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109.襲撃

「…いじょうです」

「「「「………」」」」


リュミエール達はそれぞれの視点で一週間前の事件を話し終わると、それぞれが長老エルフ達の顔を見た。

長老エルフ達の顔色は、最初に聞いたフィーネとほとんど同じだった。

皆一様に顔色を土気色に変え、身体の方もガタガタと震わせている。


やはり、長老エルフ達は全員が全員、管理神達を恐れているようだ。


話しを聞き終えた長老エルフ達はそれぞれが席を立ち、自分の親しい他者と合流して、いくつかのグループを形成した。そして、互いの意見を交換しあった。


リュミエール達は、それを冷めた目で見ていた。

普通、来客の前で断りもなくこのような態度をとるというのは相手に対して失礼だし、常識がないとも思われる行為だ。

それだけ長老エルフ達に余裕がないのかもしれないが、それはそれで、その理由の方で長老エルフ達が最低の人間ということになる。

なんせ、神にあだなした可能性が高くなった者達だ。

神に仕えるリュミエールや、それを守護するルーチェにしてみれば、古き神々は現在は知名度は無くても神は神。

その神に対し、これだけ怯えるようなことをしている。

とうてい許せるものではなかった。


さらに悪いのが、長老エルフ達がリュミエール達をまったく気にせずに会話をしている点だ。

その結果、長老エルフ達の口からぽろぽろと情報が漏れていて、リュミエール達は断片的だが、いろいろな情報が聞き放題になっている。


長老エルフ達の会話の一部を抜き出してみると、次のようなものがあった。


※グループ1

「どうするのだ!すでにあの方達が二柱も復活しているらしいぞ!」

「それどころか、この戦争でさらに四柱も復活するらしい!?いったいどうするんだ!」

「うろたえるな!」

「出来るか!あの時の戦力は、すでに我々の側には無いのだぞ!」

「そうだ!今の我々には、あの方達とまともに戦えるだけの戦力がない!」

「というか、あの時とて正攻法ではこちらが押し負けていたのだぞ!」

「そうだそうだ!あの時、我らがどれだけのことに手を染めたと思っている!」

「「「「………」」」」


※グループ2

「ううっ、きっとあの方達は、我らのことを怒っておられるのだろうな」

「当たり前だ。我々が何をしたのか忘れたのか?」

「そうだぞ。我らはあの戦いの時、土壇場であの方達を裏切ったのだ。怒っておられないはずがない」

「そうだ。我々があのタイミングで裏切った結果、どれだけの犠牲が生まれたのか忘れたわけではあるまい?」

「…そう、だな。というか、怒っておられるのならまだマシかもしれないな」

「…どういう意味だ?」

「裏切ったとはいえ、あの方達は我らの母も同然の方達。その方達に完全に見限れてしまったら、我らはこの世界では生きてはいけない。だが、怒っておられるのなら、まだ我らに関心を持っておられるということだからな」

「「「「………」」」」


※グループ3

「これからどうする?ドワーフ共と戦争をしている場合ではないぞ」

「たしかに。ドワーフ共以前に、あの方達の復活に備えなければならない」

「そうは言うが、どう備えるというのだ?」

「そうだ。あの方達の一柱でも、今の我々には手に余る」

「ああ。なのに、復活されるのはその四倍の四柱」

「我らには、どうすることもできん」

「「「「………」」」」


※グループ4

「ここはやはり、外部に助けを求めるべきではないか?」

「外部にか?」

「そうだ。あの方達が相手では、我々だけではどうしようもないだろう?」

「たしかに。しかし、誰に助けを求めるつもりなのだ?」

「そうだぞ。あの時の戦いで、我らとあの方達はほとんど相打ちだった」

「それに加え、あの後の天変地異」

「我らだけではなく、他の種族達もあの時あった戦力の大半を失った」

「それに、たとえ外部に助けを求めたとしても、ろくに戦力がないのなら、焼け石に水だろう」

「というか、そもそも我々の求めに応じてくれる相手がいるのかさえ不明だ」

「そうだな。あれから二千年。我らは他種族達との交流を、あまりしてこなかったからな」

「「「「………」」」」


※グループ5

「ここはやはり、あの方達に誠心誠意謝罪するべきではないか?」

「たしかに謝罪はしておくべきだろう」

「しかし、それであの方達に赦してもらうといのは、現実には無理ではないか?」

「それは当然だろう。当時ならともかく、あれからもう二千年も経っている。今更赦してもらおうなど、むしの良い話しだ」

「そうだな。だが、これは私達の心の問題でもある。お前達は、あの方達に謝ることなく彼方の地に旅立てるのか?私は無理だ。あの方達に謝罪も出来ぬままでは、心残りが大きすぎる」

「…そう、だな。我らの愚かさの結果が、今だからな」

「ああ。我らの短慮のせいで、子供達にはいらぬ苦労をかけてしまっている」

「「「「………」」」」


※グループ6

「ここはやはり、召喚の儀式を行うべきではないか?」

「馬鹿を言うな!召喚の儀式はついこのあいだ行ったばかりだぞ!」

「そうだぞ!今召喚の儀式を行っても、不発に終わるか、低スペックの者が召喚されて終わるのがオチだ」

「というか、お前はまだ禁忌に触れるつもりなのか?」

「それは…」

「あの方達が封印されている時ならともかく、すでに二柱は復活されておられるのだ。今召喚の儀式など行おうものなら、どんな神罰が下されることか…」

「「「「………」」」」


※グループ7

「…もしもの時は、アレを使うぞ」

「貴様、正気か!?」

「そうだぞ!アレの制御方法の一部は、この二千年間の間にすでに失われているのだぞ!」

「アレが暴走すれば、我らの。いや、世界脅威となるのだぞ!」

「そうだ!それに、たとえアレを持ち出したとしても、相手がノルニル様とラケシス様では、我らが干渉されてしまえばそこまでだぞ!」

「それでもやらねばならぬのだ!」

「「「「………」」」」



という風に、わりと重要そうな情報がぽろぽろと長老エルフ達の口から飛び出している。

リュミエール達はそれらを聞き、自分達の知らない情報を補充していった。



『もう良いですか?』

「「「「!?」」」」


そうしてしばしの時間が流れると、突如議会会場にいるだれもが聞き覚えのない声が、議会会場全体に響き渡った。


リュミエール達全員が、それぞれあちこちに視線を向ける。

しかし、議会会場の中には最初から居る自分達の姿しか見当たらなかった。


『それではそろそろ、キャスト以外は退場していただきましょう』

「全員防御障壁を!」


全員が戸惑う中、また声が議会会場全体に響き渡った。

それを聞いた全員が身構えた直後、ライトが声を上げた。


リュミエール達は反射的にそれに従い、リュミエールは防御障壁を展開。アーク達は、急いでその有効範囲に飛び込んだ。

長老エルフ達の大半も、現状の危機感から咄嗟にライトの声に従い、それぞれ防御魔法を発動させた。

ただ、一部の長老エルフ達は咄嗟には反応出来なかったが。

それが長老エルフ達の明暗を分けた。


カッ!!


長老エルフ達が防御魔法を発動させていない同胞達の名を呼ぼうとした直前、議会会場全体を閃光と爆発が襲った。


「「「くっ!?」」」


爆炎が会場内部を満たし、リュミエール達を外へと吹き飛ばす。



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