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四つの扇  作者: オリンポス
1章:傲慢な西家との対決!
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6.東家の過去

「……とまあ、このような紆余曲折があったせいで、西風扇は手に入れられなかった。悪いな」

 日本家屋の一室で正座をしながら、灯火は事情を説明した。


「委細承知じゃ。事後処理は任せなさい。ところで灯火、怪我はなかったか?」

 老人は灯火の服がところどころ焼けているのをみて、心配そうに訊いた。


「ああ、平気だ。しかも自分が出した炎だからな。焼け死ぬ心配はなかったさ」


「よかったのう」

 老人は心から安堵し、そして言った。

「なあ灯火、ワシからもひとつ謝りたいことがあるんじゃが……」


 しんみりとした空気を感じ取った灯火は、


「ん? なんのことかは知らねーが、謝らなくていいよ」


 と、あえてふざけた調子で言った。


「つれないことを言うでない。灯火の両親のことなんじゃが……」


「今さらその話はしなくていいよ。お父さんとお母さんが死んだのは、じいちゃんのせいじゃねーから。家督争いなんていうくだらねー因習に縛りつけられた、羽柴家が悪いんだ」


「しかし、ワシが見殺しにしたも同然なんじゃ。灯火の両親に、『北家には手をだすな』と言ったのも、じつは自己保身のためじゃった。情けない、じつの息子すら守ってやれなかったんじゃからな」


 灯火の父親は。

 老人の息子だった。


「だからそれは……」


「こんなワシをまだじいちゃんと呼んでくれるなら、頼むから北家には関わらないでくれ。もうだれも失いたくないんじゃ」


「でも家督争いがどうのこうのって、あるんじゃないのか?」


「幸か不幸か、北家は家督争いには消極的なんじゃ。こちらがちょっかいをださなければ、まず安心なはずじゃ」


「ふーん、わかった。気をつけるよ」


「北家は関わらなければそれでよいが、問題は南家じゃな。戦闘狂のあやつらがこれからどう動くのか、わからんからの」

 老人はよっこらせと、腰を浮かせてから、

「これからは学校に行くときも東炎扇を持っていきなさい」


「ちょっと待ってくれ! じいちゃん」


 和室からでようとする老人を、灯火は引き止めた。


「南家ってなんだ? 強いのか?」


 灯火はさも嬉しそうに、


「強いんだったら、バトリてーな。どうやったらそいつと戦えるんだ?」


「バカモノ。いい加減に、用行舎蔵(ようこうしゃぞう)をわきまえなさい」


「固いこと言わないで教えてくれよ。頼むよ、じいちゃん」


「あやつらは奇襲を得意とする。くれぐれも油断はするでないぞ」


 老人はそう言うと、もう話すことはないとばかりに、ぴしゃりと障子戸を閉めた。

 西家との試合は辞退させておくべきだったと、老人はすこし後悔していた。


 このままでは灯火は東炎扇の魔力に取り憑かれてしまうからだ。

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