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四つの扇  作者: オリンポス
4章:臥薪嘗胆の藤原家、推参!!!!
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43.羽柴家vs藤原家①

「俺はなにも、ガンジーのように生きろとは言わない。非暴力、不服従。そんなのはべつに望まないし、面従腹背も嫌いだ。だけど……」

 

 呼吸を整えて。

 ボーッと、眠くなるまぶたを擦り。

 意識とは関係なく、流れ出る鼻水をすすり。

 

 羽柴灯火は、厳然と断言する。

 

「今のお前は被害者じゃない。加害者だっ!」

 

 スポットライトを浴びるようにして。

 橋場ハルキと。

 山田和樹は。

 臙脂色の光で照らされていた。

 

 2人の顔には大粒の汗が浮かんでおり。

 尋常ではない様態を、適切に物語っているようだった。

 

「次から次へとしつこいわね。本当に今日はなんなの?」

 まるでマトリョーシカだ。

 倒しても倒しても、次々に敵が出現する。

 藤原美沙は怒りで肩を震わせた。

 

「本当にもう、典嗣に点滴を射ってあげたいのに……」

 もどかしくて、息が詰まりそうだ。

 

 パッ……と。

 藤原典嗣の細腕が、山田から離れた。

 身体の支えを失った山田は、膝から崩れるようにして倒れ込む。その表情からは生気が感じられなかった。

 

 激しくむせる山田を尻目に、美沙は訊く。

 

「あんただれ? 典嗣の知り合い?」

 

「典嗣がだれなのかは知らねーが、そこの骸骨少年の知り合いだよ」

 

 灯火はアゴの先を、典嗣に向けた。

 

「へー。これまたずいぶんと、(とう)が立った友人ね。お父さんと呼んでもいいかしら」

 

「悪いけど、今は軽口に付き合っている暇はないんだ。また今度にしてくれ」

 

 ゆっくり、ゆっくりと。

 灯火は典嗣に接近する。

 

 灯火の目には力強い、光が宿っていた。

 その双眸で、彼は激しく睨めつける。

 

「おい、骸骨少年。俺だ、羽柴灯火だ。

 テメーなあ、俺はたしかに『なんでもやってみれば良い』とは言ったけど、やって良いことと悪いことの区別くらいはつけろよ!

 何やってんだよ、お前はよおっ! 周囲からしてみれば、いじめッ子はお前の方じゃねーか」

 

 灯火は言いたい放題に、喚き散らす。

 風邪の影響か、頭がくらくらした。

 

「羽柴、灯火?」

 美沙は突然現れた男子高校生の言葉を反芻する。

 

 羽柴灯火。羽柴灯火。

 もしかして、東家の羽柴灯火のこと?

 

「あなた、もしかして、東家の羽柴灯火?」

 勢い込んで、美沙は尋ねる。

「ああ、そうだが?」

 美沙の全身が総毛立った。


 ようやく――ようやくこのときが来た。


「じゃああなた、おかしな扇とか持っているでしょ?」

「ああ。だけどそれは家に置いて来た」

「それは残念ね。能力もなしで私達と戦えるかしら?」


「るっせ!」

 灯火は勇んで間合いに入り。

 ジャブを放った。


 目を真っ赤にさせ、奇妙な威圧感を発しながら。

 典嗣は。

 そのジャブを。的確に。払い落とす。


「くっ!?」

 見切られた?

 その完璧なタイミングに、固唾を飲む灯火。


 これは、ヤバいかも……。

 熱っぽくて実戦感覚が鈍くなってるせいか。

 もしくは単純に、相手のほうが一枚上手なのかもしれない。


 とにかく間合いを切らないと危険すぎる。


 そう、半歩だけ。

 灯火が後ずさったのを契機に。

 典嗣のコンビネーションブローが牙を向いた。

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