22.忌まわしき場所
管理神達を倒す為の、生体兵器を生み出す施設。
この世界の人類種達は、本当にどうなっているんだ?
世界に危機をもたらす悪神や邪神を滅ぼす為に、そんなことに手を染めるなら、わかりたくはないがまだわかる。
だが、管理神達は善神なんだろう?
『はい』
なら、かつての人類種達は、何を考えてそんなことをやったんだ?
狂人の理論がきそうな気はしたが、聞かずにはいられなかった。
『私(この世界)を自分達が支配する為にです』
世界征服、か。
まさかそんな理由で管理神達を倒そうとするなんて、この世界の人類種達の頭のネジは、外れているか壊れているんじゃないか?
世界を支配する為に神に挑む。
しかも、実際に戦うのは生体兵器にされた者達。
救いようもなければ、どうやったって良い話しにはならないな。
『そうでしょうね。どう言い繕っても、人類種達は完全に不良品です。さっさと廃棄処分にしたいです』
世界の方も俺と同意見のようだ。
しないのか?こお、天変地異とかでも起こして。
『私達に負担がかからない範囲ではやっています。しかし、他の動植物達にも影響が出ますから、あまり派手には出来ないんですよ』
ああ、天災系は範囲が広いからな。
『そうなんですよね。ただ辺り一面を一掃するだけなら問題無いんですが、より分けとかは出来ませんから、味方への被害が馬鹿にならないんです』
ままならないな。
『はい』
・・・さて、人類種達のどうしようもなさはこの際置いておいて、このダンジョンをどうするかな?
『放置をオススメします。まず第一に、入る為の入口がここにはありません。第二に、ダンジョンの中は陰惨で凄惨。かつ、瘴気のたまり場のような場所です。中で行われていることを直接目にすれば、下手をすれば貴方が発狂する可能性さえありますよ』
たしかに、そんな場所とは係わり合いになりたくないな。
『そうでしょう。なら、この外壁をさっさと埋め戻して、早く上に戻りましょう』
だが、俺の立ち位置的に放置は出来ない。
『えっ!?』
何を驚いているんだ?
このダンジョンの中では、今でも管理神達を倒す為の人体実験が繰り返されているのだろう?
なら、今俺の手元にあるノルニルも危険だろう。
生体兵器が完成してから対処するのだと、高確率で手遅れになる。
なら、研究が未完成のうちに闇に葬り去るにかぎる。
『いえ、たしかにその理屈はわかります。ですが、やはり危険です。それと、先程はああ言いましたが、それは二千年前の人類種達の目的です。現在このダンジョンを所有している者達の目的は、また別です!』
ほう。ちなみにその使用目的とは?
『・・・』
嫌な沈黙が流れた。
『・・・二千年前に失われた技術の復活と、他種族を滅ぼして私(この世界)の覇者になることです』
・・・それ、どっちもどっちじゃないか?
管理神を倒して世界を征服する。
その技術を復活させて世界を征服する。
方法と最終目的が同じなら、どっちもたいした違いがない。
『あらためて指摘されますと、たしかにそういう結論になりますね。ですが、いろいろと迷走している分、今が非常に危険なのはたしかなんです!お願いですから、思い止まってください』
彼女が俺を心配してくれているのはわかっているが、やはり敵は今のうちに闇に葬り去るにかぎるという結論に到った。
相手が迷走しているのなら、その迷走が許容範囲内のうちに片付けた方が良い。
いつ酷い結果になっても、おかしくないんだからな。
神を滅ぼす為の生体兵器の暴走。
今日明日にでも世界が滅びる可能性は、決して低くない。
『・・・決意は固いのですね』
ああ。
諦めたような思念がきたが、ごまかさずに肯定する。
『わかりました、もう止めません。ですが、先程も言いましたがこのダンジョンは、完全密閉独立型です。どうやって中に入るつもりなんですか?』
外壁を壊せないのか?
『安全対策でシェルターも兼ねていますから、難しいと思います。それに、外壁を破壊すると水が流れ込みますよ』
ふむ。使用者達が溺れても自業自得だが、人体実験の材料にされている被害者達には、酷だな。
なら、[透過]で入り込むか?
どれだけ外壁が堅く厚かろうが、摺り抜けてしまえば意味はない。
『結界が張ってありますから、突破するのは可能ですが中の人類種達に気付かれますよ』
結界ねぇ。ちなみにその結界の効果は?
『[隠蔽][対探知][対衝撃][対物理][対魔法][対スキル][対神防御][対解析妨害]等など、当時必要だった防御関連は全て実装されていますね』
かなりがっちり防御を固めているな。
ふむ。
・・・一応確認しておくが、対特殊能力の効果はあるのか?
先程彼女が名前を上げたのは、[対衝撃][対物理][対魔法][対スキル][対神防御]等。
衝撃・物理・魔法・スキル・神防御。
ステータスで表示される項目の大半を押さえているのに、その中に特殊能力についてのものがなかった。
『[対特殊能力]はありませんね。特殊能力は複合能力で範囲が広いですから、結界では対応しきれません。それに、そもそも特殊能力は絶対数がかなり少ないですから、当時でもあまり対策は必要とされていなかったんです』
そうか。なら、特殊能力でこのダンジョンを俺の支配下に置くとするか。
『何をするつもりです?』
見ていればわかる。
俺はそう言うと、[冥の沼]を[多重起動]させた。
俺を中心に紫色の泥が溢れ出し、ダンジョンの外壁である石壁にそってダンジョンを[冥の沼]の中に取り込んでいった。
『[冥の沼]?これで何をしようというんです?』
このダンジョンを俺のゴーレムに変える。
『はっ?』
だから、このダンジョンをゴーレムにして、俺の支配下に置く。
『ダンジョンをゴーレム化する?・・・何を考えているんです!?』
せっかく防御関連が充実しているダンジョンがあるんだ、この機会を生かさない手はない。
それにこのダンジョンを俺の配下にしてしまえば、ダンジョンに付随した機能は全て俺の管理下に置かれることになる。
そうなれば結界を気にする必要もなくなるし、中に居る人類種達は全て篭の中の鳥も同然だ。
そうなればあとは脱出も応援も呼べない状態にして、ゆっくりと料理すれば良い。
『・・・たしかに利点ばかりですね。ですが、よくダンジョンをゴーレムにしようなんて思いつきましたね?』
何となくだが、出来ることに確信があったからな。
『なるほど』
あの方の影響ですか。
最後にそんな思念を僅かに感じた気がするが、気のせいかもしれなかったので、確認はしないことにした。
[冥の沼]を発動させて30分。ようやくダンジョンの全てが泥の中に沈んだ。
なかなか時間がかかったな。
『それは当然ですよ。このダンジョンは、現在五十階層あるんですから』
なるほど。結構な規模があるんだな。
そんな話しを彼女としつつ、現在は急ピッチでダンジョンをゴーレムに改造しているところだ。
そして、十数分でダンジョンの改造が終了した。
完成だな。
俺は[冥の沼]を解除し、完成したダンジョン型ゴーレムを外に戻した。
先程紫色の泥に飲み込まれた石壁が、同じ場所に出現した。
さて、こいつのステータスはっと。
【ダンジョンゴーレム】
Level:1
HP:920000000/920000000
MP:55000000/55000000
[隠蔽][対探知][対衝撃][対物理][対魔法][対スキル][対神防御][対解析妨害][階層操作][貢献]etc.
[眷属モンスター]
[忌まわしき実験場][怨嗟の坩堝][魂の地縛地][赦されざる禁忌の在りか]
【ダンジョン型ゴーレム。人類種達が管理神達を倒す為の生体兵器を生み出す為に建設した施設が、【未登録】の特殊能力でゴーレム化したもの。人体実験の材料となった生物達の怨嗟が、呪いとなってこびりついている】




