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四つの扇  作者: オリンポス
4章:臥薪嘗胆の藤原家、推参!!!!
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44.羽柴家vs藤原家②

 藤原典嗣の上段追い突きが、羽柴灯火の胸元をかすめた。

 典嗣は鼻の下を狙ったつもりだったが。

 身長差があったため、拳頭は人中じんちゅうよりも大きく下に逸れてしまったのだ。


 対する灯火は、勢いよくバックステップを決め。

 威力の軽減に成功していた。

 しかしそれは、相手が2撃目3撃目を繰り出すための。

 呼び水にしかならなかった。


 典嗣は素早く距離を詰めると。

 左足で思い切り踏み込んだ。

 膝を直角に曲げ、ひざまずくようにして。

 中段逆突きをぶちかます。


「ゲェフッ!!!!」

 典嗣の突きが、灯火の丹田を直撃した。

 吐き気とともに、意識が暗転する。

 ガクッと膝が落ち、視界が低くなった。


 するといきなり。

 目の前に子ども用の靴が出現した。

 目線を上げると、典嗣が片膝を抱え込んでいるのがうかがえた。

 それが弓矢のように飛んでくる。


 ガバッと――灯火はとっさに土下座をした。

 その頭上を、髪の毛を、突風がなぜた。


 空振り――。

 その影響でバランスを崩した典嗣に。

 灯火は肩から突っ込んだ。


「うわぁっ!!!!」

 目を白黒させながら、典嗣は倒れ込む。

 そのまま臀部でんぶを強く打った。


 少々混乱している典嗣の頭を。

 灯火は強引に押さえつけた。

 地面にめり込ませるつもりで。


「くっそ。離せ」

 じたばた暴れる典嗣とは裏腹に。

 灯火は早くも安堵の色を浮かべている。


「いいや。離さない」

「いいえ、離しなさい」


「アッ!?」


 怪訝な顔をして振り返る灯火。

 視線の先には藤原美沙がいた。

 彼女はハトを肩に乗せて、手鏡を真上にかざしている。


 西日を反射させるつもりだろうか。

 灯火は閃光弾と同じ用途だと判断し、目を細めた。


「さすがは羽柴家の、羽柴灯火。小学生を相手にムキになるところは大人げないと言わざるを得ないけど、それでも、その強さは折り紙つきね」


 冷や汗が灯火のほほを伝う。

 しかし彼は、ぬぐうことさえ出来ない。

 一瞬の油断が勝負を分かつからだ。


「なにが言いたい?」

 自然、余裕のない緊張した声音になる。

 対する美沙は、余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)といった面持ちで、髪の毛をいじっていた。


「たかが小学生ごときに手こずっている、俺への皮肉か?」


「いえいえ、とんでもないよ。むしろ対等に渡り合えていることに、ビックリマンシールを進呈したいくらいなんだから」


「対等もなにも、体格差やら年齢差やらでは俺のほうが上回っているんだ。互角以上に戦えて当然だろ?」


「それは違うわ。だって……」


 美沙がなにかを言い終える前に、典嗣の頭が、ぐぐぐっと動いた。

 先程までは完全に押さえつけていられたはずなのに。

 灯火は体重を乗せて抗うが、焼け石に水だった。

 なぜか彼のパワーが増している。


「だって典嗣は、能力全解放ドーピングしているんだから」

「えっ?」

「水鏡の能力って知ってる?」


 ふふっと、美沙がほほ笑むと。

 静かに風が吹いた。

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