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四つの扇  作者: オリンポス
4章:臥薪嘗胆の藤原家、推参!!!!
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59.悪化する炎熱病

 羽柴灯火のお見舞いに来た、富士宮正二は。

 病室の窓から差し込む朝日に目を細め。

 同伴していた富士宮正一は。

 反対に大きく目を見開いた。


 昨晩の遅くに、羽柴槐から富士宮正一に連絡があった。

 灯火が入院したから、見舞いに行ってやってくれとの内容だ。

 槐は忙しくて手が離せない状況らしい。

 そのため正一は、孫の正二を連れて病院へ来たのだった。


「炎熱病の末期状態か。だいぶ進行しているのう」

 正一はアゴひげに手を当てて。

 唸るように言った。

「炎熱病!? なんじゃそりゃあ」

 正二は唾を飛ばして叫んだ。

 目の前の奇怪な光景に息をのむ。


 灯火の手足――手首や足首までもが――石炭のように黒ずんでいた。

 顔は青ざめて弱弱しく、生気が感じられず。

 黒いシミは容赦なく身体中を蝕んでいるようだった。


「要は内的エネルギーを使いすぎて、それが暴走してしまい、熱のコントロールが出来なくなってしまったんじゃ」

「どうにかならないのかよ、じいちゃん!」

 苦悶の表情を浮かべる羽柴灯火を見て。

 富士宮正二は胸が締め付けられる気分を覚えた。

「なんとかしてやりてーんだが……」


「そうじゃな――」

 富士宮正一はニカッと歯をむき出した。

 随所に欠けた部分のある歯並びは、鍵盤のように見えた。

「ハイビスカスの孫の手を握れるか? 正二」

「はぁ? 今はそんなことをしている場合じゃ……」

「握れるかと訊いておるんじゃ!」

 強めの口調だった。

 正二は、患者の手を確認する。


 黒ずんだ手足には――亀裂が入って、流血している個所もあった。


「思ったよりもグロいな」

「早くしないと、取り返しがつかなくなるぞ」

 嫌味っぽく老人は言う。

 実際その言葉通りで。

 炎熱病は――手首から肘までをも真っ黒に染めていた。

「その黒いのが心臓部に達したら、一巻の終わりじゃ。内臓は焼き尽くされて死に至るからのう」

「じゃあ、どうすれば」

「うろたえるな。ハイビスカスの孫の手を握る覚悟はあるのか!」

「またそれかよ……。マジで意味がわかんねー」

「では、見殺しにするという判断で良いんじゃな?」

「だからなんでそうなるんだよ」

 話がかみ合わないもどかしさに。

 正二は渋面を作ってみせた。

 そして――

「わかった。よくわかんねーけど、握ってやるよ!」

 手を握った。


 それがどれほどの苦痛を伴うのか。

 このときの正二は、まったく予想していなかったのである。


「ぎゃあああああッッッ!!!!」

 弾丸のように鋭い悲鳴が。

 狭い病室にとどろいた。

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