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四つの扇  作者: オリンポス
4章:臥薪嘗胆の藤原家、推参!!!!
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47.羽柴家vs藤原家⑤

「拳銃……いや、モデルガンかの?」

 藤原道草は一介の保険屋だ。

 密輸入の裏ルートがあるとは考えにくい。

 そう判断した槐は。

「まずは、その玩具おもちゃをしまいなさい。所詮はこけおどしじゃろう?」

 胸の前で服のたもとを合わせ、腕を組んだ。


「さあ、どうでしょうね?」

 道草は唇に、奇妙な笑みを浮かべると。

「撃発してみなければわかりません」

 そう引き金に指をかけた。


「異なことを言う若造じゃな」

 円卓のふちに引っ掛けた手を、強引に持ち上げる老人。

 垂直に立ち上がった卓袱台が、保険屋に向かって唸りを上げる。


 直後――心臓を震わせるほどの破裂音が、近くで、鳴った。


 中心部をらせん状にえぐられた円卓が、音もなく倒れると、うすく白煙を立ち上らせる銃口が、顔をのぞかせた。木屑が四散し、宙を泳いでいる。


「本物……じゃと? お主それをどうやって」

「大鏡の能力ですよ。いずれは自家薬籠中の物になります」

「大鏡? なんじゃそれは」

「お教えいたしかねます」

「それは厄介じゃのう。大鏡、か」

 火薬の臭いが鼻をつく。

 話し方から察するに、保険屋は大鏡を所持していないようだ。


「提案があります」

「なんじゃろうか」

「このまま為す術なく、眉間を撃ち抜かれたくなければ」

 藤原道草は、拳銃を握る手を震わせて言った。

「羽柴舳艫を抹殺してください。その者こそが、あの事件の主犯格なのですから」


 なんじゃと!

 思わず出かかった言葉を、咳払いでごまかす槐。

 どうしてその名前を知っている?

 お主はどこまで知っておる?

 詰問したくなる衝動をぐっとこらえ、

「それは無理じゃ」

 小さくかぶりを振った。


「なんでですか?」

「北家は羽柴家で最強の血族じゃ。そう易々と討伐を掲げていい相手ではない」

「でしょうね。もちろん先刻承知です。しかし、東家と藤原家が手を組めば、討てない相手ではない。あなたもそう思ったからこそ、我々に同盟をけしかけたんでしょう?」

「それはちと違うわい」

「ほう、どこが間違っているのですか?」

「ワシの余生もおそらく長くはないはずじゃ。いずれは灯火ともたもとを分かつときが来るじゃろう。そうなったときは、孫の力になってやってほしいんじゃよ」


「美談を濁すようで恐縮ですが」

 保険屋は再び撃鉄を起こし。

「このまま眉間を撃ち抜かれたいのですか?」

 そうトリガーに指を差し込む。


「構わぬよ」

 死にいく男は、堂々と言い放った。

 槐の眉間に、黒い点がひとつ、出来た。

 そこを起点にして赤黒い液体がこぼれ始める。

 刹那、屈強な肉体がカーペット上に転がった。


 巨大な破裂音が衝撃波となって。

 道草の耳膜にいつまでも残り続けた。

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