。
それと同時に、デーモンジェネラルの攻撃を拡散させる。
デーモンジェネラルの攻撃はあくまでも斬撃。
その攻撃が命中する場所がバラけてしまえば、継続的に閃光を放っている彼女の攻撃を押し止められなくなるはず。
そう想定した俺は、地道な支援を繰り返し行っていく。
そうして地道に妨害と支援をしていくと、段々と彼女の方がデーモンジェネラルを押してきた。
このままいけば、彼女が押し切れる!
俺は妨害と支援をさらに実行した。
その結果事態は好転し、彼女の虹色がデーモンジェネラルの黒を飲み込んでいった。
虹色の閃光が駆け抜けた後には、満身創痍のデーモンジェネラルの姿だけがあった。
良し!あとは俺の番だ!
俺は当初の予定通り、デーモンジェネラルをユニット作成の材料にしにかかった。
空中に[コキュートス]で無数の氷塊を生み出し、そこからさらに無数の氷の茨を生み出して、デーモンジェネラルを貫き拘束する。
デーモンジェネラルは当然抵抗しようとしたようだが、先の戦いのダメージのせいで満足に動けず、呆気なく拘束された。
そこに俺は大量の冷気をぶつけ、容赦無くデーモンジェネラルを絶対零度で氷漬けにする。
最終的に残ったのは、一体の氷像となったデーモンジェネラルの姿だった。
俺は急いで作成するユニットを設計し、その氷像を材料としてユニット作成を実行した。
下手に置いておくと、復活するか奪われる可能性があるからだ。
ユニット作成を実行した直後、デーモンジェネラルの姿が一瞬光に変わり、次の瞬間には蒼く透明な氷のような体表となったデーモンジェネラルの姿が出現した。
どうやら、デーモンジェネラルを拘束していた[コキュートス]の氷も材料にしてしまったようだ。




