11.ユニット作成
ゴーレム作成が経済的じゃないのはわかった。
だが、逆にユニット作成の方は経済的なのか?
『材料という意味でしたら、経済的ですよ。逆に、SPについては不経済的ですけど』
どういうことだ?
材料は経済的で、SPが不経済的?
ユニット作成は、SPを消費するタイプの能力なのか?
『それはただ説明されるよりも、実際にやってみた方がわかりやすいですから、一緒にやってみましょう』
わかった。どうすれば良い?
『まずは、いつもの通常スキルのようにユニット作成を発動させてください』
わかった。
おっ!
俺がユニット作成に意識を向けると、目の前に何かが出現した。
それの見た目は、白い正四角形の立方体だ。
あとはその横に、何のメッセージも表示されていない表示枠だけが出現している。
『貴方の目の前にあるのが、ユニットの3Dモデルです。それを加工して、ユニットの外見を決定します。また、横のウインドウは、ユニットのステータスが表示される枠です』
へぇー、ユニット作成ってこうやってやるのか!
俺は意外な作成方法に、内心驚いた。
『さて、ユニット作成の手順ですが、見た目を決めてからステータスを振るのと、ステータスや能力を決めてから見た目を合わせる二通りの方法があります。まあ、ちょいちょい擦り合わせを行っても良いんですけどね。どうします?』
ふむ。どちらがオススメだ?
『最初ですから、見た目からでどうでしょう』
じゃあ、それで。
『わかりました。では3Dモデルを先にいじりましょう。お好きな見た目をイメージしてください』
イメージ?
『はい。この世界で発動する能力は、基本的にイメージ媒介型ですから、直接加工せずともイメージで形状を変えられます』
なるほど。今まで発動させた通常スキルのことを考えると、納得のいく話だ。
ふむ。どんな見た目にするかな?
『お好きなデザインを参照されるか、シンプルなデザインが良いと思われます』
そうだなぁ、アレにするか?
俺は3Dモデルにイメージを投影した。
すると、3Dモデルにイメージした像が重なり、実物がどうなるのかを視覚的に教えてくれた。
ふむ、こうなるのか。なら、もう少し装飾が欲しいところだな。
それから俺は、その立体モデルを自分の好きなように調整していった。
ふう、こんなものか?
『チェス駒ですか?』
俺が一通り弄った立体モデルを確認していると、彼女からそう尋ねられた。
そして、それは正確だ。
今俺の目の前にある3Dモデルの見た目は、チェスのポーンの駒をアレンジしたものとなっている。
その外見フォルムは、通常のポーンと同じだ。
丸い頭頂部に、三角錐型の胴体。
色はまだつけていないので、無色透明なボディーをしている。
アレンジした部分は、頭頂部の球体に蛇を巻き付きたことと、胴体部分に複数の蛇が重なったような鱗模様を入れた点だ。
自分(蛇)のものということで、こんなアレンジにしてみた。
『何故チェス駒を選択されたので?』
シンプルと、能力名のゲームプレイヤーからの連想の結果だ。
『なるほど。たしかにチェス駒はシンプルですし、ゲームやプレイヤーという言葉から連想出来ますね。それで、見た目はこれで確定ですか?』
ああ。次はステータスか?
『はい。もっとも、追加したい能力などがなければ、ボディーの材質を決定して終わりでも構いません』
それって、ステータスは自動割り振りが可能ってことか?
『はい。基本ステータスや通常スキルは、材質から自動で算出させることが出来ます。とくに希望がなかったり、希望するスキルを与えるのに必要なSPが足りなかった場合などは、お任せにするのがオススメです』
お任せがオススメなのか?
『はい。バランス調整がはいるので、少なくとも欠陥ユニットにはなりません』
欠陥ユニットって・・・。
『こう言ってはなんですが、人為的ミスはそれなりに発生します。それは設定ミスであったり、意図していない能力のあれこれだったりです。そういったものを持ったユニットのことを、私は欠陥ユニットと呼称しています』
人為的ミス。それはたしかにあるだろうな。
少なくとも俺は、自分が絶対にミスをしないなんて自信は無い。
なら、たしかにお任せは有用だな。
ふむ。それなら今回はお任せで良いか。とくに持たせたい能力もないことだし。
じゃあ今回は、ステータスはお任せにする。
最後は材質でよかったか?
『はい。外見・ステータス・材質。その三点を指定しておけば、ユニット作成は成立します』
さて材質か。ふむ、これの出だしを考えると、エレメンタルが良いな。
外の大樹から葉を一枚貰っても良いか?
『構いませんよ。一枚くらいすぐ生えてきますから』
良し!
俺は浮遊腕を、外のエレメンタルへと向かわせた。
浮遊腕は、洞窟の天井を別名にある幽霊の如く摺り抜け、すぐに赤い水晶のような葉を持ち帰ってきた。
これをどうすれば良いんだ?
『それを3Dモデルに当ててください』
こうか?
俺は言われるままに、葉をポーンの頭頂部に当てた。
すると、葉が赤い粒子に変わり、ポーンの中に吸い込まれていった。
そして赤い粒子を全て吸収した後、ポーンの色が無色透明から透明感のある赤い色に変化した。
その色彩、質感は、吸収される前の葉にそっくりだ。
どうやら本当に、そのまま材質を取り込んで再現しているようだ。
たしかにこれならゴーレム作成よりも経済的だ。
俺はあちこちからポーンの外見を確認した。
うん?
そうして確認をしていると、横にあったステータスの表示枠に、ステータスや能力が表示され始めた。
どうやらお任せが発動し、ユニットの性能を決定しだしたようだ。
俺はそれを上から順番に確認していった。
モンスター名:未登録
種族:エレメンタルポーン
Level:1
HP :50/50
MP :100/100
【攻撃】3
【防御】50
【魔力】100
【敏捷】1
【精神】110
【運】そこそこ
【属性】火
【特殊能力】
[プロモーション]
【耐性】
[熱耐性:Lv1][火属性耐性:Lv1][状態異常無効]
【通常スキル】
[火弾:Lv1][HP自動回復:Lv1][MP自動回復:Lv1][浮遊][貢献][火属性強化]
【称号】
[眷属ユニット]
【祝福・加護】
無し
【経験値】0
次のLevelまで550
・・・なんか一部の値が今の俺よりも高い。
これで本当にLevel:1なのか?
『そうですよ』
なんでこんなに高いんだ?
材質のせいですね。さすがにLevel:300の個体の一部を材料にしていますから、それくらいは普通にいきますよ。
・・・なるほど。
そう思うと、そうおかしな値でもないか。
Level:300というところで、俺は納得がいった。
ところで、他にも気になる箇所があるんだが。このLevelのところ、なんで最大値がないんだ?
エレメンタル:ターミナルの簡易ステータスを見た時にも思ったが、なんでないんだ?
『ああ、それですか?それは、もう進化しないからですよ。もっとも、このユニットについては、貴方が進化先を用意すれば、後で最大値が追加されますよ』
なるほど、そういう仕組みなのか。
俺は、全ての首で頷く。
それで、これで完成で良いのか?
『はい。後は実体化させるだけです。その駒を引っ張り出すイメージをしながら、リアライズと念じてください』
わかった。
俺は浮遊腕で駒を掴みながら、言われた通りに『リアライズ』と念じた。
その途端、さっきまで3Dモデルにすぎなかった駒が、浮遊腕の手の中で実体化した。
『これで完成です。ユニットとして使用する時は、アウェイクと念じれば駒形態から大きくなって、モンスター形態に移行します』
へぇー、そういうものなんだな。
こうして俺は、一つ目のユニットの作成を完了した。




