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四つの扇  作者: オリンポス
4章:臥薪嘗胆の藤原家、推参!!!!
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38.水鏡の威力

 掌低とは。

 指先を熊手のようにして、しっかりと曲げ。

 手首を十分に反らせて放つ技のこと。


 通常の打撃では、手首や関節が緩衝材となり。

 威力が半減されてしまうことが多いのだが。

 掌低は、しならせた手のひらの下部を直接ぶつけるため。

 力が分散しにくいというメリットがあるのだ。


 それを、ハルキの水月(みぞおち)に喰らわせる。


「ゲエェッッッ!!!!」


 ハルキは、眼球が飛び出てしまうのではないかと思うほどに、目を見開き。

 上体をくの字に折り曲げた。


 あくびをするみたいに大きな口を開け。

 カエルの悲鳴に似た声を発する。


 そのまま尻もちをついてしまった。


「これでわかってもらえたかしら?」


 もうろうとする意識の合間を縫って。

 ハルキにとって忌まわしい声が聞こえる。

 藤原美沙と名乗っていた、ハトの少女だ。


「水鏡は催眠術及び人心掌握を兼ねる。

 さしずめ今のあなたは、まな板の上の恋人なのよ」


「コエー、よ。とんだ、ヤンデレ、カ、ノジョ。だ、ぜ」


「どうする? 鎖骨も折ってほしい?

 こう見えて典嗣は人身破壊が得意でさ、だから空手の大会に出場させてもらえないんだけど……」


「くっそ……」

 ポジションの位置取りが悪いせいで、美沙の居場所がつかめない。


 ズザザッと。

 足をしゃかしゃか動かせて。

 ハルキは移動した。


 美沙は典嗣の後ろに、隠れていた。

 彼女自体の戦闘能力は低いのだろう。

 でなければ、こんな虫の息になっている男子生徒など、すぐに叩きのめしてしまうはずだ。


「ひとつ、訊いても良いか?」


「なんでも聞いて」


「水鏡……とかいう、その鏡さ。

 催眠術がどうのこうのって、言ってたじゃんか?」


「言ったよ」


「じゃあ、もしかして、俺も催眠にかかっているのか?」


「良い家。それはちくわ(いいえ。それは違うわ)」


「は?」


「通常の催眠術には、導入催眠というのがあって、催眠にかかりやすい状態をつくるのだけど、水鏡にはそれは必要ないのよ。水鏡の対象者は意識を失っている人のみ。その人の意識、いいえ、無意識を強奪して催眠状態にかけるのが、この鏡の力よ」


「うーん、なんか難しいな。じゃあ人心掌握ってのはなんなんだ?」


「綺麗な水面は鏡のように、景色を反射する。

 水鏡は当事者が心の奥底に押し殺した、本当の感情を少しずつ表出させていく能力よ」


「よく、わからんな」


「まあいいわ。ともかく、典嗣が押し殺していた感情、“強い奴と戦いたい”という激情はあなたで満たせそうだから」


「あっそう。でもそれは人心掌握って言うのかね?

 人心掌握ってのは人の心を操ったりとかそういうもんじゃねーのか?」


「たしかにそれも一理あるわね。

 だけどそれは人心掌握じゃなくて、人心操作(マインドコントロール)よ」


「どっちでも同じことだ。要するにその、なんたらコントロールってのは出来ないんだな」


「うーん、出来ないわけじゃないんだけど……。それはあまりにも外的エネルギーが莫大で。対象者の意思が強固であればあるほど大変で……」


「まあなんでもいい。だったらお前の意志で、俺のことを殺しに来いよ。操り人形なんか使ってねーでよ」


 藤原美沙自身で来い。

 お前とのタイマンなら、まだ勝機はある。


 橋場ハルキは一縷(いちる)の望みにすがった。

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