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四つの扇  作者: オリンポス
4章:臥薪嘗胆の藤原家、推参!!!!
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53.高熱発症

 面会の時間も終了し、消灯時刻になった。

 病室の仕切り越しからは、寝息が聞こえている。

 俺も早く寝なきゃな。

 羽柴灯火はそう思って固く目をつむった。

 しかしどうしても――藤原典嗣との戦闘が。

 頭にちらついて眠ることが出来ない。

 低く唸って、寝返りを打ってみる。気分が落ち着かない。

 どうやらただ眠れないだけではないようだ。

 身体が火照っているような、発熱時特有の不快感もある。

 灯火は枕元に置いてある解熱鎮痛剤カロナールを服用した。医者が、もしものためにと処方してくれたものだった。


 その晩は幾度となくうなされ、その都度目が覚めた。

 全身からは大量の汗が噴き出しており、水浴びをしたようにシャツやズボンが濡れていた。

 異常なのどの渇きで視界が揺れ、せきをする度に頭や関節の節々が痛む。

 灯火はベッドから身体を起こし、スポーツドリンクを口に運んだ。本来ならごくごく飲めるそれも、今の状態では口に含むのがやっとだった。


 朝日が昇り病食が運ばれてくるころには、灯火はすっかり憔悴しきっていた。

 ご飯、味噌汁、納豆、漬け物、とヘルシーな料理が並んでいたが、どれを見ても食欲が湧かない。

 彼は昨夜の病状を看護師に伝えた。そして前もって測っておいた体温計を見せる。

 白衣をまとった女性は、眉根を寄せて考えたあと。

「診察室までお越しになれますか?」と言った。


「うーん。私もあらゆる症状を検討してみたのですが、やはりただの風邪のようです。

 カロナールでは効かないようなので、点滴を打っておきますね」

 コンピュータを操作しながら、紙にボールペンを走らせる老年男性。

 頭部には薄い白髪が乗っていて、赤い顔には深いしわが刻まれていた。

「念のため、薬の量も増やしておきます。今は具合が悪いとかはないですか?」

「身体が焼かれているように熱いです」

 灯火は回転椅子から立ち上がると、「ほら触ってみてください」

「うむ、たしかに熱いね。おそらくよく眠れなくて、交感神経が高ぶっているんでしょう。

 なーに、点滴を打てば一発で治りますよ」

 老年男性はそう太鼓判を押すと、くるりと背中を向けてしまった。

 もうこれ以上話すことはないと言わんばかりだった。

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