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四つの扇  作者: オリンポス
5章:背徳と欺瞞の西家!!!!!
65/101

65.羽柴虚空の過去①

 羽柴虚空は父親が嫌いだった。

 彼は仕事も育児も放棄した無職のフリーターで。

 婿養子のため、西風扇を扱うことも出来ないでくの坊。

(四羽扇は羽柴家の血筋の者しか、扱うことが出来ない)

 唯一できることといえば、威張ることと、金銭を無駄に浪費することくらいだった。


 そしてそのしわ寄せは。

 すべて母親の、羽柴風香にぶつけられた。

「家計が苦しいのは、お前の稼ぎが少ないからだろうがッ!!!!」

 飲んだくれて帰宅した夫には、そうなじられ。

「あんな無頼なやからと結婚するなんて、お前は西家の恥さらしだッ!!!!」

 夫の外出中には、実父と実母にそう責められる。


 風香が影で泣いている姿を、虚空はなんども目撃した。

 なんとかしてお母さんを助けてあげたい。

 いつしかそれが虚空の生きる指針になっていた。


 羽柴虚空が中学生になったころ。

 羽柴風香をある試練が襲った。

 羽柴家の内乱である。

 幾度となく不毛な争いが続いては――なあなあで終結していた戦争であるが。

 それがまた再開されたのである。


 戦争の理由は――北家の圧政に対する南家の反乱。


 この時代の羽柴家は、最も勢力がある家系をトップとして祭り上げ。

 寡頭かとう政治を行わせることで均衡を保とうとしていた。

 しかし独裁的な政治は長くは続かない。

 そのことを熟知していた北家の当主は、羽柴家から扇を没収する『扇狩り』の実施を表明した。武力解除を強制することによって秩序の維持をはかるというのが、その政策が掲げるマニフェストだった。

 東家と西家が賛成する中――南家は『扇狩り』に激しく反対した。


「ひとつところに武力を集中されてしまっては、我々はあらがうことも許されず、食い扶持を稼ぐための奴隷にされてしまうだろう」

 これが南家の意見だった。

「スタンフォード監獄実験を知っているか? 一方は権力者として命令し(看守役)、もう一方は労働者として服従する(囚人役)という有名な実験だ。この実験の末路を知っているか? 権力者は暴走を始め、理性に歯止めが利かなくなってしまった。それ故に労働者は、ひどい仕打ちをたくさん受けた。

 わかるか?

『扇狩り』に賛成するということは、権力者と労働者を二分させることに他ならないんだ。そんなことをしたら権力者が暴走することは目に見えている。

 ――たしかに戦争の終結を望む気持ちは理解できる。しかし、原点に立ち戻って考えてみてほしい。自分の子どもが、北家の恐怖政治に怯えながら生活する姿を。同じ子を持つ親として、どうか考えてみてくれ」


 南家の熱弁が功を奏し。

 北家の『扇狩り政策』は白紙に戻された。

 そしてこれが――羽柴風香の悲劇の始まりとなる。


 北家が実力行使で、『扇狩り』を開始したのだ。

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