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四つの扇  作者: オリンポス
4章:臥薪嘗胆の藤原家、推参!!!!
51/101

51.小池卓也の狙い

 一方の男の子集団は。

 山田をひとまず横にして、今度は橋場ハルキの視診に移っていた。

 彼の身体はシャワーのような勢いで発汗しており。

 すでに尋常じゃない量が放出されていた。


「大丈夫ですか?」

 そう言って、ハルキの脇の下に腕を通す。

 持ち上げて、彼の上体を起こそうとしたが。

「ぎゃあああッッッ!!!!」

 ハルキは絶叫した。

 男の子は、彼を元通りに寝かせると。

 頭から順番に足先へ向かって、グッグッと指圧するように触っていった。

 すると胸の辺りを触診したところで、彼は再び悲痛なうめき声を発した。


「胸骨、もしくは内臓がやられている可能性が考えられる。

 この人の場合は、救急車の到着を待ってから対処しよう。なるべく動かさないほうが良い」

 小池はそのように判断を下し。

 呆然となっている後ろの連中に声をかけた。


「次いくぞっ!」

 少年は流れるような動作で。

 血の池に突っ伏している藤原典嗣を俯瞰し始めた。


「なあ、小池」

 烏合の衆から質問が飛び出した。

「なんでお前は、そんなに冷静なんだ?」


 小池は検分を済ませると。

「応急処置みたいなのは、羽柴土竜っていうオジサンが教えてくれたんだ。なんとかっていううちわのことを秘密にする代わりにな」

「うちわって、なんのことだ?」

「それは言えねーよ、約束だからな。ただし学校に遅刻したとき、昼頃に見た、あの衝撃の光景は、今でも目に焼き付いてるぜ。隕石が降った後みたいにグラウンドに穴を開けたり、派手なバトルだったなー」

「なにを言ってるのか、わかんねーよ!」

「ああ、そうか? でも土竜っつーオッサンのおかげで、腕っぷしにも自信がついたんだぜ。何度か鍛えてもらってるしな」


 小池は骸骨のように、痩身な少年を診察し終えると。

「重篤患者だ。おそらく輸血が必要になるだろーな」

「なあ、小池」

「なんだ?」

「もしも、あの女子が言ってた話が本当だったら、典嗣ってヤバいやつなんじゃねーのか?」

「そうだな。このままじゃ、うちのクラス……いや学校の治安が崩壊するかもしれねー。早いところケリをつけねーとな」

「でもなぁ、小池。校内で1番腕の立つハルキさんでも勝てなかった相手だぜ。いくらお前でも……」

「たしかに徒手では勝てないかもしれねーけどなぁ」

 救急車のサイレンが、住宅街をこだまして近づいて来た。

 それに負けない大きな声で、小池は言い放つ。

獲物ブキを使ったらわからねーぜ?

 山田もハルキさんも、邪魔者は消えたんだ。これからはルール無用の無法地帯ってわけだ」

「いずれ倒すつもりなら、なんで助けるんだ?」

 ドップラー効果の影響で、サイレンの音が妙に甲高く聞こえる。

 その不快感を払しょくするがごとく、小池は怒鳴り気味に言うのだった。

「補導されたときにも、今回のような人助けをしておけば、すこしは刑罰が軽くなるんじゃねーのか?

 それに学校側だって、内申点をプラスに評価してくれるかもしれねーしさ」

 半月を描くように口を開けて。

 小池は狡猾に微笑んだ。

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