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四つの扇  作者: オリンポス
4章:臥薪嘗胆の藤原家、推参!!!!
58/101

58.三十面鏡峠の決着

 月が夜空に浮かんでいた。

 ちらちらと雲間を挟んでは、その姿をあらわにする。

 血で汚れたアスファルトは昼の熱気がこもっていて温かいが。

 ときおり通り抜ける夜風は容赦なく体温を奪い去っていった。


「油断したな、くそじじい」

 にやりと歯を見せて藤原孔雀は言った。

「この窮地をどう切り抜けるつもりだ?」


「どう切り抜けるか、じゃと? これで追い詰めたつもりか若造。片腹痛いわッ!!」

 羽柴槐は無理に強がってみせた。

 のどに力が入らず。

 息が漏れて弱弱しい声音になった。

 倒れ伏した状態で発声したため。

 左腕が尋常ならざる悲鳴を上げる。


「調子こいてんじゃねーよッ!!!!」

 孔雀は頭に血が上り。

 老人の頭を何度もなんども繰り返し踏みつけた。

 アスファルトにこすれて槐の顔は擦過傷にまみれ。

 無数の嗚咽が闇夜に紛れた。


「はあ、はあ……。こ、これでも、さっきみたいな妄言が吐けるのかよ」

 孔雀の額からは汗がしたたり落ち。

 灰色の地面と同化した。


「ふう、なんとか間に合うたわい」

 槐はよろよろと立ち上がった。

 老人の痛々しい顔面に、孔雀が息をのむのがわかった。


「間に合ったってなんのことだよ」

「ワシには答える必然性がないじゃろ。自分で考えるんじゃな」

「だったらお前の身体に訊いてやるよ」

 老人に襲い掛かろうと、足に力を入れる孔雀。

 しかし“なにか”につまずいて転んでしまった。


 地面に手をついた。

 四つん這いの姿勢になる。

 その“なにか”はマグマのように熱かった。

 手首まで埋まっていく。


「熱ッ!!!! な、なんだこれはッ!!!!」

「見てわからぬか?」

 槐はなるべく腕に振動を与えないように。

 努めて慎重に下山を開始する。

 そして振り向き様に“なにか”の答えを教えた。

「それは溶解したアスファルトじゃよ」


 じつのところ――逆転の一手はすでに打ってあった。

 しかし時限爆弾式のそれは、起爆までにどれくらいかかるかがわからない。


 そのため槐は。

 内的エネルギーでアスファルトを熱して、溶かしたのだ。

 地面に倒れ伏したときから、第2の策は始動していた。


「なんじゃこりゃ。くそじじい、テメーはもしかして……」

「ああ、ご名答じゃよ。ワシもお主と同じ能力者じゃ」

 孔雀は難儀して溶解したアスファルトから足を引っ張りだす。

 それの半径は意外と小さく、水たまり程度しかなかった。

 おかげですぐに脱出することが出来た。

 大鏡の能力を駆使したため、火傷ケロイドの心配はない。


「おい待てよ、くそじじいッ!!!!」

 孔雀は怒り心頭の様子で。

 髪を逆立てて槐を追った。


 しかし身体が思うように動かない。


 筋肉が弛緩する。

 大小便が勝手に流れ出る。

「なん、で?」

 思考することも出来ず、孔雀は昏睡してしまった。




 ――藤原孔雀が失禁し、昏倒した理由は。

 軽い脳溢血のういっけつのせいである。


 戦闘の最中。

 槐は裏拳を叩き込んだ。

 あれはただの裏拳ではなく、燃焼型猛打掌バーニングストライクだったのだ。

 こめかみに当てたのは脳に近いから。

 そこに燃焼型猛打掌バーニングストライクを打ち込むことによって、高血圧を引き起こし今回の事態を招いたのだ。

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