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四つの扇  作者: オリンポス
5章:背徳と欺瞞の西家!!!!!
81/101

81.羽柴灯火vs藤原孔雀①

 頭の奥がじんとしびれる。

 藤原孔雀はそれをどこか他人事のように感じ、冷たい夜風に目を細めた。

 軽くなったウイスキーボトルを持つ手が熱い。


「ふぅー」

 そう実りの多い果樹に向けて、白い息を吐く。

 じめっとした夏の暑さは昼頃までで、日が暮れると急激に気温が下がった。

 孔雀は木の幹にもたれかかって、上気した顔を上に向ける。

 小さな星々が、暗い夜空をじゅうたん爆撃するように広がっていた。


 ざっざっざと、流れるように疾走する足音が、遠くから聞こえてきた。

 澄んだ空気は音の波を明瞭に響かせる。

 孔雀はだるそうに身体を起こした。またもや警察の検問が始まるのか? そう身構える。


 下方から、明かりが見えてきた。

 その光は細く伸びる円筒形ではなく、ゆらゆらと揺れる炎に見えた。

 対象が近付くにつれて、輪郭線がぼんやりと浮かび上がってくる。

 性別は不明だが、カーブミラーの行列に対しても、意に介した様子はない。


「おい、お前はだれだッ!」

 まだ幼さの残る男の声が、孔雀を捉えた。

 木々の間から、葉っぱのこすれる音が鳴る。

 ぼんやりとしたシルエットは、煌々と照る光源を投げ捨てて、

「俺は、羽柴灯火だッ!!!!」

 そう宣言した。


 もうお互いが視認できる距離にいた。


「藤原孔雀だ」

 それがどうした。名乗る必要がどこにある。

 そう付け加えようとした矢先、男は不気味な笑い声を上げた。

「どうした?」


「くっくっく……」

 引きつるような笑い声を発し、相手は。

 地面を、蹴った。

 孔雀に向かって、急接近する。


 なんなんだ、コイツは。

 混乱する頭をフル稼働させ、迎撃態勢を取る孔雀。

 彼は何者だろう――酔っ払いだろうか。暴漢だろうか。


 男は重心を落とし、一気に距離を詰めてきた。

 速い。獣のごときスピードだ。

「らッ――」

 孔雀は体側たいそくから拳を出した。

 男の顔面が唸りを上げて、それを受け止める。


 ぐしゃり。


 骨の折れるたしかな感触が、固めた指先に伝わった。

 その衝撃が、痛みとして、再び知覚される。

 折れたのは、孔雀の中指だった。


「痛ってえな」

 打撃の瞬間。

 男は顔面ではなく、頭部を殴らせていたのだ。

「ぶっ殺すぞ!」

 指先を襲う理不尽な痛みに激高し。

 孔雀は吼えた。


「やれるもんなら、やってみろよ」

 しかし、男も負けてはいない。

「俺もお前を殺すつもりで来た」

 そう平坦な口調が、男の口から漏れた。

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