10.ゴーレム
ふむ。先にこいつのLevelを上げて、ステータスの変化や進化先を見てみるべきか?
それとも、自分のLevelを上げてから、もう一体作成して、比較しながら見るべきか?
どちらが良いかな?
いや、あるいは大量生産を優先して、性能は二の次にするべきか?
いろいろと迷うな。
『それでしたら、同時進行で良いと思われます』
同時進行。大量生産も、ステータスの比較も、進化先の確認もまとめてやれば良いってことか?
『はい。貴方の多重起動を駆使すれば、どれも可能です』
ふむ。たしかにそうだな。
現在の多重起動の同時発動数は6。
少し頑張れば、数は簡単に揃えられそうだな。
だが、・・・。
『だが?』
ゴーレムの維持・管理なんてどうすれば良いんだ?
放置とかはマズイだろう?
『維持・管理は気にしなくても構いませんよ。もう生み出した時点で世界に定着していますから、存在するだけなら貴方が何かする必要はありません』
そういうものなのか?
『これが人類種だと、ゴーレムやアンデッドなどは維持コストが発生しますね。ですが、私がバックアップについている貴方に、そんなものを支払ってもらう必要はありません』
なら、大量生産して問題は無いんだな?
『スペースの問題は後々出てくると思いますが、今は大丈夫です』
了解した。
憂いが無くなった俺は、クレイゴーレムの増産を開始した。
多重起動でゴーレム作成を発動させる。
すると、一度に六体のクレイゴーレムが地面から発生する。
そして、発生したクレイゴーレム達に、俺は順番に命令を出していった。
まず最初に生み出した六体と、その後に生み出した六体には、Level上げを命じた。
これで、クレイゴーレム達の強さの確認と、ゴーレムの進化先の確認が出来る。
どれくらい生き残るかはわからないが、その生存率も含めて知りたいと思う。
その後に生み出したクレイゴーレム達には、二通りの命令をそれぞれ別に与えた。
一つは、エレメンタル:ターミナル周辺を守護せよ、と。
はっきり言ってしまえば、動く壁兼見張りだ。
敵の襲撃は、警戒しなければならない。
不意打ちは受けたくないからな。
もう一つは、穴を掘れ。
こちらは、俺の巣作りだ。
俺の図体は、二回の進化でそれなりの大きさになっている。
後五回は確実に進化するいじょう、ある程度進化したら、怪獣サイズになることも覚悟しておかなければならない。
それゆえに、今からでもそれなりの広さの巣を用意しておく必要があるのだ。
進化直後に巣に入れなくなって、新しい巣が完成するまで、外で野宿なんてしたくもないからな。
まあもっとも、これは後から思いついた理由というか活用法だがな。
本当の理由は、クレイゴーレム達が抜けた穴の有効活用だ。
さすがに2m大のクレイゴーレム達を大量生産すると、対象とした地面がどんどん下降していって、途中からは周囲のあちこちを穴だらけにしてしまった。
その穴を埋める土をゴーレムにしているいじょう、埋めるには地面を均すしかない。
しかし、そうしても地面が他よりも陥没するという結果は避けられない。
なら、穴を埋めるのではなく、穴が空いたまま利用出来ないかを考えた。
その結果が、穴を洞窟にして、巣として利用しようという案だ。
我ながら、良い手だと思っている。
とりあえずは今は、その三つの命令でクレイゴーレム達を行動させている。
さて、クレイゴーレムの数はそろそろ良いか?
『そうですね。五十五体もいれば、クレイゴーレムは十分でしょう。そろそろアレンジか、新しい材料でゴーレムを作成しますか?』
ふむ。人型ゴーレムは結構作ったから、今度は動物型にするか?
それとも、材料を土以外にして作ってみるか。
どちらが良いか?
・・・いや、両方採用すれば良い話だな。
少し迷ったが、そうすることにした。
俺は毒を生成し、それを五つの口から地面に垂らした。
そして、ある程度量が貯まると、それを材料にゴーレム作成を行う。
地面に落ちていた紫色の液体状の毒が泡立ち、やがて長さ数cmの無数の蛇の姿を模った。
『今度は随分と小さいのを作りましたね』
大きいのはもう作ったからな。
今度は小さいのにしてみた。というか、毒が材料なんだから、大きさはいらないだろうと思ってな。
相手の口などの隙間から体内に入り込み、後は毒とゴーレム自体で内部破壊。
この戦術で良いと思ってる。
『高位の毒持ちや耐性持ち以外には、有効な手ですね』
そうだろう。
それからも俺達は、いくつものゴーレムを作成していった。
うん?
【ゴブリンが倒されました】
【[貢献]により、経験値が200献上されました】
【称号[転生プレイヤー]により、追加で経験値を100獲得しました】
そうしてゴーレム作りにせいを出していると、突然メッセージが表示され、何故か経験値が自分に入ってきた。
[貢献]?それってたしか、クレイゴーレムについていたスキルだよな?
『そうです』
つまり、クレイゴーレム達がゴブリンを倒したのか?
『そのようですね。特殊能力や通常スキルで生み出されたモンスター達は、生み出した者の武器扱いですから。武器がトドメを刺せば、その持ち主が経験値を得られるのと、原理は同じです』
ああ、そういうことになっているのか。
こうなることは知らなかったが、説明されると納得がいった。
『ただし、Level設定の無い武器と違い、Level持ちのゴーレム達がトドメを刺した場合、その三分の一程度しか経験値は入手出来ません。残りの三分の二は、ゴーレム自身の経験値になりますので』
ふむ。それでも勝手に経験値が入ってくるなら、かなり美味しい話だな。
『そうですね。自分で危険を冒す必要も減りますし、経験値を獲得する効率も上がりますから』
だな。
これを利用しないてはない。
弱いなら強くなれば良い。
時間が無いなら分担すれば良い。
一人で無理なら複数でやれば良い。
数がいるなら、やれることはいくらでも増えていく。
『その通りです』
そんなわけで、さらにゴーレム作りにせいが出る。
しかし、ゴーレム作りに必要なMPも、スキルを使用するやる気も有限だ。
ゆえに、休息も途中で必要になってくる。
だからある程度で切りをつけ、俺は休憩に入った。
休憩する場所はもちろん、今日作ったばかりの洞窟型の巣の中。
ひんやりしていて、結構気持ちよかった。
あえて注文をつけるなら、水も欲しいところか?
水中適応で水の中でも大丈夫なせいか、それとも海蛇に進化したせいか、なんというか水が恋しいのだ。
『それでしたら、巣と水脈を繋げますか?』
水脈を繋げる?
『はい。ここから百mも下に掘れば、水脈に繋げられますよ』
繋げられのは嬉しいが、繋げても大丈夫なのか?
具体的に言うと、貴女とかすぐそこのエレメンタルとか。
下手すると根腐れとかしないか?
俺は背中の双葉と、上にある大樹の方を見る。
材質は水晶っぽいが、形状が植物型なので、少し不安がある。
『その心配はありません。私達は、元素結晶集積構造体ですから。ちなみに、水脈から水をひくことによる問題もありません』
元素結晶集積構造体?
『はい。この世界にある様々な属性が、物質化した鉱物と理解してください』
属性が物質化。
ふむ。それって、ゴーレムの材料に使えるのか?
現在作成したゴーレムは、土・毒が材料の二種類。
これから別の種類を作っていくにしても、水・木・氷が材料のものくらいしか出来ない。
だが、様々な属性が物質化した鉱物を材料に出来るなら、本来はゴーレムに出来ない属性のゴーレムも生み出せる。
『ゴーレムの材料にですか?可能ですが、ゴーレムの材料にするよりは、ユニットの材料にした方が経済的ですよ』
どういう意味だ?
『ゴーレムの材料にする場合は、ゴーレムの大きさ分の量が必要だということです』
それはたしかに経済的じゃないな。




