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15.経験値の活用

[EXPロード]に時・木・生属性ねぇ。

前者はともかく、後者はなんでこのタイミングで獲得したんだ?


別段進化とかしたわけでもないのに?


『後者の理由も、EXPドレインが原因です』

そうなのか?

『はい。経験値を吸収する際に、時間樹の属性を取り込んだ結果です』

なるほど。それでこのラインナップというわけか。

『はい』


成長を刻む時。植物としての木。老化という死を遠ざけられた生。たしかに時間樹に関係する属性ばかりだ。


さて次は、EXPロードの効果を教えてもらえるか。

『わかりました』



[EXPロード]

自身・他者の経験値に介入し、任意の事象と現象を起こす能力。

これの発動の際に使用した経験値は、失われる。



・・・なんというか、抽象的でわからないな。結局何が出来るんだこのスキル?

『一応、先程まで表示されていたログにある通常スキルの効果は、全て再現出来ますよ』

・・・つまりは、要確認というわけか?

『そうですね。自由度が高いですから、統合前の通常スキルを参考に、使用方法を考えていくことをオススメします』

了解だ。

それじゃあ、リストを頼めるか?

『わかりました』


リストを頼むと、すぐに目の前に表示枠が現れた。


俺はそれを、[重力]を発動させているだけで暇な四つの頭で、それぞれ内容を確認していった。



ふむ。これを試してみるか。


一通り統合前のスキルを確認した俺は、その内の一つの効果を試してみることにした。

選んだスキルは、[EXP変換]。メッセージの最初の方に表示されたスキルで、その効果は自分に蓄積された経験値を、別のものの経験値に変換出来ることだ。

それがどういうことかというと、俺の場合なら能力Level上昇に必要な経験値を、能力を使用せずに上げられるようになるということだ。


俺は早速、余剰分の経験値を耐性やLevel持ちの通常スキルの経験値に変換し、能力のLevel上げを開始した。


対象となるのは以下の耐性と通常スキル。特殊能力二つに関しては、経験値ではなくて進化回数でLevelが上がる仕組みらしく、今回は能力の対象に選べなかった。


[毒耐性:Lv1][打撃耐性:Lv2][出血耐性:Lv1][失血耐性:Lv1][精神耐性:Lv1][気絶耐性:Lv1][落下耐性:Lv1][氷雪耐性:Lv1][寒冷耐性:Lv2][ドレイン耐性:Lv1][寄生耐性:Lv1][人類種耐性:Lv1]


【通常スキル】

[毒生成:Lv1][熱感知:Lv1]重力:Lv3][冷気:Lv2]



これらに順に経験値を注いでいくと、全てがLv5の時にLvMAXと表示された。

どうやらこの世界の能力Levelは、5が最大値らしい。


そして、幾つかの通常スキルはLvがMAXになると、新たな通常スキルに派生した。


[毒生成]からは、[毒霧][毒沼][薬生成]の三つ。

[重力]からは、[斥力][引力][重量操作][重力子][歪曲]の五つ。

[冷気]からは、[寒波][冷凍][乾波][凍結]の四つ。


そして、それらの能力Levelも上げていくと、また新しい能力に派生した。


[歪曲]からは、[誘導][特異点][婉曲点]の三つ。

[斥力]からは[反射]、[引力]からは[吸収]、[重力子]からは[透過]にそれぞれ派生した。


わりと有用そうなのが、ぽろぽろ出てきた。

これには、内心ホクホクだ。


能力Levelはそこで打ち止めになったので、次の通常スキルの内容を試すことにした。


スキル名称は[EXPドロップ]。

このスキルの効果は、自分に蓄積された経験値を飴玉に出来るというものだ。

いっけん、何の意味があるのかわからないスキルだが、その真価は経験値の再利用と譲渡にある。


このスキルで生成された飴玉を食べた者は、材料となった経験値の半分の経験値を得ることが出来る。

つまり、今の俺のようにその時には進化の為にその経験値を使えなくても、それを飴玉にしてから食べれば、改めて進化の為の経験値として使用が出来るようになるのだ。

また、経験値をろくに稼げない味方などに与えることで、自陣の強化をすることも出来る。


意外と使えるスキルなのだ。


俺はEXPドレインで経験値を吸収し、その経験値を使って飴玉を生成。

そしてそれをすぐに食べ、亜空間エリアにどんどんほおり込んでいく。


それから目的地に着くまでの間、俺は飴玉の大量生産にふしんした。



飴玉の大量生産でさらに数時間が経過し、いよいよ時間樹の先端が見えてきた。

どうやらEXPドレインのおかげで、成層圏を突破しないですんだようだ。


まあもっとも、大気とかはもう大分薄くなっているが・・・。


とりあえず先端に着陸すれば良いのか?

『はい。そして宝玉を回収すれば終わりです』

了解だ。


俺は[重力]の発動数を減らし、減速をかけた。

また、経験値の吸収なども全てやめ、時間樹への着地に備えた。



重力の向きを少しずつ調整し、時間樹にぶつからないように心掛ける。

落下速度は、現在ジャンプしてから落ちる程度の速度にまで減速している。

このままの状態を維持しながら、時間樹に手頃な足場がないか探す。

そうして探していると、先端の少し下に開けた場所を見つけた。

俺はそこに着地することに決め、進入角度の調整に入る。


ゆっくりと俺はそこに降り立ち、本来の上を見上げる。


こうして間近で見上げて見ると、ようやく時間樹のてっぺんに、金色の水晶玉のようなものが確認出来た。


おそらくはあれが、件の宝玉だ。

『間違いありません。あれが時の管理神が封印されている宝玉です』


世界もあれがそうだと言っている。

なら、さっさと回収してしまおう。


俺は、宝玉を目指して移動を開始する。



俺は生い茂る枝や葉を掻き分け、登山をするような気分で時間樹を登って行く。

そして、ようやく宝玉の真下にたどり着いた。


俺は浮遊腕の二つを宝玉のもとに向かわせた。


宝玉を回収した後は、自由落下でここから帰るだけだと、俺はこの時そう思っていた。


だが、そう上手くはいかなかった。


なっ!?


浮遊腕が宝玉に触れようとした瞬間、突如時間樹から無数の蔓が伸びてきて、浮遊腕を叩き落とした。


どうなっているんだ、これ!?

『どうやら、時間樹は宝玉を守ろうとしているみたいです』

宝玉を守る?

なんでまた?時間樹には、宝玉を守る理由があるのか?


樹が宝玉を守る理由。俺にはそれがわからなかった。


『さあ?可能性としては、二千年も傍にあったので愛着があるとか、あの宝玉を持って行かれると何か時間樹にとって不都合があるとかでしょうか?』

理由は世界でもわからないのか?

『さすがに心の中などは管轄外です。これが独り言を呟くような相手なら、そのログを集めて何かしら答えられますが、植物が相手ではそれも無理です』

それもそうか。


たしかに植物の内心を世界が知っているとか、いろいろと無理がある話しだ。


だけどどうするかな?

無理矢理強奪した方が良いか?

『私としましては、それは避けてほしいですね』

なんでだ?


『これが人類種相手なら、無理矢理強奪を推奨するんですが、味方サイドの植物から強奪するのはちょっと』

・・・そういう理由か。たしかに植物は、貴女(世界)の敵じゃなかったな。


それなら説得が良いのか?

だが、俺は植物と交信なんて出来ないぞ。

『そうなんですよね。どうしましょう?』


ぽぉぉ。


うん?なんだ?


俺達がどうするか話していると、宝玉が弱々しくだが光だした。


『どうやら貴方を感知したみたいですね』

そうなのか?

『おそらくですけど。違う理由は思いつきませんし』

たしかに、このタイミングならそれが一番可能性が高そうだが。


とりあえず宝玉の様子を見守る。

次の展開が読めないいじょう、目を離すのは悪手だ。



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