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13.時狂いの森

なんでそんな残り方になったんだ?


『それは簡単です。人類種達が手出し出来なかった管理神達が残っている。ただそれだけの話です』

手出し出来なかった?

『はい。例を出しますと、水の宝玉は深度2000mを越える深海の底にあります』

深海の底?

『はい。管理神達が封印された後、その封印の余波で天変地異が発生。宝玉はその時は人類種達の手には渡らず、それぞれが天変地異に巻き込まれて行方不明になりました。その後、天変地異が収まってしばらく時代が流れる中、様々な理由で宝玉達は人類種のもになっていきました』

それで、水の管理神は今は深海の底か。

そして、今の人類種達に深海の底に到達する術が無いってことが無事な理由か?

『そうです。他の宝玉についても、宝玉から漏れ出る管理神の力で手出しが出来なかったり、環境が障害になって人類種達は手を出せていません』

だから、法則系や概念系の管理神達ばかりが無事ってわけか。


時間やらに牙を剥かれれば、人間が太刀打ち出来るわけがない。


『そういうことです。ですが、それでいつまでも無事でいられる保証はありません。ですので、貴方になんとか宝玉を回収してもらいたいのです』


別にその頼み事を引き受けるのは良いんだが、俺はその時の管理神の宝玉に近づけるのか?

今の話からすると、無事な宝玉は厄介な場所とかにあるみたいだが?


『貴方なら行けます。というか、貴方以外だと宝玉に近寄ることは不可能です。貴方以外があの領域に近付こうものなら、100%消滅します』

消滅!?

どんな危険地帯だよそれ!?


『たしかに、この世界最凶の危険地帯と言える場所です。あの領域は、時の管理神の影響で時間が狂っているのです』

時間が狂っている?

『はい。時間の流れ方が異常で、現在過去未来の区別なく、無差別に荒れ狂っています』

それって、具体的にはどうなっているんだ?


言葉だけだと、抽象的でイメージ出来ない。


『百聞は一見にしかず。それは直接見ていただく方が早いです』

・・・わかった。

それなら案内を頼めるか?


『お任せください』


そうして俺は、案内されるままに問題の場所へと向かった。



なんだこれ?


あれから数時間。

声の案内に従って俺がたどり着いた場所は、本当に口で説明されるよりも見た方が早い場所だった。


そこは異常な森だった。

数多の植物が生息し、四季折々の草花が咲き乱れている。

こう言われると普通の森に聞こえるが、その四季折々の草花の移ろいを直接見れば、誰もが異常だと言うことだろう。


最初見た時に双葉だったものが、次の瞬間には成木に変わった。

枯れかけの老木がだんだん背丈を縮ませ、やがて若木になった。蕾が開花し、花が開いたと思えば端から枯れていった。

ついさっきまでそこにあった植物が瞬く間に消え、まったく別の植物が代わりに出現した。

突然複数の木が倒木となり、次の瞬間にはまったく同じ木がそれぞれの場所に存在した。

この時倒木がそのまま倒れている時もあれば、消失することもあった。

春夏秋冬の植物が同時に存在し、疎らに咲き乱れた。


何処からどう見ても異常。

植物という生体時計がなければわからなかっただろうが、確実に目の前の森の時間は狂っている。

そう納得してしまえる光景だった。



これは酷いな。

『そうでしょう。この辺り一帯、ご覧の有様なんです。時間が過去に逆走したり、未来へ向かって早送りされたり。一部では同一の存在が同じ時間軸に存在したりもします』

完全に時間が狂っているな。

・・・少し確認するが、俺以外だと100%消滅するというのは?


『それは生まれる前まで巻き戻されるのと、死ぬまで早送りされる場合がそれです。それにそうでなくても、あの時間流の中ではまともに行動するのは不可能です。すぐに身体的、精神的、魂的に行動不明に追いやられます』

身体的は植物を見ればわかるが、残りの二つはどうして行動不明になるんだ?


『その理由は簡単です。精神的に巻き戻しをくらえば、記憶が逆行して目的を忘れます。逆に早送りされても、時間経過でだんだん目的を忘却していきます。魂的にも似た感じですが、こちらの巻き戻しは下手をすると、前世の意識になってしまう可能性があります。どれになっても、行動不明に陥るのは確実です』

そう言われると、たしかにそうだな。


なんというか、やはり時間を敵に回すと恐ろしいな。


・・・しかし、そんなアレな感じの森に入って、俺は本当に大丈夫なのか?


現実を見た後だけに、その懸念をかなり強く覚えた。


『大丈夫です。私とあの方。そして、貴方の能力という三重防御があれば、あの中でも影響を受ける心配はありません』

三重防御。たしかにそれなら大丈夫な気がするが、やっぱり不安だな。


『それでしたら、浮遊腕の一つをあの中に突っ込ませてみたらいかがですか。それで無事だったなら、安心出来ますでしょう?』

それは、・・・そうだな。

良し!それでいってみよう。


俺は早速浮遊腕の一つを、あの中に突撃させた。


【時間適応を獲得しました】

【時間適応と空間適応は統合され、時空間適応を獲得しました】


その直後、新たな適応を得た。そして、それが手持ちの[空間適応]と統合され、何故か[時空間適応]に変化した。


どうなってるんだ?

『時間と空間は密接に繋がっています。それゆえ、両者の適応が揃ったので統合しました。これにより、どんな空間と時間であろうと貴方は普通に行動が出来ます』


わりとタイムリーだな。

欲しいものが欲しい時に手に入る。

・・・とりあえず、これであの中に入っても問題は無くなったな。

『はい』


俺は森の中を進ませいた浮遊腕を呼び戻し、今度は自分が問題の森の中に突入した。



・・・失敗したな。

『・・・そうですね』


俺は森に突入してすぐに後悔することになった。

その理由は、植物と風である。


最初の懸念である狂った時間は、[時空間適応]により完全に問題では無くなった。

しかし、俺達は直接ではなく、間接的な被害を受ける可能性を見落としていた。


現在俺は、突如伸びてくる枝や突然生えてくる木。そして、突然発生するカマイタチや気流に四苦八苦している。


木や枝は、先程森の外で見ていたので知っていたが、森に入ったことで他にも狂った時間の影響を受けているものがあることを知った。

それは大気だ。

この森では大気も狂った時間の影響を受けていて、突然の突風や竜巻、台風並の横風が不意に襲い掛かってくる。


現在は浮遊で高度を取り、[重力]と[時空間適応]でなんとか前進している感じだ。

高さを取って木によるダメージを回避し、[重力]で風に飛ばされるのを防ぐ。

[時空間適応]で時間と空間の異常を察知し、それをなんとか回避するよう努める。

しかし、それでも全てを回避することも防ぐことも出来ず、少しずつダメージが蓄積していっていく。

はっきり言って、精神的にも辛い。

常に気を張っていないと危険な為、心が休まる暇が無い。


もうさっさと宝玉を回収して、こんな危険地帯からおさらばしたくてしょうがない。



体感でそろそろ数時間は森の上空を移動した。

だが、今だに宝玉は見つからない。


いったい何処にあるのやら。

『もうそろそろ見えてきます』


俺がそんなことを思っていると、ようやく先の見える言葉を告げられた。


何処だ!何処にある!?

『あの木のてっぺんです』


そう言われた俺は、そのあの木とやらを探し、そして見つけた。


天を突くようにそびえる大樹が、いつの間にか俺の目の前に出現していた。


なんだこれ?さっきまではこんな馬鹿でかい樹はなかったはずだ!?

『いえ、最初からありました。貴方が気がつかなかったのは、今まで貴方がこの大樹と同じ時間軸にいなかったからです』


混乱している俺は、その言葉の意味をはかりかねた。


『さあ、行きましょう』

ああ。


だが疲弊していた俺は、言葉の意味よりも現状から解放されることを優先した。

俺は言われるがままに、大樹に向かった。



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