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四つの扇  作者: オリンポス
5章:背徳と欺瞞の西家!!!!!
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66.羽柴虚空の過去②

 扇狩りという新たな政策を聞いた――東西南の家々は。

 それが実行されないにしても、危機を感じていた。

 北家の政治趣向が独裁に傾倒しつつあることを知ったからだ。

 このままでは本当に、三国ともが植民地にされかねない。


「よし。北家を除く三国で、同盟を組もう」

 そう提唱したのは。

 南家の当主――羽柴森太郎だった。

「烏合の衆のままでは、北家に勝てない。結束して力を合わせよう」

 こうして急場凌ぎだけで出来上がったのが、『ハンザツ同盟』。

 不安だから固まったというだけの、団結力皆無の同盟であった。


 そしてこの同盟は早くも綻びを生じることになる。


 羽柴家合同会談を終え。

 羽柴風香は足取りを重くしながら、家路に着いた。

 玄関の上がりかまち)には1枚の赤い紙が置いてある。


「なにかしら……」

 風香は文面を目で追った。

 次第に顔面が蒼白になっていく。

「まさか、そんな……虚空が」

 彼女は靴も脱がず、家に上がり込み。

 西風扇をつかむと、そのまま駆け出して行った。



 舗装もされていない山道を全速力で駆けたため。

 風香は息も絶え絶えの状態だった。

 ――それでも必死で叫ぶ。

「虚空を返して」

 声がかすれていた。

 口で呼吸をしていたため、のどが痛む。

「なにが目的なの? 大人の世界に子どもを巻き込まないでよッ!」


 密林に声が反響する。

 木立にいた小鳥が、びっくりして飛び去った。

 枯れ葉を踏む音ともに、2つの影が伸びてきた。

 ――羽柴虚空と。

 ――羽柴冠水だ。


「お母さん、ごめんね。私は大丈夫だから、心配しないでね」

 手首を後ろで縛られた虚空が。

 申し訳なさそうに笑った。作り笑いだとすぐにわかる。


「羽柴家合同会談が破談に終わって意気消沈しているところを、この娘に襲われたんだ。巻き込んだつもりはない」

 風香のもとへ歩み寄ろうとする虚空を。

 北家の当主――羽柴冠水は、縄を引っ張ることでいさめた。

 手首に鋭い痛みが走り、虚空の顔がすこし引きつった。

 それを受けて、風香は奥歯を強く噛み締める。


「目的はなにかと問うたな? 東炎扇もしくは南土扇を強奪し、西風扇と合わせて、俺に献上してほしい!」

 カサカサと草木が揺れた。身体に厳しい風が吹く。

 知らず知らずのうちに冷えてきたようだ。

 冷気が情け容赦なく素肌を突き刺してくる。


「えっ?」

 吐いた息が白く濁った。

 山林とはいえ、気温の低下が著しい。


「え、じゃない。娘と扇は交換条件だ。もたもたしていると娘の命はないぞ」

 危険を察知した動物が、蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。

「待って!」

 近付いて娘の安否を確かめようとしたその矢先。

 槍のように鋭い切っ先が地面から出現し。

 風香を強襲した。


 それはのど元を刺し貫かんと迫ってくる。


 羽柴風香は身を引いてかわしたが。

 次の瞬間にはもう、羽柴冠水も羽柴虚空も姿を消していた。


 舌打ちをして。

 忌々しく障害物をにらみつける風香。

 地面から出現した槍のような物体は。

 巨大な氷柱であった。


 風香は額に太い血管を浮かべ。

 再度大きく舌打ちをした。

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