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四つの扇  作者: オリンポス
5章:背徳と欺瞞の西家!!!!!
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87.羽柴灯火vs藤原孔雀⑦

「いつからだよ……」

 孔雀は肩を小刻みに揺らしながら、叫んだ。

「いつから俺をはめるプランを練っていたんだ!」

 その全身は、すすでうす汚れていた。

 孔雀は鋭い眼光を、対戦相手に投げかける。


「知るかよ、そんなこと」

 灯火はそう鼻を鳴らして女子大生を見やった。

 どうやらこの作戦を発案したのは、彼ではないらしい。

「お前なあ、説明が雑すぎるんだよ。あばら家の中に躍り込んで火ィつければ爆発するからって、なんの説明にもなってねえぞ!」


「うるさいわねえ! 時間がなかったんだから仕方ないでしょ。敗走してきたくせに偉そうなこと言わないでよ」

 そう女子大生――羽柴虚空は。

 よく手入れされたロングヘアに手を添えて反駁する。

風探知ブリーズサーチャーで戦況をうかがって、あんたが下山してくるのをずっと待ってたんだからね」

「ああ、はいはい。そうですか……」


「みじめに逃げ帰ってきて、馬鹿みたい。あのときの大言壮語はなんだったの?」

 今度は藤原美沙が毒づいた。

 その目には軽蔑の色が宿っている。

「なんだとこの野郎。お前とはいずれ決着をつけてやるからな」

「あんまり言ってると、閻魔えんま様に舌を抜かれちゃうよ」

「お前こそな。あんまり調子に乗ってると俺様にド肝を抜かれちまうぞ」

「大山鳴動してねずみ一匹。なんて結果にならないことを祈ってるわ」

「ふん。なにを言ってるのかわからねえけど腹は立つな!」


「おい、話を聞け!」

 孔雀はいらいらと腕を振り回した。

 羽柴灯火はいったい何者だ。助けに来たのは仲間じゃないのか。

 そんな疑問を抱きつつ、訊く。

「この作戦を考えたのは、だれなんだ?」


「ワシじゃよ」

 即、返答があった。

 白内障の老人だった。

 白い目をした彼は、アゴひげをなでながら、

「あばら家があることは事前の調べでわかっていたからのう。それを活用させてもらったわい」

「粉塵爆発か……」

「そうじゃ」

「えげつねぇじいさんだ」

「まだまだ若い者には負けんよ」


「なあなあ、ふんじん爆発ってなんだ?」

 灯火が話に割って入った。

 それもかなりきわどいタイミングで。

「あのねえ……」

 空気を読みなさいよ。そうため息をこぼす虚空。

「まあまあ、ここは俺が」

 そう助け舟を入れたのは、孔雀と同じくらいの年齢をした青年だった。

 短く刈られたくせっ毛の茶髪に。

 攻撃的に釣り上がった目元が特徴だ。


「いいか、灯火。粉塵爆発って言うのはな」

 富士宮正二は、噛んで含めるように説明を始める。

「可燃性の粉塵が空気中に漂っている状態で、発火源を近付けると、爆発的に燃焼するんだが、この現象のことを言うんだ。ガソリンが気化したところに火を近づけるのをイメージしてもらうとわかりやすいだろうか。これは主に室内で起こりやすく、『酸素、粉塵、火』この3つの要素が条件となるんだ」


「おいおい、理屈はどーでもいいんだよ」

 孔雀はそう言って、床に溜まっている白い粉を蹴り飛ばした。

 白く濁ったその視界に、実父の姿をとらえ、ねめつける。

「俺をどうするつもりだよ。俺は帰らねーぞ」

 彼はそう歯をむき出して、再び床板を踏み鳴らした。

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