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四つの扇  作者: オリンポス
4章:臥薪嘗胆の藤原家、推参!!!!
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63.富士宮正一の交渉

 サイフォンから香り立つ湯気の風味が、鼻孔をくすぐり。

 ジャズの陽気なメロディが、心臓を高鳴らせる。

 N総合病院の斜向かいにある珈琲店は、今日も盛況だった。


「富士宮正一様、本日はどのようなご用件でしょうか? 保険プランの見直しでしたら……」

 若い保険屋は黒いカバンから、タブレット端末を取り出した。

 スライドショーの要領で新しい計画書を説明していく。

「喜寿になられたということなので、こちらの保険にも同時に加入していただくと、より安心して、老後生活がお楽しみいただけますよ」


 富士宮正一は、画期的な電子媒体に目を向けた。

 しかし――

「余計なことはせんでよろしい」

 白い眼球を鋭く動かし、一蹴する。

 長く伸びたアゴひげが、口の動きに呼応して、わずかに揺れた。

「こちとら轍鮒てっぷの急を告げる事態なんじゃ。雑談に興じるいとまはない」

「さようでしたか。改めてお伺いしますが、ご用件というのはなんでしょうか?」


 ウエイターが盆を持って忙しく動き回っている。

 あくせくと働く姿を尻目に、正一は言葉を発した。


「ワシの知人が病気でのう。おそらく今日か明日あたりが峠じゃろう」

「それはご愁傷様です」

「おべんちゃらは結構。そんなことよりも――」

 正一は保険屋にお悔やみさえも言わせずに。

 こう切り返した。

「お主、能力者じゃろ?」


「えっ?」

 藤原道草は目を大きく見開いた。

 何度も目をしばたたかせ。

 しまいには、なんのことでしょうとうそぶいて見せた。


「もちろん何の根拠もなしに言っているのではない」

 老人は頬杖をついて。

 思案するような目つきで、推測を述べる。

「河川が増水し、その水がすべて凍るという未曽有みぞうの事件があったことは、お主の記憶にも新しいじゃろう? その事件にお主の親族が関与していたことも調査でわかっておる。まあ氷漬けにされた一介の被害者として、関わっただけじゃがな」

「なにが言いたいんですか? あんな忌々しい事件など、早く忘れ去ってしまいたいのに……」

 苦虫をかみつぶしたような表情で。

 保険屋は髪の毛をがりがりと引っ掻いた。

「後遺症じゃよ。氷漬けにされたのに、被害者連中には一様にしてそれが見受けられない。それはなんでじゃろうか?」

「存じ上げません。医療技術の進歩が幸いしたのではないでしょうか」

「さらに言及した方が良いか? お主はその事件が起きてから、羽柴家についてとやかく嗅ぎまわっておるようじゃのう。それはなんでじゃろうか?」


「もういい加減にしてください」

 道草が興奮して立ち上がると同時に。

 ウエイターは注文の品を運んできた。


 保険屋はもういちど、席に座り直し。

 チョコレートパフェを食べ始めた。


「そんな顔をするな。損な話をするつもりはない!」

 老人はホットコーヒーを音を立ててすする。

「ワシはハイビスカスの遺志を汲んでやりたいのじゃ。だから頼む。もしも藤原孔雀の奪還に成功したならば、羽柴家――狭く言えば東家と同盟を結んではくれぬか?」

富士宮正一のセリフ

「遺志を汲んでやりたいのじゃ」は、『遺志』で合ってます。

これは時系列順に話が進んでいるので、

友人が死にそうなんじゃというセリフが嘘になります。

この時点ではすでに槐は亡くなってます!


説明に至らぬ箇所があり、申し訳ありませんでした。

これからは更なる筆力向上を目指していきます!

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