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四つの扇  作者: オリンポス
5章:背徳と欺瞞の西家!!!!!
72/101

72.大鏡の秘密(前編)

「羽柴家の皆さん。初めまして」

 藤原美紗はそうあいさつをした。

 どこか表情が堅苦しい。

「藤原美紗と申す者です」

 声が上ずって。

 手が汗ばんだ。

 スカートのすそを握って、ごまかす。


「おいおい。お見合いの席じゃねーんだし、そんなに緊張すんなよ」

 羽柴灯火はアイスコーヒーにミルクとシロップを入れて、かき混ぜた。白い液体が渦になって、氷の上を回る。

「今日は喫茶店で俺の退院祝いか?」


「違います」

 きつい口調で、美紗は言った。

 その声からは嫌悪感がにじみ出ている。

「私はあなた方に肩入れをするつもりはありませんから」


「まあまあ、お嬢ちゃん。そうカッカしなさんな」

 白いアゴひげを蓄えた老人は。

 禿頭をなでながら、ウィンナーコーヒーをすすった。

 唇にはホイップクリームが付着している。

「三十面鏡峠の犯人について、詳細を教えてくれる約束じゃろう。ぜひともご教授願いたいのう、大鏡とやらの能力について……」


「ええ、もちろんですよ」

 そう美紗は胸を張る。

「肩は入れませんが、本腰は入れるつもりですから」

 窓ガラスには結露が生じていた。

「相手を花粉と言わせましょう!」


「美紗。それを言うならギャフンだ。花粉じゃない」

 保険屋は恥ずかしそうに。

 姪を肘でつついた。


「まあまあ、ここ最近は冷え込みが激しいですから」

 エスプレッソコーヒーをゆっくりと飲んで。

「花粉症だとしても稲刈りが終わるまでの辛抱ですよ」

 富士宮正二は的外れな見解を述べた。

 ときどき話題のチョイスを間違えるのが、彼の悪い癖だ。


「閑話休題して、そろそろ本題に入りましょう?」

 羽柴虚空はそうジャケットの端をつまんで、身なりを整える。

「大鏡の能力って、いったいなんなの?」

 レモンティーをひと口含んで、受け皿に置いた。


「大鏡の能力は、相手の思い込みを体現する能力……」

 難しそうな顔をして、説明に困窮する美紗。

 事実として、大鏡の能力はややこしい。


 たとえば失ったはずの手足が痛む、幻肢痛(ファントムペイン)や。

 薬を飲んだと思い込ませることによって、病気を治療するプラシーボ効果などのように。

 脳の思い込みはすくなからず人体に影響を与えているが。

 大鏡の能力とは――これらの派生、強化版なのである。

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