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四つの扇  作者: オリンポス
5章:背徳と欺瞞の西家!!!!!
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82.羽柴灯火vs藤原孔雀②

 "殺すつもりで来た"だと?


 視界がくらみ、意識が暗転しそうになる。

 孔雀の荒い息遣いがうっとうしいのだろうか。

 羽柴灯火は彼の真向かいへと、飛びずさった。


 脳のシグナルが、大音量でアラームを鳴らしている。


「藤原孔雀。お前、家に帰ったほうがいいぜ」

 灯火はそう頭に手を当てた。

 目を固くつむり、険しい表情を見せる。

 そこが痛むのだろうか。

 彼は髪の毛をぐしゃぐしゃに掻き乱した。

「親御さんも心配してるはずだ」


「心配だと?」

 孔雀はハンッと小さく吐き捨てる。

「くだらねえ……」

 ぼそりと唇を動かした。


「はっ?」

「くだらねえって、そう言ってんだよ!」

 歯をむき出して、絶叫する。

 そのことについてはいつも考えていたのだ。

 赤の他人にとやかく言われる筋合いはない。


「くだらねえじゃねえよ。心配してくれる家族がいるだけマシだろーが!」

 どこの馬の骨ともわからないやつが、なぜかそう熱弁し始めた。

 "心配してくれる家族がいるだけマシ"ってことは、親に勘当でもされたのだろうか。

 こちらはそれどころではないというのに。


「お前には関係ねーだろ。だれだよ、お前は」

「俺は羽柴灯火だ」

「話しにならねえよ」

 冷笑し。

 孔雀はそっと、骨折した指に熱い息を吹きかけた。「帰れ」

「帰らねえ」

「なんで」

「頼まれたんだよ。お前の親父に」


 その言葉を理解するのに、数秒、かかった。


「はああっ!?」

 生唾が気管に入ったのか。

 うがいをしているような、濁った声になった。

「ふざけんなよ」

 そう羽柴灯火に詰め寄る。

「なんで今更。俺になんの用だよ!」


「知るかよ。会って話せ」

「会って話すもクソも」

 そう灯火の厚い胸板をつかんで、揺さぶった。

「会いたくねえんだよ!」


「だったら……」

 灯火は下を向いた。ようやくあきらめたようだ。

 ふう、と。孔雀は手を離す。

「力づくでも連れ帰るまでだ!」

 灯火は死角から裏拳を放った。

 斜め上に向かう直線軌道。


 拳骨が、空を裂いた。

 空振り。


 孔雀は無意識のうちに、身を引いていたのだ。

 その眼前を、拳で固めたハンマーが横切った。


「ふッ!」

 腰を捻る。遅れて拳がついてくる。

 左ストレート。

 骨折をしていない、利き腕じゃないほうでの拳打。

 それが灯火の腹部に、深く、喰い込んだ。


「ゲエッ」

 カエルのように、鳴いて。

 灯火は片膝をついた。


 鍛えてはいても、がら空きの。

 それも脱力状態の腹筋は。

 もろく、簡単に打ち抜かれてしまった。

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