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四つの扇  作者: オリンポス
5章:背徳と欺瞞の西家!!!!!
85/101

85.羽柴灯火vs藤原孔雀⑤

「なあ、知ってるか」

 とぐろを巻くようにしてアスファルトに突っ伏す孔雀。

 彼は羽柴灯火に対し、二枚舌をちらつかせた。

「鏡の前でポジティブな言葉を投げかけると、それが投影されて自分に返ってくるんだぜ」


「それがどうした」

 灯火はそう殺人者の頭を踏みつけた。

 力の加減しだいでは、頭蓋骨など簡単に割れてしまうかもしれない。


「合わせ鏡にすると、その効果はより早くなる。三面鏡の前で同じことをすると、3倍のスピードで効果が現れるらしい」

 そのプレッシャーも多分にあってか、孔雀の説明は要領を得ない。

 もともと気の長いほうではない灯火はイライラし。

 ふん、と指先の力を強めた。


「わかった、わかった。結論を話す」

 あわてて身体をばたつかせ、孔雀は言った。

「つまり俺に対する攻撃は、全部お前にも跳ね返ってくるんだよ」

 そう不利な体勢から弁明する。

「だからお前のおはこである炎熱だけは、俺には通用しなかった」

 言っていることは支離滅裂だが。

「たとえお前の技がお前に跳ね返ったって、蛙の面に水だろうからな」

 それでも虚言に気付けない者は存在する。

 羽柴灯火だ。


「攻撃が跳ね返ってくるだと!?」

「ああ、そうだ」

 頭の上にのしかかる圧力が弱まるのを敏感に察して。

 藤原孔雀は起き上がった。

 彼は後頭部の汚れを手で払いながら、

「なあ、腹部に焼けるような痛みを感じないか?」

 そう騙りを働く。


「言われてみれば……」

 羽柴灯火は大した自覚症状もないまま。

 へそのあたりに手のひらを持って行った。

 と、次の瞬間。

「っぎゃあああ!!!!」

 絶叫した。


 麻酔が切れた患者のように、なんの前触れもなく。


「さあ、ここからどう戦う?」

 そう拳を固めて、孔雀は腕を振り上げる。

「ちくしょう! どうすればいい……」

 そうほぞを固めて、灯火は歯を食いしばる。

 内またになった両足が痙攣を始めていた。


 ばきぃ。

 孔雀の拳骨が、灯火のほお骨をとらえた。

 しかし、灯火は反撃をしない。否――出来ない。


 下腹部を襲う、強烈な刺激が。

 それすらも許してくれなかった。


 ばきぃ。

 ごきぃ、と。

 孔雀は一気呵成に畳みかける。


 対戦相手の顔面が、風船のようにふくれていく。


「これでとどめだ」

 そう足を引いて。

 旋回するように、孔雀は蹴った。


 しかし、当たらない。

 羽柴灯火が背を向けて、逃走したからである。


「逃がすかよ」

 孔雀はそう狩猟者のごとき、どう猛な笑みを浮かべた。

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