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四つの扇  作者: オリンポス
6章:竜驤虎視の南家と北家!!!!!!
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92.藤原家vs南家(承)

「藤原家の者よ、ハンデをくれてやろう」

 羽柴土竜はそう黒いポンチョからナイフを取り出して、孔雀の足元に投げてよこした。

 刃の先端はのこぎり状になっており、その切っ先は鈍い光を放っている。


「ほう。どういう風の吹き回しだよ」

 孔雀は唇の端をわずかに歪めつつも。

 左足を前に出して、その凶器を左手で拾った。


 ナイフは、軽かった。金属特有の重量感がまるでない。

 なるほど、そういうことか。


 孔雀は半身に構えて、左手を突き出すようにする。

「たとえ玩具だとしても、俺はこのナイフで人体を殺傷できるんだぜ」

 彼はそう土竜ではなく、ナイフに向かって、念じるように言った。


 だまし討ちのつもりかもしれないが、これで元の木阿弥だ。

 大鏡の能力で、本物になった。

 おもちゃのナイフを渡すなんて、ずるいことを考えたものだ。


「右手を怪我しているな、藤原家の者よ」

「はっ?」

 不意の牽制に、孔雀はたじろいだ。

 図星だった。

 思わず、こぶしを握ってしまう。


「患部は、右手の、中指だな」

 淡々と、土竜は言い当てていく。

 孔雀は下唇を噛んで、耐えるしかなかった。


「納得できぬ、といった表情だな。オレの推理を聞きたいか、藤原家の者よ」

 孔雀は内心で舌を鳴らしつつも、

「ああ。ぜひ聞かせてくれよ」

「うむ。まずナイフを拾うときの所作が不自然だった」

 土竜はそう解説を始めた。

「ナイフを拾う際、左足を前に出したのは、おそらく無意識だろう。右利きの人間であれば、ほとんどの者がそうするからな。だが……」


 孔雀は相手の弁舌を聞き流し、ふと悪知恵を働かせた。

(今ここでナイフを投げつけたら、案外簡単に倒せるのではないかな?)


「藤原家の者は右手を使わなかった。それだけじゃない」

 土竜は得意げに話す。


 それもそのはずだ。

 相手はおもちゃのナイフを渡したと、勘違いしているのだから。


 孔雀はダーツの要領で、手首だけを動かして、のこぎり刃を投擲した。

 利き手ではなくても、使用するのは刃物だ。

 矢のように、突き刺さるはずである。


 だが。


「左手を前に突き出して半身に身構えていたが、その体勢では右手が使えない。だから怪我を疑ったのだ」


 ダメージを受けたのは、土竜ではなかった。


「怪我を中指に限定できたのは、握りこぶしを作るときの様子から察しがついた。さて」


 南土扇によって土竜が作り上げた、土人形だった。

 それは黒い布で覆われているだけの、粗悪品だった。


「必要ない手首は折ってしまおうか」


 ごきり、と。

 右手首の関節が外れる音を聞いてようやく、孔雀は自分の立場を理解した。


 次元が、違いすぎる!

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