2.狩って狩られて狩り返す
バブルタートルから逃走して、体感で数時間が経った。
現在は水中から這上がり、地上を移動中だ。
よくよく考えてみると、蛇の餌はネズミや鳥の卵だった。
なので、水中から地上に活動の場を移したのだ。
少し地上を見て回った結果、地上は水中よりもヤバイ場所だということがわかった。
水中に棲息していたのがほとんど普通の魚とかだったので、油断というか現状を甘く認識していた。
だが、這上がった先の地上は危険が。モンスターが大量に存在していた。
いることいること。熱感知で把握しただけでも、現在の自分と同サイズのネズミや虫型のモンスターがそこら中にうようよいた。
これによって、地上は危険。水中が比較的安全だと俺は認識した。
それにしてもお腹が空いた。
そろそろ何か食いたい。
俺は茂みに身を隠しつつ、丸呑み可能な餌を捜した。
蛇には牙しかないので、丸呑みが一番楽で簡単そうだからだ。
それからまた数時間。
外敵を避けながら移動をすると、いっこうに餌にありつけなかった。
もうこうなったら、リスク覚悟の弱肉強食路線でいくしかない。
俺は餌の規準を変えると、毒生成を開始した。
ゆっくりと移動しつつ、体内で毒を練り上げておく。
自分の攻撃、防御が最低値ないじょう、ダメージソースは毒に頼るしかない。
願わくば、相手が毒耐性を持っていないことを祈るばかりだ。
おっ?
そう思いながらあちこちさ迷っていると、何かの集団を見つけた。
早速ステータス情報を確認。
【森ネズミ】
Level:2/3
HP:2/2
MP:1/1
ビンゴ!手頃な丸呑みサイズのネズミの群れを見つけた。
ようやくの獲物に興奮するが、ひとまずは落ちつこう。
ここは蛇らしく狡猾に、確実に、逃走ルートを断ってから順番にゆっくりといただこう。
俺はそう決めると、森ネズミ達を中心に、円を描くように移動を開始した。
その道すがら、少量の毒を口から垂らしていき、毒の罠を仕掛けておく。
これで森ネズミ達が逃走しても、森ネズミ達の歩幅なら何体かは毒の餌食になるはずだ。
ゆっくりゆっくり。されど確実に森ネズミ達の退路をふさぐ。
ゆっくり移動したせいかそれなりに時間がかかったが、ようやく下準備が終わった。
後は森ネズミ達を襲撃するだけだ。
俺は最初に喰らう森ネズミを捜し、一体の森ネズミに狙いを定めた。
そして蛇行しながら、一気にその森ネズミに襲い掛かる。
チュー!!!?
俺に食いつかれた森ネズミの悲鳴が周囲に響き渡る。
チュチューー!?
すると、俺の周囲にいた森ネズミ達が一斉に逃走を開始した。
あっという間に森ネズミ達の姿が視界から消えていった。
さすがはネズミ。この世界でも臆病ですばしっこいようだ。
俺は逃げた森ネズミ達は毒に任せ、現在噛み付いている森ネズミに毒を牙から注入した。
チュ、チュ、ウ・・・
森ネズミは少し暴れたが、すぐにぐったりして息絶えた。
【森ネズミを十体倒しました】
【経験値を20獲得しました】
【称号[転生プレイヤー]により、追加で経験値を10獲得しました】
【SPを10獲得しました】
【称号[転生プレイヤー]により、追加でSPを10獲得しました】
どうやら逃げた森ネズミ達も毒の餌食になったみたいだな。後で食べよう。
いや、一部は亜空間エリアに保存しておくか。
【[プレイヤー名:未登録]のLevelが1から2に上がりました】
【称号[転生プレイヤー]により、ステータスにボーナスが入ります】
【ステータスを更新します】
お!始めてのLevelUp!
どうなったかなぁ、っと。
俺は自分にステータス情報確認を発動させた。
プレイヤー名:未登録
種族:ポイズンスネーク
Level:2/5
HP :10/10
MP :10/10
SP :21
【攻撃】3
【防御】3
【魔力】3
【敏捷】15
【精神】22
【運】まあまあ
【属性】水・毒
【特殊能力】
[ゲームプレイヤー:Level1]
[生物進化の道:Level1]
【耐性】
[水中適応][毒耐性:Level1]
【通常スキル】[毒生成:Level1][熱感知:Level1][脱皮:Level1]
【称号】
[転生プレイヤー][■■■■■■■]
【祝福・加護】
[■■■■■■■]
【経験値】30
次のLevelまで20
ステータスが【精神】以外二倍以上に上がってるな。
これは幸先が良い。
それにSPも21もある。
これは称号と森ネズミ達を一気に倒した結果かな?
ふむ。これだけあるのなら、すぐにSP交換を試してみるか?
・・・いや、それは住み処を見つけてから安全に行おう。
そう結論した後は、毒にやられた森ネズミ達の回収に向かった。
森ネズミ達を平らげた後は、またあっちへフラフラ。こっちへフラフラ。とりあえずはこの辺り一帯の情報収集を行った。
未知の場所で役立つのは、やはり生の情報である。
ピィー!!
うん?
そうして動き回っていると、上空から鳥の鳴き声が聞こえてきた。
慌てて空を見上げると、空にいた鳥と目が合った。
俺は全速力で逃走した。
あの鳥の目は、先程自分が森ネズミ達に向けたのと同じタイプのものだったからだ。
早く逃げないと喰われる!
ピィー!!
だが、次の瞬間には俺は空にいた。
捕まったぁ!!
俺は落とされる覚悟で必死に暴れた。だが、鳥の足は全くびくともせず、俺はどこぞにお持ち帰りされてしまう。
生後数時間で死す。やはり自然界は、弱肉強食で弱者や若年層に厳しかった。
今度は何に転生することだろうか?
いちおう、意地汚く体内で毒の生成もしているが、精神的にはすでに今世を半ば諦めてしまっていた。
せめてこの鳥を道連れにしたいところだ。
あるいは、この鳥の雛の餌にされるかもしれないが。
あと気になるとすれば、あの称号にある正体不明の部分。
何が起こることやら。
ゾンビになって復活とかは避けたいな。
俺がそんなことを考えていると、鳥が高度を下げはじめた。
どうやらそろそろ巣が近いようだ。
一応準備は整っているが、苦しまずに逝きたいものだ。
そして鳥は、ある木のてっぺんにある巣に着陸した。
どうやらここが死に場所らしい。
幸いというべきか、巣の中には卵が転がっているだけで、まだ雛はかえっていないようだ。
これで、雛に寄ってたかって啄まれる可能性は、今は無くなった。
残るは、このまま生け捕りで捨て置かれるか、バラされて置いておかれるかの二択。
奴が足を離した時か、俺の身体を毒ごと貫いた時がチャンスだ。
奴はおもむろに頭を上げると、くちばしを閉じた。
どうやらバラバラコースらしい。
俺は痛みに耐える覚悟をし、せめて頭や心臓を狙われないことを祈った。
鳥はそんな俺の心境なんて関係ないとばかりに、一気にくちばしを振り下ろした。
「シャァァァァァァッッ!!」
痛い!痛い!痛い!
【打撃耐性:Level1を獲得しました】
俺が腹をえぐられて絶叫を上げていると、そんなメッセージが表示された。
そして、それ以降は痛みが大分緩和された。
そして、そのおかげで思考が戻ってきた。
こいつ本当におもいっきりやりやがった!
ピピィィィィィ!!
俺が恨みがましく鳥を見ると、鳥は鳴き叫びながら、のたうちまわっているところだった。
くちばしが赤と紫の斑になっているのを見るに、どうやら生成しておいた毒を受けたらしい。
このまま毒殺出来れば俺の勝ち。
耐えきられたら俺の負けだ。
俺は鳥から視線を逸らさず、ステータス情報確認で鳥のHPの減りを目で追った。
HPは50以上あったが、確実に削れていった。
HPが10を切った辺りで、とうとう巣のある木から地上に落ちていった。
【ハンターホークを倒しました】
そして少し経つと、そのメッセージが表示され、ようやく安心が出来た。