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四つの扇  作者: オリンポス
6章:竜驤虎視の南家と北家!!!!!!
94/101

94.藤原家vs南家(結)

「面白いな。藤原家の者よ」

 土竜はそう重機の陰に隠れた。

 グラウンドの入り口付近には舗装用の大型車両が幾台も並べられている。

 隠蔽には最適の地形といえた。


 保険屋はその間に、ベルトを緩める。

 運動不足がたたって窮屈になっていたのだ。

 ネクタイも緩めて、風通りをよくした。


 土竜は車両から黒っぽいなにかを持って現れた。

 ――アームウェイトとレッグウェイトだ。

「腕は重さ10キロ、脚は重さ20キロある」

 そう言って彼は、四肢(前腕部と、向こう脛)に重りを巻き付け。

 マジックテープで固定した。


「待たせたな。藤原家の者よ」

「どういうつもりだ」

「どうもこうもない。パワーバランスの調整だ」

 そう跳躍したり、空中を拳打してみせる土竜。

 その動作は精彩さを欠いており、ぎこちなかった。


「後悔するなよ」

 道草はそうのこぎり刃を構え直し、頭から突っ込んだ。

 単調な直線軌道である。

 対する土竜も、油断なく、身構えた。

 徒手対刃物の実践は、百戦錬磨であった。


 道草と土竜。

 それぞれが、間合いに入った。


「まずは脅威の排除」

 手首の関節を外すか。肘の蝶つがいを壊すか。

 いずれにせよ刃物を使えない状態にする。

 これが土竜の取った選択肢であり、それが最善手である。


 しかし、最悪だった。


 まるで、予想外な出来事が発生したのだ。


 道草はナイフを使って、刺すでもなく、投げるでもなく、斬るでもなく。

 ただ。

 手を放したのだった。


 重力に任せて、凶器を、自由落下させたのだ。


「なっ……」

 息をのむ土竜の視界に、ムチが跳んだ。

 パァン! と。

 土竜の顔面に、痛快な鞭打べんだが炸裂する。


「ぐわっ」

 そう顔面の筋肉が中央に向かって萎縮し始める。

 道草はそのタイミングを逃さずに。

 しゅるりとネクタイを外して、土竜ののど元に巻き付けた。


 腰が抜けたのか、土竜は膝からくずおれる。

 しかし頸部だけは、ネクタイが吊り上げていた。


 土竜は膝立ちになって、必死にもがく。

 火事場の馬鹿力で、ものすごい怪力だった。


 彼はアームウェイトの重量に負けることなく、必死に抵抗する。


 顔面部を朱に染めて、首を掻きむしった。

 おびただしい量の吉川線(絞殺死体などにみられる、首元のひっかき傷のこと)が。

 血の痕とともに、深く深く刻まれる。


 しばらくして、抵抗がやんだ。

 土竜は真っ赤な舌を突き出して、目を開けたまま、失禁していた。


「すこし気道を塞いだだけだから、すぐに蘇生するだろう」

 道草はネクタイで手首を。

 ムチとして使ったベルトで足首を。

 それぞれ縛った。


 あえて重りは外さなかった。


「さてと。孔雀にも死に体の運搬を手伝ってもらうか」

 藤原道草は大儀そうに腰に手を当てた。


戦闘終了:

勝者、藤原道草

敗者、羽柴土竜

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