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113.素顔

「さて、これで無謀なことをする者はいないだろう。…まあ、今言ったようになっても、俺達はかまわないが…」

「そうですね。私が直接手を下すのではないのは残念ですが、かなりもがき苦しむことでしょうから、私の溜飲は下がりますね。…一人くらいは、境界領域に送ってみましょうか?」

「「「「!!」」」」


エレメンタルがそう言うと、アーク達の腰が一斉に退けた。

エレメンタルがこちらを憎んでいるいじょう、本当にやられそうで、アーク達は気が利じゃなかった。


「やめておけ。せっかく貴女が直接料理出来るんだ、わざわざそんなことをしなくて良い」

「そうですね。では、これからゆっくりと調理するとしましょう」

「「「「ひっ!」」」」


エレメンタルの、これからどう調理してあげましましょうか?っと、言う目にエルフ達は恐怖した。


「ふむ。一応ここは、自己紹介をしておこうか」

「自己紹介ですか?そんな必要はありませんよ」

「いや、あるよ」

「そうですか?」

「ああ。そちらの勇者一行には、顔見せの必要が。そしてそこのエルフ達には、貴女が怒っている理由をわからせる為に、ね」


アストラルは最初にアーク達を指差し、次に長老エルフ達を指差した。


「なるほど。なら、私はこの仮面を外した方が良いでしょうね。口で言うよりも、よほど雄弁にそこの裏切り者共に現状を理解させられるでしょうから」


それを見たエレメンタルは、アストラルの提案に納得がいき、一つ頷いた。


「それじゃあ、まずは俺からだ。《ヒュドラ》、第一の頭。《顕現》のアストラル。またの名を、転生プレイヤー、アストラル=アステリアル=マクスウェルだ」

「転生プレイヤーだって!」


アストラルの名乗りに、ライトが食いついた。

それも当然のことだろう。なんせ、ライトにしてみればようやく同じ立場の相手に出会えたのだから。


「そうだ。光明来都」

「コウミョウ?」


ライトは、アストラルの言った名前に首を傾げた。

聞き覚えのない名前。だが、ライトはなぜか懐かしく感じた。


「光明というのがお前の姓だ。もっとも、記憶にプロテクトを施されている今のお前に言ったところで、実感はないだろうがな」

「!」


ライトはアストラルの言葉に驚き、そしてすぐに納得がいった。

なぜ始めて聞いた名前を懐かしく感じたのか。それが自分の本当の名前だったのだからだと、ライトはすとんとふに落ちたのだ。


「…お前は…」

「うん?」

「…お前は、あなたは、僕のことを何か知っているのか!?」


それはある種の哀願を含んだ叫びだった。

ダンタリオンから情報を得られず、ライトはここ最近ずっと不安定だった。

アストラルと最初に遭遇した時も、情報を得ることは叶わなかった。

しかし、今アストラルは自分の目の前にいる。そしてアストラルは、自分の本名を知っていた。

つまりアストラルは、記憶喪失になる前の自分のことを知っているのかもしれない。いや、知っていてほしい。

感情の揺り戻しの結果、ライトはアストラル相手にそんな願望を抱いてしまっていた。


「…期待しているのに悪いが、お前のことはあまり知らない。それに、敵であるお前と話すことは俺にはない」

「あなたもダンタリオンと同じことを言うんですね。なぜ僕を敵だと言うんですか?少なくとも、僕はあなた達相手にそこまで敵対行動をとった覚えはありませんよ?」

「お前の現在までの行動の問題ではなくなくて、立ち位置というか、属する陣営の問題だ」

「陣営?」

「そうだ。俺は彼女や管理神達。そして、この世界に生きている人類種達を除いた生物達の側で、この世界を守ることが役割だ」

「逆にお前は、そこにいる人類種達の側。この世界を滅ぼすことがその役割だからな」

「…世界を、滅ぼす?」


思ってもみなかった自分の役割に、ライトは一瞬硬直した。


「ああ」

「…それはいったい、どういうことですか?」


そしてそのライトの役割は、リュミエール達にとっても聞き捨てならないものだった。


「どういうこと?それをお前達が俺に問うのか?」

「「「「えっ!?」」」」


リュミエール達は、アストラルの予想外の返しに、自分達が何を言われているのかわからなかった。


「…なるほど。知りし咎人とはいっても、お前は自分達の行いの結果は知らぬということか。だがそれは罪であり、赦されることなき悪業だ。俺はともかく、エレメンタルは決してお前達を赦しはしないだろう。それと、お前達の傲慢の犠牲となった者達も」

「私達の、傲慢の犠牲?」


リュミエールは、アストラルの言っていることが理解出来なかった。

今のリュミエールには、アストラルの言葉を理解するだけの情報が無いからだ。


「それも知らないのか?お前達は、本当に最低だな。なら、やはりお前達に生きている価値は無い。いや、お前達の存在こそが害悪であり、お前達人類種達以外の生物にとっての厄災だ」

「……そこまで言いますか?」


アストラルにあまりにも罵られるので、リュミエール達は反感を覚えた。


「ああ、言うとも。なぜなら、俺はお前達の種族の歴史の大半を把握しているからな。だから、俺はお前達の種族の罪も、過ちも、愚かさも、無責任さもお前達いじょうに正確に知っている。だから何も知らないお前達の言葉など、俺には無用だ。なんの価値もなければ、正しい意味の一つさえ無いのだからな」

「「「「………」」」」


自分達が無知なことを理解しているリュミエール達は、アストラルに対して何も言えなくなった。


「さて、次は君の番だ。そこに居る裏切り者達に、君の素顔を見せてやると良い」

「わかりました」


リュミエール達が黙ったことを確認したアストラルは、エレメンタルに自己紹介を促した。

そしてアストラルが長老エルフ達に向ける視線には、何かを期待するような色が混じった。


「「「「!?」」」」


直後、長老エルフ達の背筋に悪寒が走った。

長老エルフ達は予感した。

これから自分達は、何か致命的な事態に遭遇するのだと。


長老エルフ達の視線が、仮面に手をかけた状態のエレメンタルに集中した。


「私は《ヒュドラ》、第二の頭。《森羅万象》のエレメンタル。そしてその正体は…」


エレメンタルは名乗りの後、長老エルフ達全員を煽るように、ゆっくりと仮面を外した。


「「「「…ひっ!ひぃぃ!!?」」」」


そしてエレメンタルの素顔を見た長老エルフ達からは、魂が飛び出すような悲鳴が次々と上がった。


「「「「か、か、かっ、管理神様!!」」」」

「「「「!!」」」」

「「「「神?」」」」


長老エルフ達は、二千年前に日常的に見ていた顔が仮面の下から現れて、大いに震え上がった。

リュミエール達は、突然の神の出現に、ただただ驚いた。

逆にニーナ達エルフ達は、アストラル達の話しについていけていなかった。

なので、長老エルフ達が言った神という単語にのみ反応をみせた。



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