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四つの扇  作者: オリンポス
6章:竜驤虎視の南家と北家!!!!!!
91/101

91.藤原家vs南家(起)

 その学校には重機類が立ち並んでいた。


 校門には【改築予定】との表記がなされており。

 ショベルカーの掘削部分が学び舎に風穴を開けていた。


 校門から校舎へと続く前庭はブルーシートで覆われていて。

 菅原道真の銅像だけが、ただ、ぽつねんとたたずんでいるだけだ。


 天変地異に見舞われたグラウンドにも、その重機類は侵入していて。

 地盤の調査と埋め立て工事とが進められているところであった。




「お前がうちの典嗣を誘拐した犯人か?」

 孔雀はそう低い声で言った。

 相手は全身を黒いマントのようなもので包んでいる。


「ふむ、藤原家のお歴々か。四鏡は用意しているか?」

 黒装束の不気味な男は、質問には答えずに、そう訊いた。

 声までくぐもっているせいで、余計に謎めいて感じられた。


「そんなことはどうでもいい。典嗣は無事か!」

 闇に溶け込むスーツ姿で、道草は身を乗り出す。

 いつも冷静に振る舞っていたせいで、すこしぎこちない挙措動作になってしまった。


「典嗣とはこれのことか……」

 黒い男はそう重機の陰から1人の少年を引っ張り出した。

 気を失っているのか、その少年は完全に脱力していた。

 彼はその少年をぽいっと放り投げた。

 あまりにも華奢な矮躯が、グラウンドの地面に叩きつけられて、すこし跳ねた。


「安心しろ。オレは闘争以外に興味はない」

 そう言って黒い男は背中を向けた。

 介抱の時間を与えているのだろう。

 フェアといえばフェアなのだが、こうなってしまうと相手の企図がまったく見えてこない。


「どういうつもりだ!」

 孔雀はそう相手の後ろ姿に向かって、怒鳴った。

 道草と美沙は、典嗣の手当てをしている。

「お前の目的はいったいなんだ?」


「血沸き肉躍る闘争。それによる羽柴家のますますの繁栄だ」

 孔雀は返答に窮してしまった。

 なんだその、気持ち悪い回答は。

「ええと、まあ、なんだ」

 それでも話を続ける孔雀。

「それなら羽柴家だけで、勝手にやっていればいいだろ!」


河山帯礪かざんたいえい条約」

 黒い男はそう言った。

「東家と西家は、東西不可侵条約を結んでいるんだが」

 その男は無防備に背中をさらしたまま、続ける。

「オレはそんな脆弱なことはしたくない。闘争のない世界など不条理だ」

 ふふふ……。不気味な男は、そう不敵に笑う。

「だからオレは一時的に北家と手を組み、ヤツらを倒すことに決めたのだ」

「だったら東家と西家だけ倒せばいいじゃないか。なんで藤原家おれたちまで標的にするんだ?」

「藤原家の者は、軟弱な東家と西家に肩入れをしているそうじゃないか。ならば今のうちに反乱因子をつんでおくのも、また一興」


 そう彼は振り返った。

 黒いポンチョを翻して。


「オレの名前は羽柴土竜。お前はなんという名だ?」

「藤原孔雀だ」

「ふむ、あしたには忘れる名だ」

「ふざけろ」

 こうして。

 宵闇に2体の獣が解き放たれたのである。

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