表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/129

16.世界時計

うん?


宝玉の様子を見守っていると、宝玉の周囲に光の円が出現した。


なんだあれ?

『マズイですね』

マズイ?何がだ?


光の円が出現したくらいで、何がまずくなるんだ?


『あれは時の管理神、ノルニルの能力です』

管理神の能力?どんな能力なんだ?

『能力名は[世界時計]。0から24までの時刻に対応した時間に関係する大能力と、その数字から派生する複数の小能力を併せ持つ特殊能力です』

二十五以上の能力を持った特殊能力!?

そんなものが発動しているのか!

『間違いありません。あの円は時計の文字盤です。あれに対応する数字が浮かび上がることで、対応する能力が発動します』

おい、ちょっと待て!このタイミングでそれが発動するってことは!

『・・・おそらくですが、貴方の迎撃が目的です』

なんで俺を迎撃するんだよ!

俺は助けに来た側だぞ!


なんで助けにきた相手に攻撃されるんだよ!


『今のノルニルに、それを判断することは出来ないと思いますよ?』

それはそうかもしれないが、これはそういう問題なのか!?

というか、回収する時にこうなる可能性は考えていなかったのか?


『考えていませんでしたね。そもそもそんな余力があるとは思っていませんでしたし、貴方を敵と認識するとは思っていませんでしたから』

なんて杜撰な話。

というか、結局この状況はどうすれば良いんだよ!?


『相手を無力化してから宝玉を回収しましょう。幸いなことに、[時空間適応]のおかげで[世界時計]の効果の大半は無効化出来ます。それに、あれはあくまで封印から漏れ出した力のようです』

それがどうしたんだ?


『あくまで本体は封印の中です。ですので、漏れ出した力は本来の出力に達していません。この程度の出力なら、今の貴方でも十分対応が可能です』

それは朗報だな。

全力全開の神と正面対決なんてしたくないからな。


『そうですね』

攻撃は何が有効だ?

『[重力]やそれの派生能力が有効です。ノルニルは貴方の時間を操れませんから、ノルニルには自分か周囲の時間を弄るしか出来ません。そして、ノルニル本体は今だに宝玉の中です。おそらくは、時間樹を間接的に支援してくる戦い方になるでしょう』

やはり時間樹も攻撃してくるのか?


先程の蔓を思えばそうなると思うが、一応確認しておく。


『おそらくは。両者の意図はさっぱりわかりませんが、少なくとも攻撃はしてくると思われます』

了解した。

その前提で行動する。



俺は[重力][斥力][誘導][反射][歪曲]の五つをそれぞれ[並列思考]で起動させ、相手の攻撃に備えた。


そうして相手の動きを待っていると、時間樹に動きがあった。

枝葉や蔓を宝玉を中心に束ねだしたのだ。

それはすぐに人型を形成しだし、最終的には一体の巨人を生み出した。


どうやら、あの巨人で俺と戦うつもりのようだ。


だが、的を大きくしたのは失敗だ。


俺は巨人に向かって[重力]を使用。

巨人の重さを、現在の数十倍に引き上げた。

その結果巨人は立っていられなくなり、自分の本体にへばり付く格好になった。


やはり重力は、相手がデカイ程効果が高い。


俺がそのまま[重力]で巨人を拘束していると、どうやら時間樹は不利を悟ったらしい。

巨人の姿を解き、今度は無数の蔓と枝で攻めてきた。


俺は[重力]を解除して、[飛行]に切り換えて上空に退避した。


時間樹は眼下で頑張って蔓と枝を伸ばしているが、そう簡単には俺のいる所まで届かせられない。


だが、相手もやられているばかりではない。


先程巨人の内部から出てきた宝玉が光り、光の円に数字が浮かび上がる。

その途端、蔓と枝の伸びる早さが加速した。


先程までの数倍の早さで俺を追いかけてくる。


俺はとくに焦らず、[誘導]を使って蔓と枝の向きを横に逸らした。


枝はそのままあらぬ方向に伸びていき、蔓は誘導した先からUターンしてまた向かってきた。


やはり固い枝よりも、柔らかい蔓の方が融通が利くらしい。


俺は今度は[歪曲]を使用し、俺と蔓との間にある空間を歪め、蔓の進路を捩曲げた。


今度は蔓も抵抗しきれず、枝のようにあらぬ方向に伸びていった。


『順調に対処出来てますね』

ああ。

だが問題は、この戦いの落としどころだ。

どうすれば向こうは攻撃を止めるんだ?

『そもそも相手が攻撃してくる理由がわかりませんから、どうとも言えません』

そうなんだよな。

仕方がない。しばらく付き合うことにするか。

早めに諦めてくれると良いが。

『そうですね』



そしてそれから一時間近くの間、俺達の攻防は続いていた。


時間樹の攻撃手段は蔓と枝。そして時々葉っぱ。

ノルニルの時間操作は、時間樹の成長の加速。巻き戻しによる時間樹のダメージの回復。

この二つだけ。

他の能力はまったく発動させてこなかった。

どうやら、現在使える能力はこの二つだけのようだ。


対する俺は、大物は[重力]で沈め、枝は[誘導]、蔓や葉は[歪曲]でそれぞれ対処している。

また、それらを突破されたとしても、[斥力]で弾き、[反射]で攻撃を相手に返すで、俺本体への被弾は今だに無い。


しかし、お互いに決め手に欠けるのはたしか。

このままだと、いつまで経っても決着がつかない可能性もある。


そこで、少し強行な気がしたが、現状を打開する為に浮遊腕を突撃させることにした。


これで宝玉を確保出来れば、めっけものだ。


六本の浮遊腕が空を切り、宝玉に殺到する。


それに時間樹は、全力で抵抗してきた。


枝葉と蔓で幾重にもバリケードを構築し、浮遊腕の宝玉への接触を阻んだ。


だが甘い!その程度の障害では、俺の浮遊腕は停められない。


俺は[透過]を発動し、浮遊腕にバリケードを片っ端から摺り抜けさせた。


どれだけ堅く、厚くとも摺り抜けてしまえば無意味!


浮遊腕は次々とバリケードを突破し、宝玉への距離をどんどんつめていく。


ぽぉぉ


だが、相手も負けじと次の手を打ってきた。


浮遊腕の周りに光りの円が出現し、次の瞬間には最初のバリケードの位置に浮遊腕が移動していた。

いや、この場合は移動させられたというべきだな。


だが、今のは何をやったんだ?

俺の時間は直接弄れないはずなのに?

『どうやら位置情報の方を戻されたようです』

位置情報?

意味はわからないが、その位置情報とやらを戻したとして、どうして浮遊腕が戻されたんだ?

俺には[時空間適応]があるから、直接時間は操作されないって話だったろう?


『はい、そのことに間違いはありません』

なら、どうしてなんだ?

『ノルニルの対象は、貴方ではなく私(世界)だったからです』

どういうことだ?

『貴方の時間を直接戻したのではなく、私(世界)が認識している貴方の位置情報を過去の状態に戻し、私(世界)に貴方の位置を強制的に正させたんです』

俺に能力が効かないから、間接的に対処したってことか?


『そうです。これはノルニルの大能力の一つ、[時空転位]という能力です』

[時空転位]?その[時空転位]っていうのは、どういう能力なんだ?


『任意対象の位置情報を現在から過去、未来のものに変更することにより、その対象をその位置に転位させる能力です』

過去はさっきされたからわかるが、未来?

『はい。過去への転位は、位置情報を過去のログと差し替えることにより、一瞬で発生。現象としては、[瞬間移動]と同じと言っても良いでしょう』

[瞬間移動]。ああ、たしかにゲームなんかの瞬間移動は、自分が訪れたことのある場所にしか転移出来ないものな。


『そうです。そして、これは過去というすでに確定している情報を基にしている為、一瞬で発動が可能です。さて、そうしますと、先程聞かれた未来についてですが、この場合はどの情報を基にしていると思いますか?』


その質問に、俺は頭を悩ませた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ