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12.ポーンVSクレイ

ユニットを作成した次の日。

俺は昨日生み出したゴーレム達に護衛されながら、森の開けた場所に来ていた。

目的は、ゴーレムとユニットの実力を確認すること。


ゴーレムがゴブリンを倒せるのは知っているが、直接の戦闘は見ていない。

だから、実際にその戦闘の様子を見てみたい。

圧勝なのか、苦戦しての勝利なのか。

圧勝なら安心して行動させられる。

苦戦しての勝利なら、ゴーレム達を複数で行動させないといけなくなる。


いくら量産がきくといっても、作成すれば俺も疲労する。

せっかく作ったゴーレム達が、無駄に損耗するのは避けたい事態だ。


また、ユニットの戦闘能力も確認しておく必要がある。

能力値的には即戦力になるが、実際に戦力になるかは戦わせてみないとわからない。

お任せでバランス調整は入っているはずだが、やはり一回は試験運用をしておくべきだろう。



『アウェイク』


俺はエレメンタルポーンの駒を亜空間エリア取り出し、実体化を起動した。


すると駒が赤い光を発し、次の瞬間には1mくらいに巨大化した。


ほう!こうなるのか。


さて、次は相手だな。


俺はゴーレムの一体を呼び寄せる。


ゴーレムはズシン、ズシンと大きな足音をたてながら、エレメンタルポーンの前に移動した。


『二体を戦わせるのですか?』

ああ。両方の戦い見たいし、それにこれなら両方とも倒される心配はないからな。

両方とも俺の命令を聞くから、すぐに戦闘は止めさせられる。

『そうですね。どちらが勝つと思います?』

性能的にはエレメンタルポーンの方が有利だと思う。

『そうですね。けど、戦闘能力は数値が全てではありません』

そうだな。

だからこうやって戦わせるんだ。


それじゃあ始めろ。


俺は二体に、模擬戦の開始を告げた。



ズシン。ゴーレムはゆっくりと一歩を踏み出し、エレメンタルポーンはゆっくりとその場で浮かび上がった。

おそらくは[浮遊]の効果だろう。


先に攻撃を仕掛けたのは、エレメンタルポーンだ。


自分に向かって来るゴーレム目掛けて、頭頂部から火の弾を無数に発射した。


ゴーレムはその攻撃を両腕を盾にして防ぎ、ゆっくりだが確実にエレメンタルポーンに向けて前進して行く。


対するエレメンタルポーンは、その場に留まって火の弾を撃ち続けた。


どうやら移動はしないらしい。

それとも、敏捷が1だったせいでまともに動けないのか?

だがそうなると、固定砲台としてしか使えないか?


俺がそう思っている間も、両者の攻防は続いた。


エレメンタルポーンは火の弾を放ち、ゴーレムはゆっくりとエレメンタルポーンに接近して行く。

ただ、近づけば近づく程に火の弾を近くでゴーレムは受けることになる。

その為、途中からはゴーレムの腕が少しずつ削られだした。


この勝負、ゴーレムが腕を削り切られる前にエレメンタルポーンに接敵するか、エレメンタルポーンがゴーレムの防御を突破出来るかで勝敗が決まりそうだ。


そう思っていると、さすがにエレメンタルポーンの方にも動きがあった。


風に流される風船のように、ふわふわと移動を開始した。

けれどやっぱり低い敏捷のせいか、その移動はゴーレムよりものろかった。


ゴーレムはそんなエレメンタルポーンを追いかけて行くが、身体の欠損が目立ってきた。


火の弾が当たった箇所が弾け飛び、周囲にゴーレムの材料である土が舞う。


うん?


戦闘を観戦していると、ゴーレムの姿に何か違和感を覚えた。


なんかあのゴーレム、だんだん背が低くなってきてないか?


違和感の原因を探してみると、ゴーレムの背丈が縮んできていることに気がついた。


『低くなってきてますね。おそらく、体内の土を欠損してきている腕の穴埋めに使用しているんでしょう』

ほう。ゴーレムにはそんなことが出来るのか?


『出来ますよ。ゴーレムは土人形のモンスターですから。構成材料は一律で土です。通常の生命のような臓器などもありませんし、身体の形状変化はわりと自由がききます』

なるほどな。

となると、エレメンタルポーンが勝利する為には、ゴーレムが活動出来ないサイズまで削る必要があるのか?


『そうなります。ただ、ゴーレムは[補強]を持っていますから、それも難しいでしょうね』

[補強]?

そういえばゴーレムは、そんな通常スキルを持っていたな。

どんな効果なんだ?

『自分の構成材料と同じものを取り込み、欠損箇所を補充する能力です。つまりあのクレイゴーレムは、地面の上にいる限りは再生が可能となります』

へぇ~、それは便利だな。

だが、ならあいつは何故再生をしないんだ?

再生出来るなら、体内の土をやり繰りする必要はないだろう?


『それはただたんに、[補強]をする為には立ち止まらないといけないからです。取り込んだ土を自分のものにするのにも、僅かですが時間が必要ですし』

なるほど。

そうすると、エレメンタルポーンに接敵してからなら、再生しながら攻撃が出来るのか。

やっぱり勝負の分かれ目は、ゴーレムが接敵出来るかにかかっているな。


エレメンタルポーンの方はどうなんだ?

火弾はゴーレム相手には効果が薄いみたいだが、ゴーレムを倒せる術はあるのか?


『残念ながら、エレメンタルポーンの攻撃手段は火弾だけです。ゴーレムを倒すのは難しいでしょうね』

そうか。なら、攻撃手段を増やすのが次の課題だな。


『エレメンタルポーンはそうですね。ですが、クレイゴーレムの方にも決め手がありませんよ。エレメンタルポーンは、[HP自動回復]と[MP自動回復]を持っていますから、生半可な攻撃では倒し切れませんし、持久戦には滅法強いです。効果が薄いといっても、火弾がクレイゴーレムの再生力を上回れば、エレメンタルポーンが勝ちます』

ふむ。なんか千日手になりそうだな。


『おそらくは、このまま続ければそうなります。なんせ、両者共に疲労とは無縁の鉱物系モンスターです。貴方が命令を撤回しなければ、どちらかが倒れるまで続けますから』

そうなるか。

なら、もうここまでにしておくべきか?

『判断はお任せしますが、両者の戦闘能力の確認は出来ていると思います』

そうだな。なら、ここまでで良いだろう。


お前達、そこまでで良い。戻って来い。


俺が模擬戦の終わりを告げると、エレメンタルポーンは攻撃を止め、クレイゴーレムは歩む方向を俺の方に向けた。


お疲れ様。


俺は両者を労い、エレメンタルポーンを駒の形態に戻して回収。

クレイゴーレムには、もとの護衛役を命じた。


さて、次は何をしようか?

帰って巣を水脈に繋げるか?

それとも、この辺りを調べてみようか?

どちらが良いと思う?


『それでしたら、巣の方はクレイゴーレム達に任せて、少し付き合ってもらえないでしょうか?』

付き合う?

それは別にかまわないが、何に付き合えば良いんだ?


『私が最初に頼んだことにです』

最初に頼まれた頼み事?

それって、人類種達を減らしてほしいというやつか?

それとも、この世界の封印されている管理神とやら助けてほしいというやつか?

どっちのことだ?


『後者です。この近くに、時の管理神が封じられた宝玉があります。それを貴方に確保してもらいたいのです』


時の管理神。法則系を管理する神か。


だが普通こういうのは、火や水の元素系の神から解放するもんなんじゃないのか?


『それは、前世の物語を参考にし過ぎです。というか、火や風、雷や氷の管理神達は、すでに人類種達の手に堕ちています』

へぇ?


『ですから、封印された管理神達の半数近くが、すでに私達の敵である人類種達の手に堕ちているのです。今現在人類種達の魔の手から逃れているのは、水と土の元素系管理神を除けば、大半が法則系と概念系の管理神達なんです』


・・・何か、あまり信じたくないことを聞いてしまった気がする。



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